コロナ禍をきっかけにF1カレンダーから外れていた中国GPが、初めての春開催を終えた日本GPの2週間後に、5年ぶりの開催を迎える。

 上海国際サーキットで開催されてきた中国GP。2004年に初開催されて以降、計16回実施されてきた。2008年まではかつての日本GPと近い10月ごろのレースだったが、2009年からは4月のシーズン序盤の開催に定着していた。

 しかし新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、その震源地に近い中国GPは、2019年を最後に長らくF1カレンダーに戻って来ることができなかった。


 その間にF1も大きな変化を遂げており、レギュレーション変更により大きくマシンが変貌している。

 当然、サーキットの路面も経年変化しているはず。通常であれば新サーキットやしばらく使われていないサーキットでは、事前にピレリがエンジニアを派遣し路面を評価するのだが、今回の中国GPでは珍しく、その事前評価ができなかった。

 また上海国際サーキットは沼地の上に作られており、地盤沈下の心配もある。実際、2010年には地盤沈下が確認され改修作業が行なわれているのだ。

 現代F1マシンはグラウンドエフェクトを活用してダウンフォースを稼いでおり、路面の凹凸にはかなり敏感。肉眼では分からないようなバンプが問題になる可能性も十分ある。

 さらに今季の中国GPは、シーズン最初のスプリントイベント。金曜日にはFP1のあと、土曜日のスプリントレースのための予選であるシュートアウトが行なわれる慌ただしい週末となる。

 F1チーフエンジニアであるシモーネ・ベッラは、「正直なところ、新しいサーキットのようだ」とmotorsport.comの取材に応えた。

「新しいマシン、新しいタイヤ、18インチ(のホイールリム)だからね」

「このサーキットはこの5年間使われていなかった。元々年間1レースとかそのくらいだった。だから、路面はかなり汚れている。もちろん清掃はするとは思うがね」

「路面がどのように変化したのか、直前の測定から理解する必要がある。以前はミクロレベルでもマクロレベルでも、かなり粗かった。この数年で経年劣化がどのように進んだかを理解する必要がある」

「我々にとってはいい挑戦だし、興味深い。あとは5年ぶりでスプリント、フリー走行が1回だけというのもある。だからデータも少ないし、チームにとっても大きなチャレンジになるだろう」

 事前にエンジニアを派遣してコースを調査していないにもかかわらず、ベッラはピレリのコンパウンド選択に自信を持っている。

「残念なことに、それ(事前調査)を行なえる人間がいないんだ。だから水曜日に(現地入りしてから)直接やることになる」

「いずれにせよ、(タイヤコンパウンドの)セレクションはすでに行なわれているので、あまり大きな変化はない。C2、C3、C4というミドルレンジのセレクションをした。路面を考えるとC5はソフトすぎるし、C1はコンサバティブ過ぎる」

 グレイニングが問題になるかと聞かれると、ベッラは「過去酷いグレイニングができたことはないが、軽いモノはあった。だから可能性はある」と答えた。

「特にC3やC4ではグレイニングが発生することが予想されるが、C2はC3やC4よりも回復力が期待できる。だからグレイニングが起きて摩耗が激しかったとしても、カバーできるはずだ」