NHK連続テレビ小説「虎に翼」の第14話が18日、放送され、法廷劇「毒饅頭事件」の真相が明らかになる意外な展開に注目が集まった。

日本初の女性弁護士で、のちに裁判官になった三淵嘉子さんの人生をもとにした物語を描く朝ドラ「虎に翼」。女優の伊藤沙莉が主人公の猪爪寅子役を演じている。ドラマは第3週「女は三界に家なし?」(第11〜15話)が放送中で、弁護士を目指して法律を学ぶために寅子が通う明律大学女子部法科は女子学生が減って存続の危機にあり、PRの一環として学園祭で法廷劇を上演することになった。演目は実際の判例をもとに学長(久保酎吉)が筋書きを考えた「毒饅頭事件」で、脚本は華族令嬢の同級生、桜川涼子(桜井ユキ)が担当。年下の医学生と恋仲になった女給が、さんざん貢がせたくせに医者になったとたん自分を捨てた元彼への腹いせに防虫剤入りの毒饅頭を送り、それを食べた医者とその家族のうち祖父が亡くなってしまった事件の裁判をめぐる検事と弁護士の争いを描いたものだった。

この日の放送では、事件の顛末に疑念を抱いた寅子の発案で、実際にまんじゅうをつくってみて、殺人の方法としてまんじゅうを選ぶものなのか、そもそも毒を仕込むことが可能なのかどうかなどをクラスメイトとともに再検証した。すると、脚本で描かれている設定では、1つのまんじゅうに致死量の毒を仕込むのは無理だとわかり、山田よね(土居志央梨)は、被告の女性が無知だったゆえの結果だとバッサリ。無知だから相手を殺せず、背負う罪も重いとし、「みじめで愚かな行動に出てしまった」と述べて、女を無知で愚かなままにさせようとする世間と戦わず、現状に甘んじることの愚かさを嘆いた。しかし寅子は、戦わない、戦えない女性たちを切り捨てるべきではなく、それは弁護士以前に人として大切なことだと反論した。そして、武器であり盾でもある法律を身に着けつつある自分たちだからこそ、被告の女性に寄り添って考えたいと語りかけた。

2人が議論するなか、涼子が急に謝罪したいと言い出した。再検証を前に、もとになった判例を調べたところ、学長が事件を脚色・改変していたことがわかったという。その内容は、被告が事件を起こす前に婚姻予約不履行を理由に損害賠償を求める民事訴訟を起こしていたこと、相手の両親は一度2人の結婚を許諾していたため、医者は敗訴して被告に7000円を支払っていたこと、被告の職業は医者で、使われた毒はチフス菌だったことなど、裁判の前提をことごとく覆すものだった。よねはかわいそうな女を弁護する優しき女子部の学生たちという印象を持たせたかったのだろうと推察し「この事件の胸くその悪さはこれか。ふざけやがって」と憤慨。寅子たちもまた同じ思いだった。

第3週では日々濃密なストーリーが展開し、グイグイと引き込まれる視聴者が続出してるが、この日は特に情報量多めで感情が大きく揺さぶられたことから、SNSには「急転直下」「コメディ風味かと思いきや、突然ちゃぶ台をひっくり返されたよう木曜日。脚本、キレッキレ!」「今日も15分がすごくない? こんなに15分にいろいろ詰め込めるもの?」「今週の虎に翼、毎回見終わった後ずっしり重い」といったコメントが殺到した。

「毒饅頭事件」は、1939年に発生した「チフス饅頭事件」に着想を得ているのではないかとの指摘は以前から挙がっていたが、元ネタに寄せる形で種明かしする意外な展開に、「朝ドラでも史実を『視聴者にウケるように』改変してくることはあるが、まさか劇中劇でその構造を見せてくるとは」「『物語上の設定』だと思い込ませてた女給設定が元ネタ通り女医だったというところを利用した脚本だったな…本当に視聴者の思い込みを何度も壊しにかかるすごい脚本だ」「まるで2時間ミステリーの答え合わせを見ているよう」とうなるドラマファンも少なくなかった。

また、「よねさんの話からトラちゃんが生理の軽いよねさんを羨み、ガラスの天井までに話を持っていくのすごすぎて鳥肌」「鮮やかだな それぞれの結論の差と、改変された筋書き 大学の教授陣にも巣食う女性差別」など、この仕掛けによってなかなかわかり合えなかったよねと寅子たちの距離が縮まる構成を絶賛する書き込みも散見された。