岡山国際サーキットで行なわれたスーパーGT開幕戦では、ホンダ陣営のGT500車両、シビック・タイプR-GTがデビューを果たした。開幕前から“発展途上”との声が聞かれたが、蓋を開けてみれば100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTが2位争いを繰り広げた末に3位と、既に上位を争うポテンシャルの高さを見せた。

「100号車のレースペースを見ると、優勝した36号車(au TOM'S GR Supra)は見えなかったと思いますが、それなりに戦えるポジションでシーズンをスタートできたのかなと思います。レース後半で単独走行だった8号車(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)や16号車(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)も結構良いペースで走れていました」

「レースペースは周りと遜色ないところで走れているので、この先はなるべく予選で前の方を取ること、(レースペースを)もう一段上げられるセットアップも含め、開発を進めたいです。もう少し苦しい戦いになると思っていましたが、まずは良いスタートが切れたのではないかと思います」

 そのように開幕戦を総括したのは、HRC(ホンダ・レーシング)の佐伯昌浩ラージ・プロジェクトリーダー(LPL)。デビュー戦からまずまずの結果が出たとはいえ、セットアップやタイヤ選択に関して各チームが試行錯誤している状況であることは否めないとして、今後さらなる熟成を進めていきたいとした。

 その一方で、HRCの首脳陣が指摘したのは、レース中のオーバーテイクが少なかったという点。確かに岡山国際サーキットは狭くタイトなコースレイアウトであるため追い抜きが容易ではないサーキットなのだが、それでもこれまでは、レースペースの良い車両が後方から順位を大きく上げてくるシーンも見られた。

 しかし今回に関しては上位陣の順位変動はほとんどなく、アクシデントがあった車両を除けば軒並み予選と同じ順位でフィニッシュした。3位となった100号車STANLEYも、前を行く39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraを終始追い回していたが、オーバーテイクには至らなかった。

 これに関してはHRC側も訝しげ。2024年シーズンに向けてはホンダ陣営がNSXからシビックへのスイッチ、それに伴いトヨタ陣営と日産陣営は空力とエンジンのアップデートと、パッケージ面ではそれぞれ変化があったのだが、その仕上がりがかなり似通ったものになっているのか。それとも、戦略のバリエーションも乏しい300kmレースにおいて、各車のタイヤ選択等が似通っていたからなのか……この辺りは第2戦富士で確かめる必要がありそうだ。

 HRCの車体開発責任者、徃西友宏氏は次のように語る。

「ホンダ勢で最上位となった100号車は39号車(DENSO)を抜き切るところまではいけなかったですし、その他にも、『早くこのクルマの前に出ればもっとペース良く走れただろう』というクルマが多く見られました」

「それは我々のクルマの仕上がりという面もあるかもしれませんが、他社さんの中でも抜けそうなペースなのに抜けないというシーンは見られました。各社のクルマの仕様がかなり近いレベルにあって、接戦で、頭ひとつ抜けるのは難しいと感じました」

 これについて佐伯LPLも次のように述べる。

「去年まではレース中のオーバーテイクも見られましたが、今回は路面の影響もあったのか、こうやってタイヤ(の性能)が落ちていかないような状況になってくると、少し前のスーパーフォーミュラのようにオーバーテイクまでなかなかいけない、というのが今までになかった要素だと感じました」

「ただその辺りは路面とタイヤ次第でもあるので、この状況がずっとは続かないとは思いますが、少し気になりましたね。このままの状況だと、予選やピットのタイミング、作業時間で前に出るしかありません。それを突き詰めていくのもこのカテゴリーなのですが……」

 GT500各社の車両性能がかなり近い領域に収束していることもあってか、ワンメイクカテゴリーのスーパーフォーミュラのようなレースだったと関係者が評したスーパーGT開幕戦。次戦は岡山とサーキット特性の異なる富士スピードウェイを舞台に、初の3時間レースというフォーマットで行なわれるが、どのようなレース展開となるだろうか。