井戸美枝さん

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)や社会保険労務士の経験が豊富で、家計の生活設計やお金のスペシャリストとして知られる井戸美枝さんは、新NISA(少額投資非課税制度)について、できるだけ早いうちに投資枠を最大限埋める方針だという。その理由は「資産を増やすには早いタイミングで大きく投資したほうが有利」という考え方がある。

 井戸さんは「つみたて投資枠」では「eMXIS(イーマクシス)Slim全世界株式(オール・カントリー)」(通称オルカン)を、「成長投資枠」では日本株のアクティブ投信をそれぞれ買う予定だ。

 オルカンなど世界株指数に連動するインデックス投信は、昨年までの旧NISAでも投資を続けてきたという。今も運用は続けられるため、新NISAで新たに投資する分と合わせて運用を続ける方針だ。

■元気になるのを応援したい

 一方で、新NISAでは特に、成長投資枠で買う日本株のアクティブ投信に期待を寄せている。井戸さんは言う。

「オルカンのプラスアルファとして投資する商品は、株式だけでなく債券なども組み込んだバランス型の投信を勧める人は多い。でもそういう商品は、別にNISAを使わなくてもいいと思うんです。新NISAで運用益が非課税になるのだったら、ある程度のリスクを取っても、より大きなリターンが期待できるアクティブ投信にしようと考えました」

 その中でも、海外の株式ではなく日本株を選んだのは「日本の企業や経済が元気になるのを応援したい」ことが理由だという。

 とはいえ個別株を買うには、それぞれの企業について業績や株価の値動きを分析するなど手間も時間も必要だ。そこでプロに運用を任せられる投信に決めた。

 購入する商品は、もう考えているという。

「セゾン投信元会長の中野晴啓さんが昨年秋に設立した独立系運用会社『なかのアセットマネジメント』が運用するファンドです。同社が国内株に投資するアクティブ投信は4月中にも販売がスタートする見通し。中野さんの投資理念や運用方針には、以前から共感していました」(井戸さん)

 中野さんは証券会社などの販売金融機関に影響を受けない運用にこだわり、直販型の投信を大きく育ててきた。井戸さんが中野さんが立ち上げるファンドに投資するのには、顧客本位の姿勢や高い信頼感に対して応援する「推し活」と同じような気持ちもあるという。

■最大額を投じる

 実際に投資にあたっては、オルカンを買うつみたて投資枠も、日本株のアクティブ投信に投資する予定の成長投資枠も、毎年、それぞれ最大額を投じる考えだ。「新NISA全体で生涯に投資できる最大1800万円をできるだけ早く使い切りたい」と話す。毎年、双方の投資枠を最大限使えば最短5年間で生涯の投資枠はいっぱいになる。

 その狙いについて、次のように言う。

「運用資産は早いうちに大きくしたほうが増えやすい。投資枠が目いっぱいになったら、あとは放っておこうと思っています。現在は米国株も日本株も高値更新が続き『高値づかみ』になるのを心配する投資家も少なくないと思います。でもそんなことを言ってばかりいたら。いつまで経っても身動きは取れません。高値だと思っても、これから値上がりするか、それとも値下がりするか、本当のことは誰にも分からない。早いタイミングで始めるのは大事なことだと思っています」

 井戸さんの投資歴は、ファイナンシャルプランナー(FP)として仕事をしてきた歴史と重なる。もともと金融機関の勤務経験はなかったこともあり、「金融や投資の勉強の意味もあって」(井戸さん)実際に投資してきた。株式や投信だけでなく、金などの商品取引から商品先物取引なども含めて様々な金融商品をひと通り買ってみたという。

 今では保有する資産全体の半分程度は個人向け国債で運用する。個別株式は全体の1割程度。不動産や製薬会社、総合商社といった株価が比較的安定した銘柄が中心だ。「事業の内容や企業像がイメージしやすく、自分にとってなじみのある銘柄が多い」(同)。

■お金は使うのも好き

 預貯金や定期預金などの資産は、自身のFP事務所の運営に必要な最低限の額にとどめているという。井戸さんは言う。

「子どもはもう独立しましたし、お金の心配はありません。今は自分のためだけに運用しているような状況です。ほかの老後の生活に必要な資金は、国民年金基金や小規模企業共済で手当て済み。でもお金は使うのも好きなので、新NISAなどを使って運用をするのは、楽しみに使うことも目的の一つですね」

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

井戸美枝(いど・みえ)/井戸美枝事務所代表。CFP認定者、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じて、年金や社会保障問題をはじめ生活に身近な経済問題について解説やアドバイスなどを行っている。関西大学卒。神戸市生まれ。著書に『好きなことを我慢しないで100万円貯める方法』(幻冬舎)、『親の終活、夫婦の老活』(朝日新書)など多数