ピレリ、新たなタイヤコンパウンド群を来季F1に導入へ。マシン開発加速で”再発”したオーバーヒート問題の軽減を目指す
F1は2022年に新しいテクニカルレギュレーションを導入し、グラウンドエフェクトカーが復活。フロントウイングやリヤウイングといったマシン上面ではなく、フロアやディフューザーなどマシン下面でより多くのダウンフォースを引き出すことで、後方乱気流を抑えてより多くの接近戦を可能とすることを目指した。
レギュレーション導入当初は、F1の目論見通り各車の接近したバトルが随所で見られたが、F1チームのレギュレーション理解が深まりマシン開発が進行するにつれて、後方乱気流の影響が再び顔を出し始めた。
ダーティーエアとも言われる前車からの後方乱気流を受けながら走ることで、後続車両は充分なダウンフォースを得られずにマシンがスライドし、タイヤがオーバーヒートしてしまうのだ。このことが接近戦やオーバーテイクを難しくしている要因のひとつと考えられている。
ピレリは以前からこの問題を認識しており、昨年の冬にはオーバーヒートの原因究明とその対策について多くの分析を行なった。
motorsport.comの取材に応じたピレリのF1・カーレース部門責任者のマリオ・イゾラは、現在はオーバーヒート問題を軽減するための新構造に集中していると語った。
そのテストが完了すれば、ピレリは新たなタイヤコンパウンドの開発にシフトすることになる。
「現時点では、より完成度の高い構造に集中している」とイゾラは言う。
「新素材を使用することで、より頑丈になる。重量を同じにすることが目標だから、重量を増やさないためにも新素材をテストしているところだ」
「次のテストは鈴鹿で、新しいコンパウンドをいくつか使用する。またバルセロナとヘレスでテストしたトレッドに関する別のアイデアもある。より一貫性があるという良い兆候が得られた」
「新構造では、(タイヤの)接地面をより上手く機能させて、圧力と温度をより上手く分散させることで、オーバーヒートの軽減に役立つだろう」
ピレリは、コース上で新コンパウンドの開発に向けた実践的な作業を続ける一方で、現行グラウンドエフェクトカーで再び問題になっているオーバーヒートの原因について分析を続けているとイゾラは明かした。
「2022年から18インチタイヤを導入したが、(ドライバーからの)コメントは基本的に『互いについて行けるし、ダウンフォースをキープしているから問題ない。13インチタイヤと比べてオーバーヒートはゼロか、とても限定的だ』というものだった」とイゾラは説明した。
「しかしその後、コンパウンドの構造を全く変えた訳ではないのに、オーバーヒートに関するコメントが段々と増えていった」
「私が各チームに言ったのは、何が起きているのかを正確に理解するために協力して欲しいということだ。そしてオーバーヒートの影響を受けにくいコンパウンドを開発するのが我々の仕事だ」
「オーバーヒートの原因がパフォーマンスアップによるモノなのか、それとも新しい空力パッケージで(マシンが)スリップストリームに入った時のダウンフォース減少によるモノなのかを理解する必要がある」