20代前半の若い人材が理想とする職場環境は、近年大きく変わりつつあるようです。若い世代はファスト・スキルを求める傾向が強く、職場の理想と現実にギャップがあると安易に離職を考えるようです。現代の若い世代はスキルの取得に関すしてどのような価値観を持っているのでしょうか。

若手人材が早期離職する現状

厚生労働省が平成31年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を調査したデータ*では、大卒で就職し3年未満で離職する割合は31.5%に達しています。当然企業側にとっても深刻な事態であり、大手転職サービスの調査**によると、20代の人材に不足を感じている企業は調査対象の71.5%にものぼります。


さらに入社1年目の社員でも、転職の意向があると回答した割合は68.2%で、その中ですでに転職活動を始めているのは35.6%という結果も出ています。転職の理由として多かったのは、入社後に職場とのミスマッチを感じたことでした。

ファスト・スキルを求める若者の意識

現代の若い世代は、仕事上で知識やスキルを得ることに前向きで、自身のキャリア形成にも積極的だといわれます。しかし、それらの知識やスキルは、彼らの意識では時間をかけてじっくりと身につけるものではありません。なるべくコストや時間をかけず、成果を早く手に入れたいという「ファスト・スキル」を求める傾向にあるようです。


また、将来のキャリアに関しても特徴的な傾向が見えています。若い世代はファーストキャリアを重視する意識が強く、最初の就職で失敗したくないという思いが強いようです。その結果がやはりファスト志向に現れており、評価の即効性を求めて資格取得を目指す若い世代も一定数いるようです。

目標は決まっていないが、資格は取得しておきたい

ファスト・スキルを求める世代は、ひとまず何らかの資格を取得しようと考えるものの、目標達成のために資格を取得するという考えではない場合があるようです。 たとえば、弁護士として働くために、弁護士資格を取得する。という考えではなく、目標はないが、役立つ資格を取得しておきたいといった具合です。


そのような傾向があるため、職場で知識やスキルを習得する場合でも、その機会を企業側で準備しない限り、能動的には行動しない傾向も強いようです。それができない企業は、ミスマッチという評価を下されてしまうのです。


しかしながら、若い世代の離職は人材不足と経営基盤の弱体化を招くため、若手社員の離職を防ぎたいと考える企業も多いでしょう。 彼らの「スキルアップしたい」という気持ちをくみ取ると、研修やリスキリングなどの施策は、ひょっとしたら若手の離職率低下につながるかもしれません。


しかし、このような施策を実施したからといって、根本的に問題を解決すると断言するのは難しいように思えます。表面的に施策の実施にととどまらず、彼らがどのような価値観を持ち、根幹にあるものは何かを深く知ることが必要かもしれません。

まとめ

仕事の中で能力を高めることに関して、若い世代は短期間で結果や効果を求める傾向が強いようです。それが、若手社員のファスト・スキル志向を強める要因になっていると考えらます。企業が若手社員の離職対策を講じる際は、彼らの価値観を深く知ったうえで対策を立てることが大切かもしれません。


**【調査概要】
調査期間 <企業調査>:2023年5月1日〜3日
<個人調査>:2023年5月1日〜5日
調査対象 
<企業調査>
・スクリーニング調査:従業員数3名以上の企業に所属している全国の経営者・役員または会社員で、中途採用業務を担当している人
・本調査:上記のうち、前月採用活動を行った人、今後3か月で採用活動を行う予定の人
<個人調査>
・スクリーニング調査:従業員数3名以上の企業に所属している全国の20-50代の正社員
・本調査:上記のうち、前月転職活動を行った人、今後3か月で転職活動を行う予定の人(3か月以内に中途入社した人を除く)
調査方法 インターネット調査
有効回答数 <企業調査> スクリーニング調査:2,264名 本調査:862名
<個人調査> スクリーニング調査:21,361名 本調査:1,360名


参考
新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します(厚生労働省)

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