今季町田の主将を務める元日本代表DF昌子源が19日、今季限りでの現役引退を発表したフランクフルトの同MF長谷部誠に対し「僕の中では、キャプテンと言えば小笠原満男さんと長谷部さん」と、日本代表として共に18年ロシアW杯などを戦った代表主将への思いを明かした。

 昌子にとって、大きな影響を受けたのが、常勝軍団・鹿島を象徴するキャプテン小笠原と、代表キャプテン・長谷部。「ふたりは両極端で、ランニングで言えば、1番先頭を走るのが長谷部さんで、後ろをしんどそうに走るのが満男さん。でも2人の共通点は、練習ではいつでも100パーセントで、試合になれば誰よりも戦うところ」。タイプは違えど、ふたりの背中を追い続けてきたという。

 長谷部について「一番すごいと思ったのは、どの試合でも波がないこと」だという。「どんな試合でも安定したプレーができる、というのは、サッカー選手としてなかなかできることじゃない。簡単じゃないんですよ。もしかしたら、どこか痛い、そんな日もあったかもしれない。苦手な相手やスタジアム、天候、ピッチコンディション。サッカーは毎試合ごとに条件が変わる。でもそんなこと一切感じさせない。長谷部さんが特別(調子が)悪い試合なんて、見たことがない」。どの試合でも高い基準をチームにもたらし、仲間を助け、ピッチで戦い続けた男の偉大さを熱弁した。

 「長谷部さんは(チームが)ゆるくなったら締めるけど、いいときは目立つことはない。ずっとチームのプラスに働く存在。それを毎試合やるから、誰もが異論なくキャプテンなんだなと。だから厳しいことでも、(言葉が)入ってきた」。その例として挙げたのが、W杯で議論を呼んだ“パス回し”だ。ロシアW杯の1次リーグ第3戦・ポーランド戦。日本は0―1とリードを許していたが、西野朗監督は他会場のスコアから、このままの点差をキープすることを決断。そのためにピッチに送り出されたのが、ベンチスタートだった長谷部だった。長谷部は後半37分にFW武藤とかわってピッチに立つと、チームに身ぶり手ぶりで指示を出しながら、最終ラインでゆっくりとパスを回し、ボールをキープ。結果、この試合は0―1のまま敗れたが、他会場の結果を受けて、日本は16強入りを果たした。

 「ポーランド戦も、あれは長谷部さんだからできたのかもしれない。結果論ですけど、そう思わせる人なんです。あの人がいなかったら、もしかしたら、違う展開だったんじゃないか、と思う試合が何度もある」。そう振り返り、日本を背負って戦ったキャプテンに最大限の敬意を示した昌子。「また日本に帰ってこられた時に、話をさせてもらえれば」と直接感謝の思いを伝える時を心待ちにしていた。