SBI証券と楽天証券の4月のNISA積立設定金額を見ると、全世界株式やS&P500種株価指数など外国株を対象にしたインデックスファンドの人気が高い。この記事では、SBI証券と楽天証券のNISAでの人気ファンドについて解説する。

 

押さえておくべき注目のファンドは?

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

SBI証券で3位、楽天証券で1位の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果を目指すインデックスファンドである。2023年1月までアクティブファンドの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」が19カ月連続で純資産残高1位の座をキープしていたが、2月に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が1997年10月以来、およそ25年ぶりにインデックスファンドとして1位になった。同ファンドは「つみたてNISA」の対象ファンドとなっており、毎月、高水準の資金流入が続いている。3月は約627億円の資金流入があり、これは国内公募の追加型株式投資信託の中で最大である。また、純資産残高は1兆8757億円となり、2位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の約1兆7852億円と差を広げた。SBI証券と楽天証券のNISA積立設定金額ランキングでも上位に入っており、今後も高水準の資金流入が続く可能性が高いだろう。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

SBI証券で1位、楽天証券で2位の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」に連動する投資成果をめざすインデックスファンドで、このファンド1本で全世界の株式に国際分散投資できる便利なファンドである。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2022」で1位に選ばれており、「オルカン」とも呼ばれ個人投資家の人気が高い。4月14日に純資産残高1兆円の大台を突破し話題になった。同ファンドの3月末時点における資産構成は、以下の通り。

1.先進国株式 83.4%
2.新興国株式 11.0%
3.国内株式    5.5%

また、3月末時点における「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」との騰落率を比較すると、以下のようになる。

 

3月末時点のパフォーマンスでは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を上回っている。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は米国株の組入比率が最大(57.5%)であるが、2位の日本株(5.4%)のパフォーマンスが好調であることが影響していると考えられる。また、欧州の株式も好調で先進国株式のパフォーマンスもいい。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は3月に信託報酬を引き下げ

三菱UFJ国際投信は、4月25日から「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬を0.0968%以内から0.09372%に引き下げると発表した。これは、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード S&P500」が3月30日に信託報酬0.09372%に新規設定されたことがきっかけと考えられる。

2024年1月に「新NISA」が始まり、収益非課税の投資枠が一人あたり1800万円に拡大されることにより、信託報酬を引き下げるファンドが多くなっている。ただ、「つみたてNISA」の対象となるインデックスファンドは、ノーロード(手数料無料)で信託報酬が0.1%を下回る水準となっている。投資家にとって低コストは歓迎できる点ではあるが、あまりにもコストが低くなると販売会社や運用会社から投資家に対して付加価値のあるサービスができなくなる可能性もある。

低コストの「eMAXIS Slim」シリーズを運用している三菱UFJ国際投信は、米国で販売されているS&P500種株価指数を対象としたインデックスファンドの経費率(運用コスト)は単純平均で0.43%、中央値で0.3%と発表している。これは、日本の最低水準(税抜で0.0852%)の3.5〜5倍高い水準となっている。さらに、米国のS&P500種株価指数を対象にしたインデックスファンドで最大のVanguardの「Vanguard 500 Index Admiral」の2023年3月末時点における純資産残高は約52兆円である。これは、国内最大規模を誇る「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産残高(1兆8757億円)の約27倍である。米国ではノーロードであっても証券会社やIFAが別途アドバイザリー・フィーを課するファンドもある。

2024年1月から始まる「新NISA」では、これから投資を始めようとする初心者も多く、運用のアドバイスも必要とする人も少なくない。米国のようにややコストのかかる「アドバイザリー専用投信」を作り、低コストの「オンライン専用」だけでなく、運用アドバイスを必要とする人たちにも「新NISA」で投資を始めてもらうという取り組みも必要だと考えている。

執筆/山下 耕太郎