5月19日、2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦『九州大会 オートポリス』の決勝レースが、大分県日田市のオートポリスで開催され、スタートで予選2番手からトップに立った牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が、一時後続を15秒近く突き放す快走でスーパーフォーミュラ(SF)初優勝を飾った。2位は岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、3位には坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が予選6位からポジションアップを果たしている。

 好天が続くオートポリスだが、前日の予選日と比べて風が強い影響か、朝のフリー走行はやや涼しい陽気のなかで行われた。午後の決勝レースのスタート進行中もやや風は強いものの、日差しは相変わらず強く、スタート直前で気温24℃、路面温度は38℃まで上昇した。

 14時50分にフォーメーションラップが始まり、いよいよ41周の決勝レースがスタート。シグナルのブラックアウトとともに抜群のスタートを切ったのは、2番グリッドの牧野と3番グリッドの山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)だった。2台はやや出遅れた岩佐をかわして1コーナーをクリアしていく。

 オープニングラップは牧野、山本、岩佐、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、野尻智紀(TEAM MUGEN)、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)というトップ6。牧野はこの1周で山本に対し1.4秒のギャップをつけると、そのままトップを快走していった。

 ピットウインドウが開く10周終了のところで、いち早く動いたのは2番手を走る山本と6番手の太田。その翌周には開幕戦同様の狙いか、山下健太(KONDO RACING)がピットインし、その後阪口も序盤のピットインを選択する。

 タイヤ交換を済ませた“裏1位”は山本。その後ろに太田、阪口、山下、福住が続いていく。14周を終えたところでで“表1位”の牧野と山本の差は31秒。山本はここから自己ベストタイムを塗り替えながらギャップを詰めていった。山本に蓋をされていたか、岩佐のペースが上がりトップ牧野との差も徐々に削られていく。それでも牧野は自らのペースを崩すことなく周回を重ねていった。

 ミニマム(規定最少周回数)でピットに入った山本はコース復帰後、タイヤがフレッシュなうちは前を走る木村偉織(San-Ei Gen with B-MAX)を一気に仕留めるなど、ペース良く周回していたが、レース中盤に代役参戦のベン・バーニコート(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)に引っかかりペースダウン。この2〜3周の間に牧野との差がふたたび開いてしまう。

 そして24周を終えたところで、牧野と2番手の岩佐が同時ピットイン。両チームともミスのない作業でドライバーをコースに送り出すが、牧野はかろうじて山本の前でコース復帰し、事実上の先頭をキープ。一方の岩佐は山本と太田の先行を許し暫定4番手にドロップしてしまった。タイヤの冷えているうちに牧野を仕留めたい山本は一気に接近。ただし背後には太田も迫っており、なかなか牧野をとらえることに集中できない。そのうちにタイヤに熱が入った牧野は逃げていき、今度は山本、太田に岩佐が迫っていった。

■粘る山本尚貴にフレッシュタイヤ組が強襲

 27周目、まずは1コーナーへ飛び込む直前に岩佐が一瞬ラインを変えて太田にプレッシャーをかける。そのまま2コーナーで並びかけると、3コーナーで一気にオーバーテイクしポジションアップに成功した。表彰台圏内に復帰した岩佐は太田を一気に引き離すと、今度は山本に近づいていく。

 岩佐と太田がバトルしているうちにギャップを広げていた山本だったが、フレッシュタイヤの岩佐は一気に近づいてくる。32周目の1コーナーでは岩佐がオーバーテイクシステムを使いながらチャンスをうかがうが、山本も必死にブロック。2台の接近戦は数周続き、34周目に入ったホームストレートで岩佐が並びかけ、1コーナーまでに逆転。ここまで必死に2番手を守ってきた山本だったが、これで3番手に後退した。

 序盤にタイヤ交換を済ませていた山本はタイヤの消耗も激しく、同じく34周目の100Rで坪井にもかわされてしまう。坪井は25周を終えたところでタイヤ交換に入っており、フレッシュタイヤでプッシュ。阪口、太田をとらえて実質の4番手まで浮上していたが、ここで山本をかわして表彰台の一角3番手までポジションを押し上げていた。

 山本の扉をこじ開けた岩佐は一気にペースアップして牧野を追うが、すでに15秒近く開いていたギャップを逆転するには周回数が足りず。その結果、終始トップでレースをリードしていた牧野がトップチェッカーを受けた。

 2019年にスーパーフォーミュラデビューした牧野。その開幕戦ではデビューポールも獲得し注目を集めたが、なかなか優勝には手が届かず、5年越しの悲願の初優勝となった。2位にはルーキーの岩佐が入り、こちらも自身初表彰台となったが、ポールスタートで優勝も見えていただけに悔しい2位となった。

 3位はレース後半でのタイヤ交換が奏功した坪井。予選ではホンダ勢に上位席巻されたトヨタ勢の中で、決勝で一矢報いるかたちとなった。山本は4位。その山本とピットアウト後から長らく順位を争った太田が5位でフィニッシュしている。

 2024年スーパーフォーミュラの次戦第3戦東北大会は、6月22〜23日に宮城県のスポーツランドSUGOで開催される。