プレイステーションのサブスクリプションサービス「PlayStation Plus」では、加入プランに応じ新旧さまざまな名作がプレイ可能です。プレミアムプラン内のクラシックスカタログでは、PSやPS3はもちろん、PSPの作品などもプレイ可能です。

そんな「PlayStation Plus」の4月度の更新で、クラシックスカタログにPSP版『俺の屍を越えてゆけ』が追加されました。本作はアルファ・システムが開発し、1999年にプレイステーション向けに発売されたRPGをベースに、2011年に調整を施してPSPで発売したバージョンです。

PS5/PS4で遊べるようになった『俺の屍を越えてゆけ』では、アップレンダリングや巻き戻し、クイックセーブ、カスタムフィルターなどの追加機能を実装。桝田省治氏の手がける、“生きる、死ぬ、託す。”のキャッチフレーズでお馴染みの伝説の世代交代RPGがついに「PlayStation Plus」に登場しました。

本稿では、あらためて『俺の屍を越えてゆけ』の魅力を紹介していきます。なお、スクリーンショット撮影はPS5にて行っています。

呪いをかけられた短命の一族の物語
まず、本作を初めて遊ぶ際には、ゲームメニューの「序章」を必ず選びましょう。本作は京の都を襲う鬼の頭目【朱点童子】を討ち倒さんとするのが大きな目的であり、序章ではその朱点童子の住処までたどり着いた一組の夫婦、そして主人公の両親である源太とお輪による“とある物語”が描かれています。

『俺の屍を越えてゆけ』では、とても重要な場面でアニメーションのカットインが入ります。その多くがとても無情で、恐ろしくて、そしてどこかコミカルなシーンで印象的なものばかり。一族にまつわる呪いと戦いの発端が、序章でも最高にエグく素晴らしく表現されています。

さて、主人公の一族には朱点童子から「常人よりも早く成長して数年で死ぬ」「人との間に子を残せない」という2つの呪いがかけられています。その呪いを断つために天界の神の力を借り、神々と交わって血を残してその意志と力を継ぎながら、やがて朱点童子を討ち果たして呪いを消すしかないのです。

本編の物語は源太とお輪の子である主人公と、最初に交わることになる神様から授かった子供の2人から始まります。さらに、天界で最高位に位置する女神【太照天昼子】から使わされたお世話係・イツ花がゲームの説明やサポートを行ってくれます。このイツ花が、いつだって元気をくれるんです。

限られた時間の中で選ばなければならない一族の道
ゲーム本編は一月ごとの区切りで進行していき、プレイヤーはその中でダンジョンで戦闘や探索を行う「出陣」や、神と交わる「交神」などの行動を選択しなければなりません。また、朱点童子の配下の鬼によって荒廃しきった京の都に投資して「復興」させることも重要です。

プレイヤーの分身となる一族の当主を含め、すべての家族はどれだけ長くても2年程度で死んでしまいます。月のコマンドでも「出陣」「交神」といった重要なものは必ず時間が過ぎてしまうので、一族の人間の健康や状況を考え、今一族がするべきことはなんなのかを考えて行動しなければなりません。

「出陣」は鬼たちが棲んでいるいくつかのダンジョンに挑む方式で、戦闘や時間で徐々に減っていく火時計の火が無くなるまでは行動が可能です。ダンジョン内では雑魚の鬼と戦って経験値やアイテム、術などを稼いだり、奥に待ち受けるボスと戦ったりして、一族を強化していかなければなりません。また、ダンジョン開始時にはもうひとりの重要人物・黄川人の話も聞けますよ。

また、戦いの中で得られる“戦勝点”という数値は、子孫を残すための「交神」に必須のもの。戦うことでレベルを上げ、また、子孫を残すための準備をしていくのが本作の基本的なルールです。敵の中には、天界の神が朱点童子によって鬼に変えられた存在もいるので、彼らを解放していくことも大切です。

ゲームを進めていくことで、一族の人間が就ける職業も増えていきます。職業は神から授かった時点で決定しなければならず、中にはかなりクセの強いものもありますが、どれも個性豊かな能力を秘めています。遊べば遊ぶほど、一族の戦いの選択肢は増えていくのです。秀でた能力を持つものが生まれれば特別な奥義を覚える者も。子に奥義を伝えることもできますよ。

ゲームに慣れないうちはダンジョンの序盤を彷徨っているだけで時間切れになることも珍しくありません。また、子供たちの年齢が近くなりすぎて入れ替えが難しくなることも。悩みながら足掻き、そして少しずつ理解していくのも『俺の屍を越えてゆけ』の大きな魅力ですね。

自分のペースで一族の物語を紡ごう
このゲームの大きな魅力は、大きな目的以外を達成するため「自分の一族の物語」を楽しむことです。ひたすら効率的なプレイをするも良し、本家と分家で役割を決めるような一族ロールプレイを楽しむも良し、なんなら顔が気に食わないからコイツを重用しない!なんてプレイだって問題ないのです。

本作には「あっさり」から「どっぷり」までの4つの難易度が用意されています。この難易度は敵の強さや取得経験値のほか、ゲーム内での色々な要素に関わってくるもので、オプションメニューからいつでも変更する事ができます。難易度によってかなりプレイ時間にも差が出るので、自分の遊びたいペースで選ぶのも一つの方法です。

交神できる神の数はとても多く、それぞれの神が授けてくれる遺伝子(ステータスや性格に直結するもの)も大きく異なります。基本的には戦勝点が多い神のほうが伝わる遺伝子が高いものも多いのですが、極端なステータスになることもあります。逆に戦勝点が低くても一芸に秀でた能力を持つ神も少なくないため、色々な交神を試すのも本作の楽しみです。

しっかりと“一族を繋ぐこと”を考えてプレイしていけば、基本的にゲームオーバーにはなりません。また、戦って稼いで交神をしていく限り、余程おかしな選択をしなければ子孫たちが大きく弱体化することもほぼありません。どれだけ険しい旅路でも、いつかは必ず一族の意思は朱点童子へと届いていくでしょう。

一族の戦いは非常に厳しく、そして直面する真実やその裏にあるものは、プレイヤーに辛くのしかかるかも知れません。そんなときは、時々でいいので町の姿や復興された施設、何より一族の姿を見ましょう。そして、なによりもイツ花を愛でましょう。


『俺の屍を越えてゆけ』は“生きる、死ぬ、託す”ことの大切さやプレイヤーが自分の意志で一族の歴史を紡いでいけるゲーム体験、そして何より桝田省治氏の作り出す世界観など、発売から約25年経った今でもその魅力は輝き続けています。最初はわからないことも多いですが、説明の丁寧さもあり、遊んでいる内に理解していく楽しみも味わえます。

さまざまな追加要素のあるPSP版に、さらにPS5/PS4向けにどこでもセーブや巻き戻しといった新たな機能も加わり、ゲームの遊びやすさはさらに向上。もちろん使わずにオリジナル版に近いゲームをプレイすることも可能です。過去の名作RPGを現行ハードで遊べるのはとても嬉しいことです。

PS5/PS4版『俺の屍を越えてゆけ』は「PlayStation Plus」のクラシックスカタログ(プレミアムプラン対象)に登録されているほか、PlayStationストアにて1,100円で販売されています。ストーリー展開も含めてゲームのインパクトを全身で味わい、ぜひとも自分だけの一族を作り上げてみてください。

そして最後に。このゲームで最も重要なことですが、ゲームを終了するときには必ずセーブ後のメニューで「“花”を聴いて終了」を選びましょうね!