近年、世界レベルでジェンダー平等が叫ばれています。にもかかわらず、ゴルフ場の中には今でも女性の入会を制限しているところがあるそうです。

かつてゴルフは男性だけのものだった

 世界中で、ファッションや政治、教育など社会の様々なシーンで男女間の差別をなくすための運動が盛んになっています。

今でこそ、女性ゴルファーは珍しくなくなったが… 写真:AC
今でこそ、女性ゴルファーは珍しくなくなったが… 写真:AC

 ところが、そのような風潮が日本でも強まりつつあるにも関わらず、ゴルフ場の中には現在でも女性がメンバーになることに対して難色を示すところがあるようです。

 では、なぜ現在も女性の入会を制限しているゴルフ場があるのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「ごく一部ではありますが、現在でも女性の入会を制限しているゴルフ場が存在するのは本当です。近代ゴルフの発祥地とされているスコットランドでは、かつて『女性と犬はお断り』といわれていたこともあり、ゴルフ場やクラブハウスを男性に限定した交流の場、仕事などから一時的に逃れられる『エスケープの場』にしていたという歴史があります」

「日本でも、特に歴史が古い名門コースには女性差別が残っています。クラブハウス内に女性が立ち入ることは認められていても、ロッカールームやお風呂、トイレなどの設備において、女性用のものはとってつけたようなほど規模が小さくなっているケースがあります」

「今まではそれでも何とかなっていましたが、昨今の国際的な性差別撤廃に向けた運動に影響を受け、少しずつ会則が改められています。女性が正会員としてクラブのメンバーになれる変化が起きているのです」

「しかし、なかには正会員になることを許可しながらも『人数制限を設ける』や『男性から女性、または女性から男性への会員権の譲渡は認められない』というように、会則をなかなか刷新することができずにいるクラブも見受けられます。歯がゆい問題ではありますが、全てのゴルフ場でこのような慣習がなくなるのには、まだまだ相当な時間がかかりそうです」

「ゴルフが現在の姿になったとされるイギリスは、君主や首相に女性が就いてきた歴史があるため、古くから男女平等が進んでいるイメージがあるかもしれません。ところが実際は、スコットランドのミュアフィールドをはじめ、2010年代後半になるまで女性の入会を強く拒んでいた名門クラブも多くあったそうです」

「さらに、ルールブックの文面でも英語版では2019年の改定までプレーヤーを指す単語は男性を意味する『his』のみで、女性を意味する『her』は一切使われていませんでした」

「日本のゴルフ場においては、『関東七倶楽部』の一つに数えられる霞ヶ関カンツリー倶楽部が東京オリンピックのゴルフ会場に選ばれた際、小池百合子都知事やIOC(国際オリンピック委員会)からの指摘を受けて会則を改め、17年に女性制限撤廃を決定しました」

少しずつ平等には近づいているものの…

 では、女性の入会が制限されているゴルフ場で、女性がラウンドをすることは可能なのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「あくまでも『メンバーになること』に対して制限がかかっているので、そのゴルフ場のメンバーの紹介を受けたり同伴してもらったうえで、『ビジター』として来るのであれば、問題ないとしているところは多いと思います」

「また、クラブハウス内においても『女性はレストランを利用してはならない』といったルールはないので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。ただ、ロッカールームなどが別棟で移動を要したり、あまり広くなかったりする可能性があるので、そこだけは覚えておいた方がいいでしょう」

 ゴルフは以前から「古臭いもの」というイメージを持たれがちでしたが、世界的にジェンダー平等の観点からもそのように思われていたようです。しかし最近では規則を定めているR&Aをはじめとした組織でも、女性ゴルファーを増やす運動を活発に行っています。近い将来、男女が分け隔てなくゴルフを楽しめる世界が実現するかもしれません。

ピーコックブルー