多くのスピン系のゴルフボールには、1つのブランドで複数の種類があります。それぞれにはどのような違いがあるのでしょうか? 

軟らかいほうがスピンはかかり、飛距離はプレーヤーとの相性が大きい

「ボールは大事」とプロや上級者はいうけれど、細かい違いはなかなか分かりにくいもの。とくに、スピン系のボールの多くは、1つのブランドにXとかSとか種類があって選ぶのが難しい。そういったスピン系ボールの選び方を、ゴルフフィールズユニオンゴルフ店の店長、小倉勇人さんに聞いてみました。

 ゴルフボールは大きく分けて、いちばん外側のカバー層にウレタン素材を使っているスピン系ボールと、アイオノマーなどのプラ系素材を使っているディスタンス系があります。

大人気のブリヂストンの「ツアーB XS」(左)と「ツアーB X」(右)。どちらも「スピン系」だが、異なる特徴を持っている
大人気のブリヂストンの「ツアーB XS」(左)と「ツアーB X」(右)。どちらも「スピン系」だが、異なる特徴を持っている

 細かく見ていくとさらに細分化されますし、両者の中間的なボールも増えていますが、プロゴルファーや上級者はほとんどが前者のスピン系ボールを使っています。

 そこまではご存じの方も多いと思いますが、このスピン系ボール、ほぼすべてのモデルが2〜3種類のバリエーションを備えています。代表的な例で言えば、タイトリストの「プロV1」シリーズは「プロV1」と「プロV1x」が、ブリヂストンの「ツアーB」シリーズは「ツアーB X」と「ツアーB XS」があるといった具合です。

 このようなモデル分けは、大雑把にいうと、打感がやわらかめでアプローチのスピン量が多いモデルと、打感がしっかりめでロングショットの飛距離が出やすいモデルという住み分けになっているケースが多いといえます。

メーカーの謳い文句どおりの結果にならないゴルファーもいる

 そこでここでは仮に、前者を「S系」、後者を「X系」と呼ぶことにします。

 メーカーによっては必ずしもこの分類パターンには当てはまらないケースもありますし、飛距離やスピン量は両者に差がないと説明するメーカーもあります。ただし打感がやわらかい=インパクトで大きく潰れるボールはスピン量が増えやすく、それは飛距離面ではデメリットになるのは事実なので、そういった傾向があることは頭に入れておいてもいいでしょう。

 これを踏まえたうえで、とくに飛距離においては「X系のほうが飛ぶ」とは必ずしもいい切れないと小倉店長は話します。

「飛ばすためには単純に低スピンならいいわけではなく、ボール初速や打ち出し角によって最大飛距離を出すのに適正なスピン量があります。そのため、もともとスピン量の少ない人や打ち出し角が低めの人は、スピンが多めのボールのほうが最適な弾道に近くなって飛ぶということもあり得るわけです」

「また、ヘッドスピードが遅い人が反発力の高いボールを使うと、インパクトで十分にボールを潰しきれずにその反発力を生かせないということもあり得ます。ですから飛距離性能に関しては、実際に打ち比べてみて実測しないとわからない部分もあるんです」(小倉店長)

 実際は、同一シリーズの「S系」、「X系」での飛距離の違いはそれほど大きなものにはならず、もっとも顕著に出る人でも10ヤード程度、人によってはほぼ差が出ないだろう、と小倉店長は言います。

 アプローチのスピン量は、相対的に「S系」のほうが多くなるとはいえ、ボールの止まり方が劇的に変わるとか、「S系」でないとギュギュっと止まらないというような顕著な差が出るわけではありません。

 とくに意図的に強いスピンをかける打ち方をする人でないなら、気にするレベルではない場合が多いでしょう。

フィーリングを重視して使用ボールは選んだほうがいい!?

 そのうえで小倉店長は、ボール選びはフィーリングと結果で判断するべきだろうといいます。

「まずは飛距離性能とスピン性能どちらを優先するか。スピン性能を重視して、少しでもスピンがほしいなら『S系』がファーストチョイスになるでしょう。飛距離を重視するのであれば、コースで両者を9ホールずつくらい使ってみて、結果で判断するといいと思います」

ショットやパッティングでのフィーリングを重視してボールを選んだ方がいい 写真:unsplash
ショットやパッティングでのフィーリングを重視してボールを選んだ方がいい 写真:unsplash

「個人的には、『最高に飛んだ1発が出たほう』ではなく、『想定外のミスが出なかったほう』を選ぶことをオススメします」(小倉店長)

 しかしほとんどのアマチュアゴルファーは、これらの性能差を強く実感できないのが現実でしょう。そういう場合は、フィーリングの好みを判断基準にするべきだというのが小倉店長の考えです。

 フィーリングも重要な性能の一つで、打感が気持ちいいと感じるもののほうがスムーズにスイングできたりインパクトのリキみが出にくいという側面はあります。おそらくこれは、性能による数ヤードの飛距離差よりも、結果に直結するのではないでしょうか。

 その基準はドライバーでもいいですしパターでもアプローチでもOK。自分がもっともフィーリングを大事にしているクラブで、気持ちのいい打感が得られるボールを選ぶことが大切です。

「いずれにしても、一度決めたボールはコロコロ変えずに、ある程度固定して使い続けるようにしてください。それが基準になって、次にボールを変えようと思った際にも選びやすくなります。また、クラブとボールを同時に変えてしまうと基準がなくなってしまうので注意が必要ですよ」(小倉店長)

鈴木康介