女と過ごすうちに帰れなくなる男役「出口にたどり着けない」

 俳優の林遣都が主演する舞台『帰れない男〜慰留と斡旋の攻防〜』が13日、東京・本多劇場で初日を迎えた。

 同舞台は、M&Oplaysプロデュースの倉持裕氏の新作公演。ある出来事をきっかけに、不思議な屋敷に誘い込まれた主人公(林)が、その屋敷の主人と若妻(藤間爽子)に翻弄(ほんろう)され、もてなしを受けるうちに本来の自分を見失ってゆく様を描くサスペンス。林は2016年にBunkamuraシアターコクーンで行った倉持氏演出のM&Oplaysプロデュース『家族の基礎』で初舞台を果たし、今作は林を主演に迎えて贈る新作書下ろし公演。藤間の他、柄本時生、新名基浩、佐藤直子、山崎一らが共演する。東京公演後は、愛知、島根、富山、大阪、宮城と全国へ巡演する。

 気まぐれに親切にした若い女(藤間)に連れられ、立派な門構えの屋敷に来てしまった男(林)。夜ごと催される宴の中で、男は次第に女にひかれていく。屋敷の中は薄暗く、廊下は恐ろしく長い。そして部屋の数も分からない。連れ戻しに来た友人に「帰ろうにも出口にたどり着けないんだ」と言う男は、次第に正気を失っていく。

 初日を迎えた林は、「充実感でいっぱいの稽古でした。倉持さんには毎日のように新しい気づきや学びを与えてもらいました」と初日までの日々を懐古。「見に来てくださる皆さまにも、この本の面白さを存分に感じていただけるよう、精一杯の力で挑みたいと思います」と語り、「頼もしい共演者の方々と共に、本多劇場でお待ちしています」と呼びかけた。

 演出の倉持氏は、「目論見通り、男女間の嫉妬心、猜疑心、復讐(ふくしゅう)心が漂う幻想的な芝居になったと思う」と出来栄えを語り、「稽古中、俳優たちには素直な感情表現をなるべく抑え、理性的に努めることを求め、それでも漏れ出てしまう欲や本音を大事にしたいと説明し、皆、それに見事に応えてくれた」と振り返った。「あえて選んだ古風な演劇的表現に関し、スタッフも素晴らしい仕事をしてくれた。皆様、劇場でお待ちしています」とコメントしている。ENCOUNT編集部