●北海道コンサドーレ札幌

 明治安田J1リーグが開幕し、各チームは5試合を消化した。首位を走るFC町田ゼルビアのように好調を維持するチームがある一方で、なかなか勝ち点を積み上げられずに苦しんでいるチームも多い。今回は開幕からつまずき、このままではまずいチームを紹介する。※4月2日時点で横浜F・マリノスとガンバ大阪は4試合消化となっている
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順位:20位(勝ち点1)
成績:0勝1分4敗(2得点13失点)
監督:ミハイロ・ペトロヴィッチ

 北海道コンサドーレ札幌に春は来るのか。

 今季の札幌の陣容は、12位フィニッシュとなった昨季から大きく変化した。昨季途中にMF金子拓郎が海外へステップアップを果たすと、今オフには田中駿汰、小柏剛、ルーカス・フェルナンデス、福森晃斗が他クラブへ移籍。主力級の選手たちが多く退団したことで、これまで通りの戦い方に難しさが生まれることは想像に難しくなかった。

 もちろんクラブはオフの移籍市場でその穴埋めを図ったが、補強が十分だったとは言い難く、やはり昨季より戦力ダウンしている印象は否めない。。今季の開幕戦となったアビスパ福岡戦で勝ち点1を掴んだものの、そこから4試合連続で黒星を喫して現在は最下位に沈んでいる。

 先日行われた第5節ヴィッセル神戸戦では1-6の大敗。札幌が採用したマンツーマンディフェンスが仇となった形だ。個々が1対1のデュエルで負け続け、中盤にスペースを作られたことで、裸になったディフェンスラインが昨季王者の圧倒的な火力にさらされ続けてしまった。

 打ち合い上等のスタイルは時に魅力的なサッカーを実現するが、相手チームが対策を徹底し、なおかつ自分たちの守備が崩壊すれば、神戸戦のように目も当てられぬ大敗を招く。このまま今の戦い方を貫けば、その先に待っているのは屈辱的なJ2降格になってしまうだろう。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督がやらなければならないことは山積みだが、完全崩壊した守備の立て直しは最優先事項だ。

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●FC東京
順位:15位(勝ち点5)
成績:1勝2分2敗(7得点9失点)
監督:ピーター・クラモフスキー

 FC東京は新たなエンブレムで迎えた今季、苦戦を強いられている。第4節アビスパ福岡戦(3-1)でようやく初勝利を飾ったが、次の第5節川崎フロンターレ戦で0-3の完敗。3連敗を喫していた川崎に悠々と勝ち点3を与えてしまった。

 改善すべき点はさまざまだが、まずは守備陣の不安定さから立て直したい。今季はここまでクリーンシートが無く、すでにレッドカードを2枚出されている。昨季途中から就任したピーター・クラモフスキー監督はラインを高く設定しているが、その練度は不十分だ。ラインが上がりきっていない状況でボールを奪われ、強烈なカウンターを受けるシーンがしばしば見受けられる。ビルドアップの際には繋ぐことに執着している印象で、横パスに終始してサイドバックの位置で詰まることも。攻守ともに守備陣の不安定なプレーが悪循環を招いていると言えるだろう。

 加えて、前述した「多摩川クラシコ」では川崎のプレスに苦しみ、なかなか前線にボールを届けることが出来なかった。これによりゼロトップの役割を担っていたMF荒木遼太郎は孤立し、攻撃は停滞。得意な形が上手くいかない際にチームとしてどのように対応するのか、2年目の指揮官には修正力が求められている。

●アビスパ福岡
順位:16位(勝ち点5)
成績:1勝2分2敗(4得点6失点)
監督:長谷部茂利

 長谷部茂利監督の下で5年目を迎えるアビスパ福岡にとって、今季はFW山岸祐也(名古屋グランパス)の「幻影」を追いかけるシーズンになりそうだ。

 昨季は、クラブ史上初のYBCルヴァンカップ優勝を成し遂げ、リーグ戦では7位フィニッシュと充実したシーズンを過ごした。しかし、その原動力となった山岸やMF井手口陽介(ヴィッセル神戸)といった主力選手たちが今オフにチームを退団。昨季のような躍進を再現するハードルは高くなった。

 いざ蓋を開けてみれば、開幕3試合は1勝2分0敗(2得点1失点)という悪くない滑り出し。しかし、山岸と井手口退団の穴は徐々に響いてくる。第4節FC東京戦(1-3)、第5節浦和レッズ戦(1-2)と複数失点を許して敗れる試合が続いた。ロングボールを納めてくれるだけでなく、攻撃の潤滑油だった山岸が前線から抜けたことで攻撃陣は停滞し、自慢の守備が90分間耐え切れない。運動量に優れた井手口の不在により中盤の支配力が低下し、セカンドボールを拾えないシーンが増えた印象だ。

 そんな中で、新加入のシャハブ・ザヘディには期待したい。28歳のイラン代表FWは、高いシュートへの意欲が魅力的。第5節浦和戦では強烈なミドルシュートをネットに突き刺して、チームに先制点をもたらした。山岸のようなポストプレーや競り合いに強い選手ではないが、一発で局面を打開できる彼の決定力はチームの救世主となるかもしれない。

●サガン鳥栖
順位:19位(勝ち点3)
成績:1勝0分4敗(6得点11失点)
監督:川井健太

 育成型クラブとしてその立ち位置を確立し、見事にJ1に定着することに成功したサガン鳥栖だったが、今季は既にJ2降格がちらつく厳しい船出となっている。

 第1節アルビレックス新潟戦で1-2の敗北を喫するも、第2節北海道コンサドーレ札幌戦では序盤から主導権を握って4-0の快勝を収めた鳥栖。しかし、ここから調子を上げていけると思いきや、第3節サンフレッチェ広島戦では0-4の大敗を喫した。第5節終了時点で札幌が勝ち無しで最下位をさまよっていることを考えると、札幌に大勝したことは鳥栖の調子が良かったわけではなかったとも捉えられる。

 課題の1つとして挙げられるのが、ビルドアップがなかなか有効な攻撃に繋がっていないことだ。1試合あたりのボール支配率は全20チーム中7位の「52.6%」、1試合あたりの総パス数は6位の「397本」となっているが、1試合あたりの総シュート数は17位となる「11.2本」に留まっている(データサイト『Sofa Score』参照)。相手の守備網を突破できず、攻撃に停滞感が漂っているのが現状だ。

 しかしながら、MF河原創へ良い形でボールを供給することが出来れば、止まっていた攻撃の歯車はまた回りだすはず。第5節FC町田ゼルビア戦では、河原の縦パスを起点にしてFWマルセロ・ヒアンのゴールが生まれた。後半から町田が河原への警戒を強めたことで、最前線に立つヒアンの存在感が薄れていったように見えたため、復調へのキーワードは「河原を解放せよ」なのかもしれない。

 就任3年目となる川井健太監督は、この正念場を乗り越えることが出来るだろうか。

●横浜F・マリノス
順位:11位(勝ち点6)
成績:2勝0分2敗(6得点6失点)
監督:ハリー・キューウェル

 横浜F・マリノスは、現在リーグ11位に位置している。まだ4試合を終えただけではあるが、昨季ヴィッセル神戸と優勝争いを演じていたという事実を踏まえると、苦戦していると言わざるを得ないだろう。

 今季のリーグ戦では会心の勝利がまだ無い。東京ヴェルディとの開幕戦(2-1)では終盤に2ゴールを奪って勝利したが、昇格組である東京ヴェルディにかなり苦しめられた。第4節京都サンガF.C.戦(3-2)の勝利は、序盤に相手選手が退場したことが大きいだろう。不用意なロストからピンチを招くシーンが散見されたが、守備陣の踏ん張りでここまで勝ち点を積み上げてきた。

 第5節名古屋グランパス戦(1-2)は、内容は悪くなかったものの結果がついて来なかった。

 この試合では、籠城する名古屋を波状攻撃でこじ開けて先制点を奪うことに成功。堅実な対応で相手のカウンターを防ぎ、選手交代やシステム変更を経ながら理想的な試合運びをしていたと言える。しかし、味方選手が1人少ない状況から同点弾を許すと、後半終盤にフリーキックから逆転されてしまった。結果論から言えば、名古屋が攻勢を強める前にもう1点奪っておきたかったところだ。流れを掴みきるためにはゴール前でのクオリティをもう少し上げなければならなかった。

 4月には川崎フロンターレ、ヴィッセル神戸といった難敵との対戦が控えている。本来いるべき順位まで戻るためには、1つひとつの攻撃をシュートで完結させたい。是が非でも勝利しなければならない2試合で改善は見られるだろうか。

●ジュビロ磐田
順位:18位(勝ち点3)
成績:1勝0分4敗(6得点10失点)
監督:横内昭展

 補強禁止処分という苦難を乗り越えてJ1昇格を果たしたジュビロ磐田だが、今季は新たな苦難に直面している。

 第1節ヴィッセル神戸戦(0-2)では昨季王者からJ1の洗礼を受けたが、第2節川崎フロンターレ戦では5-4の粘り勝ち。しかし、その後の柏レイソル、ガンバ大阪、鹿島アントラーズと3戦連続で黒星を喫した。どの試合も内容は決して悪くないが、勝利という結果がついてこない。“ケチャップの蓋”がなかなか開いてくれない、もどかしい状況が続いている。

 代表ウィーク明けの第5節鹿島戦(0-1)では、自分たちの決定力不足に苦しめられた。データサイト『Sofa Score』によれば、磐田のゴール期待値は「2.03」(鹿島は「1.07」)。相手を上回るシュート数を記録し、得点を生む十分な決定機はあった。ハンドによるPKで失った1点に泣いた結果となったが、鹿島相手にこのパフォーマンスを発揮できたことはチームとして大きな自信になったはずだ。残留を争う他の下位チームと比較すると、この現状は全く悲観することはないだろう。

 だが、18位は「内容が良いから大丈夫だ」と安心していられる順位ではない。次節アルビレックス新潟戦では、内容の良さよりも愚直に勝ち点を掴み取りたい。

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