清水多嘉示《ギターと少女》1925年頃、石橋財団アーティゾン美術館

清水多嘉示(しみず・たかし、1897-1981)は近代日本を代表する彫刻家。その作品は全国の公園などで見ることができ、生き生きとしつつも優美な人物像は人目を引きます。

私も「あれ、名前を聞いたことあるぞ……?」と思ってネットで写真を検索してみたところ、見覚えのある作品がたくさんありました。たとえば上野公園に設置されている《みどりのリズム》は、東京の美術館めぐりがお好きな方にはお馴染みではないでしょうか?

本展では新収蔵の17点を中心に、清水による絵画作品に注目するとのこと。日本人として初めてサロン・ドートンヌに絵画と彫刻が同時入選を果たすなど、彫刻のみならず絵画でも素晴らしい作品を残した清水の芸術に迫ります。

見どころ①清水多嘉示ってどんな芸術家?

清水多嘉示《丘を望む》1927年、油彩・カンヴァス、石橋財団アーテ ィゾン美術館

1897年、長野県の原村に生まれた清水多嘉示は、美術の代用教員を務めながら画家としても活動しました。絵画を学ぶためにフランスに渡り、彫刻家のブールデル(ロダンの弟子)と出会ったことがきっかけで、彫刻の道を志すようになります。

彫刻家として広く知られている清水ですが、画家としても才能を発揮しました。つまり、打者としても投手としても一流の大谷翔平選手と同じ「二刀流」の使い手……と言えるのでは。

「二刀流」の清水は、サロン・ドートンヌで絵画と彫刻が同時に入選。サロン・ドートンヌとは、保守的な官展に対抗して設立され、新しい芸術が生まれる場となっていたフランスの展覧会です。

本展では、西洋美術の中心地で学び、評価を得た清水の作品が多数展示されます。石橋財団の創設者でありブリヂストンの創業者のブロンズ像《石橋正二郎像》も展示されるそうですし、同館ならではの展示が見られる予感がします。

見どころ②新収蔵17点を含む絵画作品

本展では新収蔵の17点を中心に、清水による絵画作品に焦点を当てます。風景や人物を描いた油彩画には、マティスやセザンヌから影響を受けたと思しきタッチや色彩があり、見応えのある作品ばかりです。

また、木炭で描いた裸婦の絵も数点展示されるとのこと。裸婦のデッサンは人の体を理解するのに役立つので、絵画のみならず彫刻への美意識も感じられるのでは。彫刻と絵画の両方を極めた清水の頭の中を覗き見できる、貴重な機会になりそうです。

見どころ③ブールデルの彫刻、マティス の絵画も

本展ではブールデルの彫刻や、マティス 、セザンヌの絵画など、清水が影響を受けたと考えられる同時代の芸術家の作品も展示されます。関連する作品も鑑賞することで、皆さまも好きな作家や作品の幅を広げられるのではないでしょうか。

アーティゾン美術館は、19世紀後半の印象派や 20 世紀の近代絵画をはじめ、約3000点の作品を収蔵しています。充実したコレクションが背景にあるからこそ叶えられる、清水の作品を核とした広くて深い特集になりそうです。

展覧会情報

アーティゾン美術館外観

石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示
会期:2024年3月30日(土)〜2024年7月7日(日)
会場:アーティゾン美術館4階展示室
休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
美術館ウェブサイト:アーティゾン美術館
同時開催:
◎ブランクーシ 本質を象る(6階展示室)
◎石橋財団コレクション選(5、4階展示室)