「やっぱり違法なことだから、もうやらない」

「赤ベンツ不倫」「勤務実態なき幽霊公設秘書疑惑」の次は「秘書給与詐取疑惑」である。自民党の広瀬めぐみ参議院議員(57)。公設秘書が給与を「先生に渡した」と話している証拠音声が残されている上、LINEには「違法なことだから」との文言まであって……。【前後編の後編】

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 前編では、自民党の広瀬めぐみ参議院議員の地元・岩手の事務所にいる公設第一秘書のA氏に対し、政策秘書を務めていたB氏がかけた電話の通話記録を紹介した。そこでは、広瀬氏が秘書に給与を上納させていたことを思わせる会話が残されていた。

 ではなぜ、このような会話が交わされ、それがわざわざ録音されているのか。その背景事情を示すLINEのスクリーンショットも手元にある。問題の通話記録と同じ1月10日にLINEでやり取りしているのは、広瀬氏とB氏だ。

 そこではまず広瀬氏が、公設第二秘書の給与明細と賞与明細をもらっておくよう命じた上で、

〈彼に第二秘書のボーナスもでてるんじゃないかということと、第一のボーナスもでてるんじゃないかと思うので〉

 と書いている。対するB氏の返信は、

〈個人情報の兼ね合いもあるのでもらえるか分かりませんが、聞いてみます〉

〈了解です〉

 その後、LINE電話で音声通話を交わし、広瀬氏は次のように書くのだ。

〈必ず録音してね〉

〈やっぱり違法なことだから、もうやらない、あるいは新しい人が入るかもしれない、でもよい。とな(ママ)かく奥さんにはやめてもらおう。まずは彼がくすねたことを明らかにしておかないといけないから、そこはよろしく〉

給与、賞与を上納させていた疑惑が

 これらのやり取りが交わされたのは、13時40分前後から14時46分までで、〈必ず録音してね〉は14時16分。前編で紹介した電話の録音記録は14時41分のものだった。つまり、B氏は広瀬氏からLINEで依頼され、A氏との会話を録音した、という流れに見えるのだ。LINEでのやり取りから推測すると、広瀬氏は、A氏の妻の分の賞与をA氏が「くすねた」と疑い、B氏に調査を依頼したのではなかろうか。

 しかし本来、A氏の妻の分の賞与はA氏夫妻の家計に入るのだから、それを「くすねた」などと疑うこと自体が不可解。そこからもやはり広瀬氏が、A氏の妻の分の給与や賞与を上納させていたのではないか、という疑惑が浮かび上がる。そして〈違法なことだから〉というくだりは、彼女自身に違法性の認識があったことをうかがわせるのである。

 こうした重大な疑いについて当の本人は何と弁明するのか。3月下旬、文書で取材依頼書を送った後のある日の午前中、広瀬氏は例の赤いベンツではなく、白い車に乗って都内の自宅に帰ってきた。車を降りるや、ほとんど走るようにして家に入ろうとする彼女に、音声データやLINEのやり取りについて質したが、

「文書で頂いておりますので!」

 と何度も声を張り上げるのみ。家に入ると慌ただしく扉を閉め、施錠してしまった。

 その後、広瀬氏は回答期限を大幅に過ぎてから文書で答えた。A氏の妻の給与などを上納させたのではないか、という点について、

〈ご指摘のような「上納」させたという事実がないことを明確に申し上げます〉

 とした上で、

〈私は令和4年8月から議員活動を始めましたが、資金不足で大変であったことから、A氏から金銭の借り入れをしていました。A氏の好意で、同氏が融通できる金額を一時借用しておりました。したがって、「上納」という事実は一切ございません〉

支離滅裂な弁明

 秘書給与の「上納」ではなく、A氏からの「借金」だと言うのだ。不可解な主張である。そもそも、A氏は「先生には12月分は渡しています」とはっきり語っている。貸金ではなく、給与の上納だからこそこのような言い方をしたのは明白だ。広瀬氏の不自然極まる弁明によって、疑惑はより深まったといえるだろう。

 広瀬氏の奇妙な主張は他にもある。LINEの文言「違法なことだから」について、こう宣うのだ。

〈ご質問に「違法なこと」とありましたが、当時の政策秘書(退職済み)が違法な提案をしてきたことがありました。当然、それはお断りしております〉

 もはや支離滅裂である。前編では、秘書が給与を広瀬氏に上納していたと思わせる会話記録などと併せて報じている。

「週刊新潮」2024年4月4日号 掲載