2024年のスーパーGT開幕前最後の公式テスト、富士スピードウェイの場で今季のGT500車両を見て、気になったポイント、そして実際に見ていくつかの変更点が確認できた。

 今年からベース車両がNSXからシビックType Rに変更となり、CIVIC TYPE R-GTとして参戦するホンダ。5ドアボディは容積が大きくその点での空力の不利は否めない。しかし、ベース車両を活かした、『攻め』の新規開発も富士公式テスト中に垣間見えた。

 エンジンルームのレイアウトを一新。インタークーラーとラジエータをオーバーハング部分に並べて配置している。これまではインタークーラーを中央に設置し、左右に振り分けてラジエータを配置していた。ライバル車両も同様のレイアウトである。

 シビックType Rではラジエータが2基から1基に変更されたことによって大幅に(見た目にはほぼ半分)容量も削減されている。言うまでもなくラジエータには冷却水が満たされているので、容量がそれだけ削減されれば車両オーバーハング部の軽量化に大きく貢献しているはずだ。

 容量をそれだけ削減できるということは、エンジン自体が高効率を実現して排熱量が少ないことや、CNF(カーボンニュートラル・フューエル)燃料に対応して高水温運用をしていることとも関係していそうだ。

 この大幅なレイアウト変更も、ベース車両変更によってフロント形状が変わったことによって実現できたのは明らかだ。NSXはフロント左右のコーナー部分が絞られた形状であったが、シビックType Rでは左右に容積が拡大している。それでインタークーラーとラジエータの並行配置が可能になった。

 インタークーラーもそのラジエータと並列配置されたことで取り付け高さが低減されており、これは重心高低下に貢献する。さらに、そこからスロットルへ吸入空気を導くインテークパイプを直線的に配置することで圧力損失を最小限に抑えている。

 重心高低減およびオーバーハング部の軽量化は、確実にコーナリングに好影響を与えるだろう。車両変更による上面形状の変更とそれに伴う空力特性の変化により、車両に求められるセットアップも大きく変わるはずで、その最適解への到達がチームにとっての急務となるが、こうしたパッケージの改善は今後活きてくるはずだ。