グリーン上で、相手のパッティングラインを踏むのはマナー違反とされていますが、自分のラインを踏むことも同じようにマナー違反になるのでしょうか。

「自分のであれば大丈夫」という考え方は間違い

 全員のボールがグリーンに乗ったらパッティングに入りますが、そのホールの最終的なスコアが決定するまで、自分に有利に働いたり、逆に相手が不利になったりするような行動を取ってはいけません。

芝目が変わるのを防ぐためラインを踏むのはNG
芝目が変わるのを防ぐためラインを踏むのはNG

 たとえば、同伴者がパッティングをしようとしているボールの軌道、つまり「ライン」を踏んでしまうと途中の芝目が変わってプレーに影響を及ぼす恐れがあるため、マナー違反とされています。

 では、自分自身のパッティングのラインを踏む行為は、マナー違反に該当するのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「ゴルフの規則では『ライの改善』といって、自分が打ったボールが通るであろうライン上の障害物を取り除いたり、芝の盛り上がりをクラブのヘッドで整えたりするなど、ボールの転がりがスコアに直接有利な方向に傾くような行為はしてはならないとされています。万が一、意図的にライを改善しようとしているのが明らかな場合は、2打のペナルティーが科せられてしまいます。ところが、場合によっては意図的ではなかったにも関わらず、同伴者からの目線で見たらライを直しているかのように勘違いさせてしまう場合もあるでしょう」

「たとえば、自分のパッティングのラインを誤って踏んだ際に、シューズの圧力でたまたま芝がデコボコしていたところが平らになったというケースもあり得ると思います。自分では『うっかり』と感じていても、周りからは『今ライの改善をしようとしたでしょ?』と受け取られる可能性もあるので、もちろん相手のパッティングのラインを踏んではいけませんが、それと同じくらい自分のラインも踏まないように気を付けた方が、あらぬ疑いをかけられることを防げるでしょう」

「2018年までの旧ルールでは、故意か否かに関係なく自分のラインに触ったり踏んだりしたら2打のペナルティーになると規定されていました。しかし、2019年からのルール改定後は芝のテストをするなど明らかなライの改善を行わない限り、つまり『うっかり』であれば自分のラインとの接触は罰せられなくなりました」

「一見すると優しくなったようにも感じられますが、意図的であったかどうかの判断基準は人によって異なるため、ある人の見解では『ミス』だったとしても別の人は『わざと』だと意見が分かれてしまう状況になったと考えることもできます。そのため、ある意味ではより一層自分のラインを踏まないように注意しなければならなくなりました」

相手に怪しまれる行為はしないのが一番

 では、もしも誤ってパッティングのラインを踏んでしまった際はどのようにすればよいのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「つい自分のボールにばかり意識が集中して、知らず知らずのうちに同伴者のラインに足がかかっていたということも、ビギナーであれば起こりがちだと思います。あくまでもマナーなので意図的でなければペナルティーは科せられませんが、万が一踏んだことに気が付いたら素直に謝るのが重要ですし、相手もプロの試合ではないのでその部分は大目に見てあげるようにするといいでしょう」

「自分のラインを踏んでいた時も、同伴者から指摘があった場合にはきちんと訂正をするのが一番です。ラインを踏みそうな状況になった時は、自分のものであろうと他人のものであろうと大股で越えることを意識したり、スタンスで足がかかりそうなときは少し足を開いて取るようにすると安全ですし、同時にマナーの行き届いている人という印象を与えられます」

 中国のことわざには「李下に冠を正さず(りかにかんむりをたださず)」という言葉があり、「他人に疑いをかけられるような行為は慎むべき」と古くから伝えられています。周りから怪しまれるような振る舞いはできるだけ避けるよう心がけ、気持ちよくプレーできるようにしましょう。

ピーコックブルー