静かな住宅街にまるで隠れ家のようにたたずむ「燕カフェ」。昭和の時代に建てられた一軒家は当時の風情をそのまま残し、訪れる人をあたたかく迎えます。縁側やちゃぶ台のあるレトロなカフェでほっこりとした時間を過ごしてはいかがでしょうか。

これまで培われてきた古き良き日本の日常を伝える一軒家カフェ

築90年の古民家を改築した「燕カフェ」。鎌倉観光で人気の鶴岡八幡宮から歩いて5分ほどの住宅街の中にあり、まるでおばあちゃんの家を訪ねるかのような静かでほっと落ち着くカフェです。

木戸から入ると玄関までは飛び石のアプローチ。“いつでも だれとでも” と手書きのメッセージとツバメのイラストを描いた玄関脇の看板が出迎えます。

手の届くところに骨董品が贅沢に並ぶ畳敷きの和室

古民家の良さをできるだけ残したいという店主・石田雄さんの思いから、リノベーションをしたのはおもに厨房で、そのほかは昭和の初期に建てられたままです。靴を脱いで上がると足の裏側に畳のやわらかさを感じ、和室の中央には昔ながらのちゃぶ台、頭上のライトはドライフラワーが周りを囲み、昔ながらの生活の中にしゃれたエッセンスも取り入れた素敵な空間です。

縁側は四季折々に木々が彩る庭の様子がガラス戸越しによく見えます。ここに座るとやわらかい日差しとレトロな雰囲気で時代をさかのぼってタイプスリップしたかのような気分になりますよ。

和菓子の木型や時代劇で見かけるようなロウソクの台なども無造作に置いてあり、こうした骨董品の数々は古物営業許可証を取得する石田さんが集めたものです。
小さな引き出しがいくつもある箪笥は江戸時代に使われていた薬箪笥で、その上には薬草を細かく砕く道具として使われていた薬研(やげん)も。今はこの薬箪笥におしぼりなどが入り、まだまだ現役として活躍中です。

古民家に映えるアンティークの和食器

昔から使われてきた道具を受け継いで大切に使う石田さんの精神は器も同じです。お店のカップや器は、日本を代表する磁器として知られる佐賀県の有田焼や石川県の九谷焼の100年以上前に焼かれた貴重な骨董品です。

ヒビが入った部分には金継ぎをして新しく蘇らせます。カウンターにはそうしたカップが色柄華やかに並び、それぞれの持つストーリーを想像しながらいただくのも楽しい時間です。

コーヒーはオーダーごとに豆を挽く本格派。ペーパーフィルターを使わずにハンドドリップで淹れていて、コーヒーの味わいがストレートに伝わります。

インパクトのある朱塗りのお膳で登場する薬膳のお昼ごはん

このカフェの魅力は古民家とアンティークの和食器に加えて、薬膳のランチもいただけることです。野菜の形がなくなるまで煮込んだ薬膳カレーは、みかんの皮・桂皮・山椒・クローブ・シナモンをブレンドした五香粉とショウガがたっぷり混ぜてコトコトと煮詰めていくのだそう。仕上げには黒ゴマと白ゴマ、美容にいいといわれるクコの実をトッピング。

ランチには自家製の杏仁豆腐と美人茶をつけるのがおすすめです。本格的な杏仁豆腐に欠かせない杏仁霜(きょうにんそう)と豆乳を使っていて、甘い香りが漂いまったりとした仕上がりです。

美人茶とネーミングされた気になるお茶も薬膳の素材です。菊花・なつめ・クコ・はと麦など、ブレンドは石田さんのお母様によるもの。温かいポットから注ぐとリフレッシュしますよ。

グラスにたっぷり詰め込んだお楽しみスイーツは午後2時から

昼下がりのティータイムにはもう一つの名物「燕パフェ」をぜひ。自家製の豆腐白玉や季節のフルーツ、アイスクリームをたっぷりと盛り付け、その下には日替わりで抹茶か鉄観音のプリン、さらに杏仁豆腐も敷き詰めてボリューム満点。
コロンとしたフォルムのグラスも昭和初期に作られたアンティーク。装飾をほどこしたガラスには厚みがあり、しっかりとした安定感のあるグラスです。ノスタルジックな気分と一緒に味わってくださいね。