◇6日 ボクシング4大世界戦(東京ドーム)

 WBA・WBC・IBF・WBOスーパーバンタム級タイトルマッチで4団体統一同級王者の井上尚弥(31)=大橋=に挑戦した世界2階級制覇の挑戦者のルイス・ネリ(29)=メキシコ=は6回TKOで敗れた。体重超過を犯し、悪童の異名を背負った日本での初黒星を喫した。プロ通算37戦35勝(27KO)2敗。

 挑発もあの手この手の神経戦も、リングに立ってからは関係なかった。ルイス・ネリが真っ向勝負で見せ場をつくった末、3度ダウンを喫して撃沈した。

 日本では極めて異例のブーイングを受け、なぜかうなずいた。そして、大歓声をどよめきに変えてみせた。まさに先制パンチ。1回、カウンターの左フックで王者からダウンを奪い、再開後もコーナーに追い詰めて緊迫の滑り出しを演出した。

 試合に向け、何でもやった。まずは心理的な揺さぶり。来日すると王者への敬意を言葉を並べたが、海外メディアには一転。「過大評価」「平凡なファイター」と井上尚をあおるような言動と態度を繰り返してきた。

 WBCバンタム級王者だった2018年3月の山中慎介戦で体重超過。日本での”前科”を踏まえ、前日計量以外にも事前計量を義務付けられたほか、再び減量に失敗した場合に備えてリザーバーが用意されるなど、厳戒態勢だった。

 そんな中で、前日計量は異例の500グラムアンダーで突破。計量後、持ち込んだグローブを米国製から日本製への急きょ変更をリクエストする一幕もあった。調整失敗やかく乱の見方も広がる中、陣営は究極仕上げと大一番への熱意を強調。一撃の鋭さを見ればうそではなかった。

 王者と握手を交わし、試合後は病院に直行。「メキシカンのボクサーとして勇姿を見せたい。死も覚悟して挑む」と語った通り、リング上では真摯(しんし)な姿を見せて散った。