原則65歳から年金が受給できます。それまで会社勤務で給与収入のみであった場合は確定申告が不要でしたが、給与収入を得ながら年金をもらうようになった場合、確定申告は必要になるのでしょうか。本記事では、年金の確定申告について解説します。

確定申告が不要になるケース

年金を受給している人は、一定の要件を満たしている場合に確定申告をしなくてもよい「確定申告不要制度」というものがあります。
 
以下1、2の両方に該当する場合に対象になります。
 

1. 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

 
それぞれについて詳しく解説していきます。
 

公的年金等って何?

公的年金等とは国民年金や厚生年金、共済組合から支給される老齢年金などが該当します。その他、普通恩給や過去の勤務に基づき使用者であったものから支給される年金、確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金も対象になります。
 

源泉徴収の対象になる人は?

源泉徴収の対象になるのは、65歳未満で108万円、65歳以上で158万円以上の老齢年金を受け取っている人です。源泉徴収されている場合、「公的年金等の源泉徴収票」が送られてくるので、そちらで確認できます。
 

公的年金等に係る雑所得以外の所得って何?

公的年金等に係る雑所得以外の所得としては、例えば働いていて得られる給与や、生命保険契約に基づいて支給される個人年金、生命保険の満期返戻金などが該当します。
 
公的年金等以外の所得が当てはまると覚えておきましょう。
 

年収250万円の場合

今回のケースでは、年金受給以外にも給与所得が250万円あります。確定申告不要制度の定義に照らすと、給与所得が年20万円以上あるため、確定申告が必要になります。
 
給与の場合、12月に「年末調整」を受けることになります。そして、翌年の1月頃に給与所得の源泉徴収票を職場からもらっているはずですので、そこに記載されている所得の金額を確定申告表の「給与所得」の欄に書き込んでください。
 
また、公的年金等の源泉徴収票に記載されている金額を「雑所得」の欄に書き込みます。
 

確定申告不要制度の対象でも確定申告が必要な人

確定申告不要制度の対象になる場合でも、確定申告が必要なケースがいくつかあるので紹介します。
 

所得税の還付を受ける人

公的年金等から源泉徴収をされている人で、例えば住宅ローン控除や医療費控除を受ける場合や、災害・盗難にあったという場合などは、源泉徴収で天引きされた額が戻ってくる還付を受けられる場合があります。
 
本来支払うべき所得税よりも、源泉徴収された金額が大きかった場合に還付となります。還付を受けるには確定申告をした上で、還付を申請する必要があります。
 

医療費控除を受ける人

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費のうち、10万円を超える部分の金額を所得控除することができる制度です。
 
この制度を受けるためには確定申告をして、「医療費控除の明細書」に病院や薬局の名称や実際に支払った額を記載したものを添付する必要があります。ただし、生命保険や高額医療費制度で補填される分の金額は除かれます。
 
ここでいう医療費には、診察代や処方箋に基づく薬代、通院に必要な電車やバス代、歯の治療費などが含まれます。また、一緒に住んでいる家族の治療費も医療費に含めることができます。ただし、領収書や請求書などの確証になるものが必要です。
 

まとめ

年収250万円の人が年金を受給する場合、確定申告が必要になることがわかりました。
 
収入が給与と年金のみである場合、それぞれ源泉徴収票がもらえますので、そちらに記載の所得額を「給与所得」と「雑所得(公的年金等)」の欄に記載すれば、確定申告の作業はほぼ完了になりますから、難易度はそれほど高くありません。やり方は税務署や確定申告相談会で教えてもらえるので、そちらで聞いてみるのもいいでしょう。
 
確定申告の書類は、税務署や確定申告会場のほか、市区町村の担当窓口や指導相談会場などで受け取ることができます。また、国税庁のHPからダウンロードすることもできますし、インターネット経由での電子申告もできます。
 
確定申告期限は収入があった翌年の3月15日までです。忘れずに確定申告をするようにしましょう。
 

出典

政府広報オンライン ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度
日本年金機構 年金から所得税および復興特別所得税が源泉徴収される対象となる人は、どのような人でしょうか。
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
 
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士