2024年シーズンのF1開幕4レースを終えて無得点かつコンストラクターズランキング最下位と、最悪のスタートを切ったアルピーヌ。そのためチームは親会社のルノーによって売却が進められるのではないかという噂が、既に持ち上がるようになっている。

 ただここ数週間で入ってきている情報によると、アルピーヌF1チームが売却される場合、その条件として新たなオーナーとなるチームは当面の間ルノー製のパワーユニット(PU)を使用することを求められるようだ。

 2023年2月に行なわれた新車発表会の際、アルピーヌは野心的な目標を示した。前年コンストラクターズランキング4位に入った彼らは、当時の“3強”チームであったレッドブル、フェラーリ、メルセデスに近付き、可能な限り表彰台に立つことを目標に設定したのだった。

 それからわずか1年余りで、シナリオは大きく変わってしまった。その間にCEOのローラン・ロッシ、チーム代表のオットマー・サフナウアーに加え、チームに長年在籍したスポーティングディレクターのアラン・パルメインとテクニカルディレクターのパット・フライまでもがチームを去ったのだった。

 そしてこういった経営陣の刷新によって、チームは前進するどころか大きく後退してしまった。昨シーズンはランキング6位だったアルピーヌだが、今季は入賞争いにすら全く絡めないレースが続き、ワークスチームという立場でありながら、4戦を終えてランキング最下位に沈んでいるのだ。

 低迷の要因は複雑であり、買収に興味を持つ者が現れることも不思議ではない。その企業の価値が下がり切っている時に購入するというのが市場の掟であるからだ。

 ルノーは元々、当時のロータスが拠点としていたエンストンのファクトリーの所有権を2015年に取り戻し、ルノーのワークスチームとしての活動を再開。2021年からは歴史あるスポーツカーブランドの復興を目指してアルピーヌF1チームとして参戦している。

 しかし今季のような不振が続けば市販車の販売には悪影響であり、進展の兆しが見えないのであれば、売却を真剣に検討する可能性があるのは想像に難くない。

 ただ、買い手を見つけること自体は難しくないかもしれないが、事態を複雑にさせると思われるのが、ルノーPUの存在だ。

 F1日本GPのパドックで得た情報によると、チーム売却の条件のひとつに、ルノーPUを指定されたシーズン(2029年ではないかと言われる)まで使い続けるということが織り込まれているようだ。この条件があることにより、2026年規則下の新パワーユニットを開発・製造しているルノーのエンジニアたちの将来が保証されることになるのだ。

 しかしながら、ルノーPUを使わなければいけないという制約は、購入希望者の数を減らす可能性もある。自分たちと既に繋がりのある企業のパワーユニットを使いたがる者が多いと考えられるからだ。

 なおアルピーヌはこういった噂に対し「チームが売却されるという噂は誤りであり、チームが売りに出されているということは明確にない」と声明を出している。