エンゼルス時代は二刀流で活躍(写真:アフロ)

 大谷はあとどれくらい二刀流を続けられるのか? 大谷はこれからどんな選手になるのか? 長くプレーするために気をつけなければならないことは?『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)のなかで、「ロサンゼルス・タイムズ」記者のディラン・ヘルナンデスと、「ジ・アスレチック」記者のサム・ブラムが、それぞれの記者経験をもとに徹底予測。一部抜粋して解説する。

※記事中の「トモヤ」は在米ジャーナリストの志村朋哉さん。3人による会談は昨年中に行われました。

■大谷翔平の未来像

トモヤ  大谷はあとどれくらい二刀流を続けられると思う? 5年後、10年後はどうなっているかな?

 

ディラン  一般的に、修復した靭帯の寿命は5年くらいと言われている。来年は登板しなかったとして、あと4、5年は持つことになる。その時点では、クローザーになるかもしれないね。僕は彼が40歳までプレーすると思うし、もっと言えば、状態の良い40歳になると思う。彼の体型や体調管理の徹底ぶり、アスリートとしてのタイプからして、多くの人が思っている以上に長くプレーできると思う。二刀流となると、肘の状態次第になるから、たぶん靭帯の寿命の5年くらいじゃないかな。でも、みんなが思っているより、長く活躍すると思うよ。40歳で50本塁打を打つとは言わないけど、30代後半になっても非常に効果的な選手でいると思う。

トモヤ  守備もするようになるかな?

ディラン  やるところを見てみたいな。YouTubeで、彼が甲子園で外野手としてプレーする映像が見られるんだけど、フェンスに当たったボールをすごい速さで返球しているよ。でも二刀流をして守備をするというのは、さすがにやりすぎだとも思う。だから、守備をするかどうかは、いつまでピッチングを続けるかが影響すると思う。ピッチャーをやめたら可能性はあると思う。本当に彼は何でもできるからね。

 高校生の時の大谷を見たドジャースのスカウトが、ショートも守れると思うと言っていたらしい。身体能力がずば抜けているアレックス・ロドリゲスのような選手だと。彼の高校の監督もそう言っていた。その時は冗談かと思ったけど、今振り返ると冗談ではなかったと思う。彼の高校の水泳コーチは、大谷が水泳に専念すればオリンピックに出られるとも言っていた。投手として大量のイニングを投げるとかでなければ、本人がやりたければ、何でもできる能力があると思う。だから、ピッチャーをやめたら、外野を守るということは考えられる。

サム  長く二刀流でプレーすることについては、少し懐疑的かな。大谷のベストシーズンはすでに3度見たと思う。今は2度目の靭帯修復から戻ってきたばかりで、受けた手術の内容も分からない。復帰して投げる時には31歳になっているし。不可能ではないだろうけど、以前よりさらに良くなったり、これまでのようなイニング数を投げ続けて、毎日ヒットを打ち続けるというのは想像しづらい。大谷だって人間だから、加齢には勝てない。

腕に違和感を覚え緊急降板 2023年8月23日(写真:アフロ)

 ディランの言うように、少しは守備もできると思う。素晴らしい選手ではあり続けるだろうけど、これまで以上の活躍ができるかは疑問。彼自身の考え方やチームの扱いも少しずつ変わっていかなくてはならない。毎日、MVPや殿堂入りやプレーオフを狙って全力でプレーすることはできないと思う。そうした結果は、彼がうまく無理せずにやっていくことでついてくるんじゃないかな。

  長くやり続けるためには、歳を重ねるにつれて、変化も大きくしていく必要が出てくる。大谷が40歳までプレーするには、パワーを維持してホームランを打ち続ける必要がある。簡単ではないと思う。代理人のネズ・バレロは、大谷が来年の開幕日に打者として復帰できると断言していたけど、どうだろうか。

 みんな楽観的なことを言うけど、靭帯損傷や23年シーズンの最後に負った斜角筋の怪我は、プレーのしすぎやスイングが力強すぎたからかもしれない。大谷のような選手でさえ、長くプレーするには加齢に適応せざるを得ないのが野球なんだ。

ディラン  その点に関して、22年に規定打席と規定投球回数に達した時、大谷は「到達したのは良いことだけど、毎年それを目指す必要はない」と言っていた。ある程度、妥協することは厭わないんだと思う。あそこまでプレーしたのは、エンゼルスに必要とされていたからだと思う。彼が頑張らなければ、エンゼルスには勝つチャンスすらなかったからね。

 ドジャースに入った今は、「君には10月に頑張ってもらう必要がある」と、首脳陣も無理はさせないだろう。そうしたちょっとした違いが選手寿命を伸ばすと思う。