黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月18日放送)に調教師の矢作芳人が出演。競馬における調教師の仕事について語った。

矢作芳人

矢作芳人

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月18日(月)〜12月22日(金)のゲストは調教師の矢作芳人。1日目は、調教師に必要なことについて—

黒木)「世界のヤハギ」と言われている矢作さんですが、日本中央競馬会(JRA)の年度代表馬に輝いた無敗の3冠馬や、世界でも戦っている馬をたくさん輩出なさっています。競馬における調教師というのは、何をするのでしょうか?

矢作)競馬をご存知ない方は、なかなかイメージしづらいと思います。最も重要なのは、中小企業の経営者のような部分で、スタッフである調教助手や馬の世話をする厩務員さんなどを使い、馬を管理します。それに加えて馬を見る目、馬を育てる目のような職人的な部分の両方を兼ね備える必要があります。プロ野球の監督やゼネラルマネージャーをイメージしていただければいいと思います。

黒木)矢作厩舎にいる馬たちは矢作さんが探してくるのですか?

矢作)馬主さんからの依頼でお受けすることもありますが、その場合でも、必ずその馬が小さいころに牧場で見て、自分が決めています。そのため、基本的には私自身が探してきた馬ということになります。

黒木)それはとても大切ですよね。

矢作)他の調教師以上に、スカウトの部分を重視していますので、年間のうち3ヵ月は北海道の牧場にいます。

黒木)どの馬とどの馬の血統で生まれてきた馬の何々……ということも遡っていきますよね? それを見極めていくのですか?

矢作)サラブレッドなので、血統は最も重要になります。そして馬体のよさとのバランスです。

※画像はイメージです(東京競馬場)

黒木)馬体のよさというのは、どうやって見分けるのですか?

矢作)首、胴、肩の角度、足向きについては、すべて「こうあるべき」という基本的なものはあるのですが、最終的にはインプレッションですね。「好みであるかどうか」です。

黒木)ご自分の馬を見る目なのですね。好みで。

矢作)そうですね。ピンとくるかこないか、閃く馬かどうかを大事にしています。

黒木)よくテレビ中継などで、パドックの様子を見ますよね。そのときに「この馬はいいな」というようなものと一緒ですか?

矢作)馬のことをよく知らない方が馬券を買われるときは、「自分の閃きを大事にしたらいいのではないでしょうか」とアドバイスさせていただいています。

黒木)日本の調教馬として、「初めて」という経歴がたくさんあるのですよね? 初めて2019年にJRAの代表馬を出したり、アメリカのブリーダーズカップで優勝したり。サウジカップでも優勝していますが、すごいのが優勝賞金で、約13億6000万円。世界で最高賞金を誇る大会だそうですね。

矢作)非常にラッキーでした。「初めて」ということを目指しているので、ブリーダーズカップにしても、サウジカップにしても、それを成し遂げられたことが嬉しいですし、馬や周囲の人たちに感謝しています。

黒木)地方から中央へ、中央から海外へというのも、最初から考えていたそうですね?

矢作)どんなスポーツでもそうだと思いますが、日本一では評価されづらい、でも世界一になれば評価してもらえるという思いが自分のなかに強くあります。世界で通用してこそ、いろいろなところに認知されるのではないかと考えています。

黒木)私は数十年前に少しかじった程度なのですが、まさか日本の馬が世界に行って優勝するなんて、そのときは思ってもいませんでした。

矢作)日本の競馬のレベルアップというのは、ものすごいものがあります。

矢作芳人

矢作芳人

矢作芳人(やはぎ・よしと)/調教師

■日本中央競馬会(JRA)栗東(りっとう)トレーニングセンター・調教師。
■1961年3月20日生まれ。東京都出身。
■開成高校卒業後、1年余りオーストラリアの厩舎、牧場で修行。
■帰国後、大井競馬場の父・矢作和人厩舎を経て、1984年・栗東で厩務員、1986年からは調教助手を務める。
■2004年2月、調教師試験に合格。2005年3月、厩舎を開業。
■2005年3月26日、テンザンチーフで初勝利。2014年、JRA賞(最多勝利調教師)など表彰多数。

■2018年以降、国内外で歴史的活躍馬を送り出し、“世界のヤハギ”と称される。
・国内G1レース4勝、オーストラリア屈指の大レース「コックスプレート」を日本調教馬として初めて制した2019年JRA年度代表馬『リスグラシュー』。
・2020年、史上8頭目の無敗の3冠馬『コントレイル』。
・日本調教馬として世界最高峰のレース「米ブリーダーズカップ フィリー&メアターフ」を初めて制し、日本競馬界の歴史的快挙を成し遂げるなど、海外G1・3勝を達成した『ラヴズオンリーユー』。アメリカの年度表彰で最優秀芝牝馬を受賞。
・日本調教馬として史上初めて「米ブリーダーズカップ ディスタフ」で優勝した『マルシュロレーヌ』。
・世界最高の1着賞金1000万ドル(約13億6000万円)を誇るサウジアラビアのレース「サウジカップ」を日本調教馬として初めて制した『パンサラッサ』(*日本G1の最高賞金は有馬記念とジャパンカップの5億円)。
……など、海外G1をはじめ、日本のホースマンの夢と言われる数々のビッグレースを制してきた日本を代表する調教師。