侯孝賢(ホウ・シャオシェン)プロデュース、俊英シャオ・ヤーチュエン監督による台湾・日本合作映画『オールド・フォックス 11歳の選択』より、本作で台湾映画デビューを果たした門脇麦の存在感が光るシーンなどを収めた場面写真が解禁された。

 本作は、バブル期の台湾を舞台に、時代と大人たちとの狭間で大人の階段を登る少年の姿を描く感動のヒューマンドラマ。

 バブル期の到来を迎えた台湾。11歳のリャオジエ(バイ・ルンイン)は、父(リウ・グァンティン)と2人で台北郊外に暮らしている。自分たちの店と家を手に入れることを夢見る父子だったが、不動産価格が高騰。リャオジエは現実の厳しさと、世の不条理を知ることになる。そんなリャオジエに声をかけてきたのは、“腹黒いキツネ”と呼ばれる地主のシャ(アキオ・チェン)だった。他人にやさしい父と違い、他人なんか見捨てろと言い捨てるシャ。果たしてリャオジエは、どちらの道を歩んでいくのか…。

 プロデュースを務めた侯孝賢は、1989年に『悲情城市』でヴェネツィア国際映画祭グランプリを受賞。2015年には『黒衣の刺客』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。そのほか小津安二郎への敬愛から『珈琲時光』を製作し、昨年10月には引退を発表した。本作は、そんな侯孝賢監督作品の助監督を務め、台湾ニューシネマの系譜を受け継ぐ俊英・シャオ・ヤーチュエン監督の最新作。これまでのシャオ・ヤーチュエン監督作は全てのプロデュースを侯孝賢が務めており、本作が最後のプロデュース作となる。

 昨年の東京国際映画祭でワールドプレミア上映され、人生の選択肢を知って成長していく少年と、彼を優しく見守る父の姿に心打たれる人が続出。2023年の第60回台北金馬映画祭では監督賞、最優秀助演男優賞(アキオ・チェン)、最優秀映画音楽賞、衣装デザイン賞の4冠を達成。新たな台湾映画の傑作が誕生した。

 主人公リャオジエを演じるのは、『Mr.Long ミスター・ロン』などで日本でも知られている日台のダブルで、台湾では神童と呼ばれる子役バイ・ルンイン。そして日本でもスマッシュヒットを記録した『1秒先の彼女』のリウ・グァンティンがダブル主演としてリャオジエの父親にふんし、慎ましやかに支え合いながら生きる父子を演じている。リャオジエに影響を与える“腹黒いキツネ”(オールド・フォックス)と呼ばれる地主のシャ役には、台湾の名脇役アキオ・チェン。シャの秘書役に『怪怪怪怪物!』のユージェニー・リウ。そして、門脇麦が経済的には恵まれているが空虚な日々を生きる人妻・ヤンジュンメイを演じ、初の台湾映画出演を果たした。

 このたび、1980年代台湾の街並みが再現されたシーンの数々を収めた場面写真を一挙解禁。主人公のリャオジエと父タイライの慎ましやかな食卓での様子。地主のシャが所有するゴミ回収場で、リャオジエとシャが話し込むシーン。タイライが働くレストランにシャが訪れ情報と引き換えにチップを渡す姿。タイライと彼の初恋相手・ヤンジュンメイ(門脇)がレストランで再会したシーン、2人の高校生時代の淡い思い出。

 さらに、リャオジエが彼をいじめるガキ大将たちと対立するシーン、リャオジエがシャの下で働く家賃回収をする“綺麗なお姉さん”と交流する姿、タイライの弟の台湾文化を感じさせる結婚式の様子など、ノスタルジックな雰囲気漂う世界観を収めている。

 門脇が演じたヤンジュンメイについて、シャオ・ヤーチュエン監督は「あの役には、お嬢様気質でちょっとわがままな感じがして、でも憂いが感じられてどこか孤独の影がある、という人を求めていたのですが、30歳くらいでそういう雰囲気のある人が台湾では見当たらなかったんです」と述懐。

 続けて「それで、侯孝賢監督から『日本の俳優と仕事をしてみるといいよ』と勧められていたことを思い出しました。『浅草キッド』を見て、彼女がとてもいいと感じていたのでお願いしました」と、門脇をキャスティングした理由を明かした。本作で門脇はそんな監督の思いを背負い、深い眼差しを称えた影のある演技を披露して強い存在感を発揮している。

 なお今後、シャオ・ヤーチュエン監督が来日し、4月16日に「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド 誠品生活日本橋」にて、モデル・文筆家の小谷美由と「台湾映画の今昔と台湾カルチャーの今を語る」トークイベントに参加する予定。翌17日には、門脇麦と舞台あいさつ付き試写会に登壇する。

 映画『オールド・フォックス 11歳の選択』は、6月14日より全国公開。