ヘレス・サーキットでMotoGP第4戦スペインGPの決勝レースが行なわれた。優勝したのは、ドゥカティのフランチェスコ・バニャイヤだった。

 MotoGPクラスの多くのライダーにとっての母国戦となるスペインGP。予選ではマルク・マルケス(グレシーニ)がポールポジションを獲得し、ドゥカティ陣営移籍後初優勝に向けて、期待が高まった。

 マルケスに続いてフロントロウに並んだのは、マルコ・ベッツェッキ(VR46)とホルヘ・マルティン(プラマック)で、ドゥカティが1列目を独占した。

 決勝日はレース日和の晴天となり気温は20度、路面温度38度のコンディションでスタート時刻を迎えた。なおライダー達のタイヤ選択は、ワイルドカード参戦のステファン・ブラドル(ホンダ)を除いて、全員がフロント/リヤにミディアムタイヤを装着。タイヤによる差はライダーのマネジメント次第という状況だった。

 全25周のレースが始まると、ポールシッターのマルケスが良いスタートを切ってターン1を先頭で通過。さらに後方7番グリッドスタートのバニャイヤが4番手に浮上すると、2台抜きを見せて一気に2番手まで浮上した。

 バニャイヤはさらに1周目の最終コーナーでマルケスを追い抜きトップへ。マルケスはターン1で首位を奪い返そうとアグレッシブに攻めたが、ブレーキングでワイドになり、マルティンにも追い抜かれて3番手に後退した。

 このトップ3に対し4番手にはベッツェッキが続き、この上位4台が抜け出していく形となった。

 2周目にはバニャイヤもラインがワイドになる場面があり、今度はマルティンが先頭に。ドゥカティ陣営同士が、ポジションを入れ替えながら序盤のレースが進んでいった。

 つかず離れずの状況が続いているトップ争いの後ろでは、4周目にターン8でダニ・ペドロサ(KTM)が転倒。3位となったスプリントレースから連続で好結果とはならなかった。

 4周目の最終コーナーでは、ベッツェッキがマルク・マルケスを追い抜いた。マルク・マルケスも離されること無くベッツェッキの直後に続いたが、トップ2に対してベッツェッキは少しペースで劣っており、7周目にはその差が0.6秒ほどに広がり、先頭集団がふたつに分かれた。

 また10周目にはヨハン・ザルコ(LCRホンダ)とアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)が接触。ふたりはクラッシュし、リタイアとなった。

 トップ争いはマルティンとバニャイヤがハイペースで走り続け、膠着状態が続いた。その状態が変わったのは、レース11周目。マルティンがバックストレートエンドでフロントをロックさせクラッシュしてしまったのだ。これでバニャイヤが労せず先頭に浮上した。

 先頭に立ったバニャイヤは2番手のベッツェッキとの間には、約1秒の差。ベッツェッキはバニャイヤのペースアップにも反応したが、ターン13でラインを外してしまい更にギャップが拡大した。そして3番手のマルク・マルケスにもオーバーテイクのチャンスを与えてしまい、追い抜かれてしまった。

 これで2番手となったマルケスは攻め時と見たかプッシュ。残り10周でファステストラップを大きく更新する走りで、一気にギャップを縮め始めた。

 しかしディフェンディングチャンピオンとして、ドゥカティの先輩としても意地のあるバニャイヤは、マルケスのプッシュに反応しペースを再び引き上げた。ファステストラップをお返しとばかりに更新し、0.7秒ほどのギャップを維持し続けた。

 ただ相手はあのマルク・マルケス。19周目、20周目と連続でファステストラップを更新する驚異的な走りで、ギャップは0.1秒差まで接近。ついにマルケスがバニャイヤを射程圏内に収めた。

 残り5周、マルケスはターン8,9と追い抜きを仕掛ける。接触含みのバトルとなるが、ここはなんとかバニャイヤが守りきった。

 マルク・マルケスは残り4周のところでも仕掛けていくが、バニャイヤが立ち上がり重視のラインをとってマルケスをいなし続ける。そして残り3周でバニャイヤは残していたタイヤの使い時と見たか、ラストスパート。1周で差を0.5秒近くまで戻し、形勢はバニャイヤ有利となった。

 そしてマルケスも限界に近いようで、その差を縮められずにラストラップへ突入した。

 マルケスは諦めずに最終コーナーまでバニャイヤにプレッシャーをかけたが、0.372秒差でバニャイヤがトップチェッカー。今シーズン2勝目を挙げた。

 2位はわずかに届かなかったものの、6度のMotoGPチャンピオンここにありという走りを見せたマルケス。ドゥカティ陣営加入後、決勝レースでの初表彰台を獲得した。3位はベッツェッキで、ドゥカティ陣営が表彰台を独占する結果となった。

 日本人ライダーの中上貴晶(LCRホンダ)は、14位でフィニッシュ。今回は転倒者が続出したことに助けられた形ではあるが、ポイントを獲得した。