「成瀬と一緒ならきっと大丈夫」

『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社刊)で、今年の本屋大賞を受賞した宮島未奈さん(40)。全国の書店員が「いちばん売りたい」と思う本を実質デビュー作で書き上げたのだから、快挙というほかない。写真はその授賞式での一コマだが、宮島さんは、受賞作を推してくれた多くの書店員さんに囲まれてうれしそうだ。会見では、成瀬同様めったに緊張したことがないという宮島さんが、ときおり声を詰まらせながら「これから受賞作家の看板を背負っていくと思うと身が引き締まる思いです。この先、今の私には想像できないようなことがたくさん起こると思いますが、成瀬と一緒ならきっと大丈夫です」と語った。

“最高の主人公”が魅力の『成瀬は天下を取りにいく』

『成瀬は天下を取りにいく』の魅力は、主人公の成瀬あかりのキャラクター造形にある。閉店間近の西武大津店に日参し、ひと夏を西武に捧げたり、友人とお笑いコンビを結成し、「M-1グランプリ」に挑戦したり……と、一見、破天荒に見えて、成瀬の行動にはいつも一本筋が通っている。だから何があっても成瀬は動じない。中学生離れした社長のような偉そうな物言いにも、思わず笑いがこみ上げてくる。高校生から大学生にかけての成瀬を描く続編『成瀬は信じた道をいく』を加えたシリーズ累計発行部数は60万部近く。これからさらに多くの読者が生まれそうな痛快、爽快な青春小説だ。

「“成瀬”一色」のアンテナショップで満面の笑み

 受賞翌日、宮島さんが向かったのは、東京・日本橋にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」。店頭は、『成瀬は天下を取りにいく』の表紙イラストを利用したPOPで埋め尽くされている。たまたま出くわしたファンが「ニュースで見ました」と声をかけると満面の笑みで手を振る宮島さんだった。

 丸善日本橋店を訪問した後、東京駅の前で最後の撮影を終えた宮島さん。意気揚々と家族の待つホームタウン大津への帰途に就く。凱旋先のかの地では受賞を喜ぶ多くの滋賀県民が温かく出迎えてくれることだろう。

撮影・西村 純

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載