JR東海関係者のみならず、日本国民すべてに福音がもたらされた。川勝平太静岡県知事(75)が舌禍を起こし、辞職する運びとなったのである。2009年の知事就任以降、15年に及ぶ治政でリニア中央新幹線を妨害し続けた背景とは。

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 川勝知事は早大卒業後、オックスフォード大学に留学し、比較経済史の泰斗として早大などで教鞭を執った一級の知識人である。

 そんな川勝氏がよもや「綸言(りんげん)汗のごとし」という、中国の古典に由来する格言を知らぬはずがない。その意味は、皇帝が一旦発した言葉(綸言)は取り消せないというものだが、知事は今月1日、静岡県庁で新規採用職員に訓示を行った際、

「実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。ですから、それを磨く必要があります」

 と、1次産業従事者を馬鹿にした失言を行い、猛烈な批判にさらされることに。

失言を繰り返してきた川勝知事

 翌日の会見では、

「職業差別は皆無です、ありません。歓迎の言葉、励ましの言葉がこんなことになったというか、何か問題発言かのごとき状況になって本当に驚いている」

 と釈明するも万事休す。突如、その会見の終わりに「6月の議会をもって、この職を辞そうと思っております」と述べ、辞任の意向を表明したのである。

「川勝氏はこれまでも失言を繰り返してきましたが、その都度、切り抜けてきたので辞意表明には驚きました」

 そう語るのはジャーナリストの小林一哉氏だ。

「21年10月、川勝氏は参院の補選に出馬した候補者の応援演説を行ったのですが、候補者が浜松市出身で、応援演説の場所も浜松市内だった。一方の対立候補は前御殿場市長。御殿場市と浜松市を比べて、浜松市には県内の食材のうち3分の2以上があるが“あちら(御殿場市)はコシヒカリしかない”と揶揄して問題になりました」

 続けて、

「川勝氏は“誤解だ”と強弁しましたが、県議会は地域差別を理由に辞職勧告を決議。しかし“けじめは職責を果たすことだと思い至った”と居直ったのです」

事実上の開業延期

 その川勝氏が知事の座とともに固執したのが、リニア開通の妨害工作だった。

 全国紙記者が言う。

「リニアの静岡工区に、南アルプスを貫く形でトンネルを掘らねばならない8.9キロの区間があります。川勝氏は大井川の流量減少や生態系への影響を理由に、その区間の着工を認めてこなかった。結果、JR東海は昨年12月、286キロに及ぶ品川〜名古屋間の工事完了時期について、目標としてきた27年の開業を断念。事実上の開業延期を決めています」

 川勝氏は先の会見で「リニアの問題で大きく動いた」ことも辞職の理由に挙げているが、それは以上に述べた事情を指すのである。

 しかし、なぜそれほどまでに彼はリニア開通妨害にこだわったのか。

「川勝氏は中国共産党の機関紙『人民日報』の取材に答えた際、“20歳のころに『毛沢東選集』全巻を読み、毛沢東の理論に興味を持った”と語っています。また、10年に訪中した際には、北京で当時の副主席である習近平氏とも会談した大の親中派。日本にリニア開発競争を挑んだ中国を利する目的があったとしても不思議はない」(同)

「週刊新潮」2024年4月18日号 掲載