Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US

2023年2月12日の記事を編集して再掲載しています。

ゲームボーイのような形で、昔のゲームが遊べるエミュレーターと呼ばれる携帯ゲーム機に新たなムーブメントが起きています。

それは「ジョイスティックが搭載されはじめている」こと。PlayStationやドリームキャストのゲームが「レトロ」と見なされるようになった今、これらが遊べるように設計された携帯ゲーム機にもジョイスティックが必要になったからです。

今回紹介するGKD Mini Plusは、このジョイスティックが取り外し可能なアクセサリーとして搭載されていますが、個人的にはない方がスッキリしていて良いと思います。

Nintendo SwitchやStream Deck、初代ゲームボーイアドバンスなど、携帯ゲーム機は横長のレイアウトのほうが人間工学的にも優れ、画面も大きくできるのですが、私は画面の下にコントローラーがある初代ゲームボーイのレイアウトが好きで、特にレトロゲームを楽しむのには向いていると思っています。

これまで、レトロゲームをプレイする際は、大ヒットを記録したMiyoo Miniという製品を使ってきましたが、なかなか再入荷されず入手が困難なため、読者の皆さんにおすすめできずにいました。

GKD Mini PlusがMiyoo Miniと比べて遜色ないとまでは言いませんが、優れたパフォーマンス、人間工学に基づいた設計、そして何より今買えるということを考慮すればおすすめできます。それでもこのズボンのようなジョイスティックは好きになれませんが...。

GKD Mini Plus

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US

これは何?: ジョイスティックが使えて、初代PlayStationやドリームキャストなどのレトロ ゲームをプレイできる、ゲーム ボーイ型のエミュレーター。

価格:本体は110ドル(約1万4300円)、ジョイスティックがセットだと123ドル(約1万6000円)

好きなところ:優れたパフォーマンスで、画面は美しく、コントローラーの配置は手が大きくても使いやすくなっている

好きじゃないところ:UIや機能の使いやすさの面で課題がある。製品の品質もあまり高くなく、競合他社に遅れをとっている

注:今回使ったGKD Mini PlusはKeepRetroからGizmodo USに提供されたものです

身近なデザインに小さなイノベーションを

任天堂はこれまでにおよそ1億1900万台のゲームボーイを販売しています。ここまで売れているんですから、その象徴的なUIデザインを真似ることは全く恥ずかしいことではありません。前述したMiyoo Miniと同様、GKD Mini Plusではゲームボーイ下部の余白3分の1程度を削ったような、携帯性を高めたデザインになっています。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US GKD Mini Plus(左)はMiyoo Mini(右)よりやや大きく、ベゼルに余裕があって丸みを帯びています。

GKD Mini Plusはこの種のエミュレーターに新たな可能性を提案しつつも、当然ながらMiyoo Miniなどとは比較されると思います。しかしユーザーの反応を見ると十分に存在感をアピールすることに成功し、エミュレーター界でのポジションも確保できたのではないでしょうか。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US GKD Mini Plusは他社製ほどの高級感はないものの、操作性は抜群です。

GKD Mini Plusは大きな3.5インチ/640x480ディスプレイを搭載し、ベゼルも厚く、コントローラーも余裕のある作りになっています。特に私のような手の大きなユーザーにとってMiyoo Miniは操作系が小さく、窮屈に感じられることがありました。(不満を感じていた人が多かったのか、2023年に大型のMiyoo Mini+が発売されるとのこと。)その点GKD Mini Plusは快適で、背面のボタンへも難なくアクセスし操作することができるようになっています。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US GKD Mini Plusの上部には電源/スリープボタンとゲーム・本体ファームウェア用に2つのmicroSDスロットが搭載されています。

ここ数年、中国製のエミュレーターをレビューしていますが、その進化には驚きを隠せません。レビューした中には任天堂など業界大手のゲーム機に匹敵する製品もありますが、GKD Mini Plusにはもう少し改善の余地がありそうです。

プラスチックが少し安っぽく、パーツも完全に整った配置になっているわけではありません。ゲームをプレイするのに影響はありませんし、押した感触などは最高なんですが、Android非搭載で100ドル超の携帯ゲーム機としてはもう少し高いビルドクオリティを期待したいところです。

ズボンをはいて、いざ3Dゲームをプレイ!

GKD Mini Plus最大の売りは下部にジョイスティックをドッキングさせて使えるという点。これによって3次元視点のゲームが遊べるようになります。初代PlayStation、ドリームキャスト、PSP、そしてNINTENDO 64などのゲームタイトルが移植されているため、ジョイスティックは必須の操作系になりつつありますが、この装着が意外と大変。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US ジョイスティックを接続すると平面に膨らみができて持ちやすくはなります。

ジョイスティックにはゲームボーイカラーの電池ボックスのような膨らみがあり、人間工学的にも持ちやすくなるのですが私はあまり気に入っていません。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US アクセサリーのジョイスティックはNintendo Switchのジョイコンと似たサイズ感になっています。

新しいチャレンジ自体は評価できますが、背面の形状からジョイスティックを使ったプレイには若干の違和感を感じます。それに加え、こうしたゲーム機で遊ぶ時、個人的には携帯性を優先したいんです。せっかく小さいんですから、ポケットからさっと出して即座にレトロゲームができるほうがいいですよね。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US ジョイスティックを装着するとスピーカーが塞がれてややこもった音になるのも残念。

本体下部のコネクタはジョイスティック装着時に塞がれてしまいますが、パススルー接続されるためジョイスティック側についているコネクタから問題なく利用できます。ただこのジョイスティックはスピーカーを塞いでしまうので、イヤホンを使わない場合の音質はかなり落ちます。ジョイスティックパーツ自体が大きいんですから、こちらにスピーカーも内蔵してほしかったところですね。

縦モード好きに嬉しい機能

GKD Mini Plusの画面左側には明るさを調整するためのボタン(反対にはボリュームボタン)がありますが、このラベルが少しわかりづらいんですが理由があります。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US 左側面にある2つのボタンは縦モードプレイ時にリマップして使えるようになっています。

このボタンはGKD Mini Plusを90度回転させて縦長のゲームをプレイする時に、別の機能が割り当てられて使えるようになっています。シューティングゲームなどで便利ですね。(ちなみに英語圏では縦長のゲームを日本語の縦モードから派生してTate Modo(テイトモード)と呼んでいます。)

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US 左側の照度調整ボタンは縦モードで遊ぶ時に別の機能を割り当てて使うことができます。

持ち方としてはやや不便ですが、初期のレトロゲーム愛好家にとって『1942』のようなタイトルを当時のままのアスペクト比で遊べるのは嬉しいところ。ただ個人的には持ちづらいため、このモードで遊ぶことはなさそうです。

ソフトウェアの問題はあるが、性能は確か

中国製携帯ゲーム機の多くはソフトウェアのUIが使いづらいという欠点がありますが、GKD Mini Plusは心配いりません。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US GKD Mini Plusデフォルトのメニュー画面、Lovely Child(左)とEmulation Station(右)

初期状態では電源を入れると自動的に「Lovely Child」というデザインのメニュー画面が表示されます。ただこのデフォルトのデザインは全て翻訳されているわけではなく、一部中国語が残ってしまっているため荒削り感が否めません。

もしこれが気に入らないのであれば、電源投入時にAボタンを長押しして起動すると、より洗練された「Emulation Station」というデザインに変えることができます。

面倒なのは毎回長押し起動しないと「Emulation Station」を使えない点。残念ながらデフォルトで起動する方法は今の所ないようです。

GKD Mini Plusに採用されている1.8GHz/4コアのRK3566プロセッサーは、これまで多くの携帯ゲーム機に搭載され、それほど目新しいものではありませんし、パフォーマンスも特筆すべきところはありません。初代PlayStationまでのゲームは問題なくプレイできますし、必要ならすぐに設定メニューに入ってパフォーマンスや操作感の調整が可能です。

ドリームキャストやNINTENDO 64のタイトルもほとんど問題なくプレイできますが、さらに快適にしたいならFrame Skippingオプション(フレームレートを下げる)を使うことを強くおすすめします。またPSPのタイトルも遊べますが、こちらが主になるのであればGKD Mini Plusよりも良いエミュレーションゲーム機があるのでそちらを選ぶのが良いでしょう。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US GKD Mini Plusの画面品質は素晴らしくて、RetroArch機能を使うことで画面をオリジナルのゲーム機でプレイしているかのように調整することができます。

ファームウェアが何度かアップデートされるまでバグや癖に悩まされるのが、この手の製品のデメリットです。ゲームボーイ、ゲームボーイカラー、ゲームギアなどの古めのゲームでは画面の余白ができるので、それを埋めるようにオーバーレイが表示されます。非表示にもできますが、デフォルト設定はできないので、新しいゲームを始めるたびに手動でオーバーレイを消さなければなりません。

こういった癖はまだ我慢できますが、バグはもう少し深刻です。例えばニンテンドーDSのゲームは、プレイしようとするとクラッシュしてしまいました。後日対応されればいいんですが、やはりこのあたりは大手ゲーム会社のようにはいかないですね。

エミュレーションに関する注意事項:

任天堂、セガ、ソニー、マイクロソフトのゲーム機はカートリッジやディスク、公式オンラインゲームストアからのダウンロードでソフトを起動します。対してこういった携帯ゲーム機はソフトウェアエミュレーションでROMファイルを起動します。こうした製品にROMファイルを取り込み、最適に設定するにはある程度の技術力が必要です。またゲームをプレイするためにオリジナルのメディアではなく、ROMファイルを使うのは法的にもグレーゾーンとなります。こうした方式は現状問題視されていませんが、一部任天堂などはROMファイルがダウンロードできるウェブサイトに法的手段を講じています。

GKD Mini Plusは次世代の携帯ゲーム機となり得るか?

ここまで書いてきたことを総括すると、GKD Mini Plusは非常に優秀ですが、ジョイスティックオプションの必要性には疑問があります。もしさらに強力なプロセッサが搭載され、ドリームキャストやNINTENDO 64、さらにはPSPのタイトルまでもがスムーズにプレイできるのであれば、13ドル(約1,700円)のジョイスティックもすすめられたでしょうが、そこまでではありませんでした。

Photo: Andrew Liszewski / Gizmodo US もっと3Dゲームを安定して楽しめるのなら、ジョイスティックに13ドル払う価値があったでしょう。

初代PlayStationのゲームをプレイしたいのであれば、ジョイスティックは確かに必要です。ですが個人的にそういったケースではGKD Plus Classic(180ドル/約2万3500円)の購入をおすすめします。GKD Plus Classicはより美しい金属製のボティを採用し、ジョイスティックもはじめから搭載されています。

私からすると、GKD Mini Plusは16ビット時代以前のゲームに適した非常に優秀な携帯ゲーム機であり、ジョイスティックを装着せずに使うのが良いと感じました。前述したMiyoo Miniよりも大きく快適に遊べるので、Miyoo Miniが手に入らない場合にはおすすめします。ただ、サポートなどの面ではMiyoo Miniに劣るので、自身で開発をしてくれるユーザーのコミュニティは必須です。今後どうなるかはわかりませんが、独自開発する人が出るほどの反響があれば期待できるのではないでしょうか。