旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)に対する批判と失望の声が広がっている。創業者である故ジャニー喜多川氏による連続児童性加害で、補償と救済に特化する組織としているが、補償問題では担当する弁護士によるヒアリング調査のやり方がまるで尋問のようで精神的苦痛を訴える者も出ているにもかかわらず、新たな広報担当者を置くなど自社のイメージアップを図り始めているという。

「御用聞きにできるメディアを選別し、自分たちに有利な記事を発信させるというのは、まさに旧ジャニーズのやり方です。新たな担当記者をおいて、『J担』ならぬ『S担』でもつくるつもりなのか」(スポーツ紙芸能担当記者)という声があがっている。

 ジャニー喜多川氏から性被害を受けた者へ浴びせかけられている深刻な誹謗中傷に対し、「言論の自由もあると思う」と言い放った東山紀之社長(57)。

 スマイル社はこのインタビュー映像を放送した英BBCにコメントを歪めたなどと抗議、謝罪を要求したが一蹴されたのも当然だろう。記者会見を開いて説明するべきというメディアの要請はスルーしたまま、東山氏は「週刊新潮」のインタビューに応じ、こう再反論、釈明したのだ。

〈『言論の自由』という大義名分があるからこそ、誹謗中傷の対策を進めることには相当な難しさがある。けれども、被害者への誹謗中傷については、絶対になくさないといけない。これが私の発言の真意でした〉

 芸能界は虚偽情報やネットの書き込みにあふれ、自らも「なんとかならないか」と弁護士に訴えるなどするたびに「言論の自由」と返されてきた。そうした意識や過去の経験からコメントしたものだったという。

■「性加害の犯罪者を守っているかのような印象を拭えません」

 では、その持論を世間はどう受け止めたのか。被害者による「当事者の会」元代表で作家の平本淳也氏はこう言う。

「東山社長は自ら発した言葉の責任をとる意味でも、発言内容を整理したいのでしょう。誹謗中傷を容認しているわけじゃなく、なくしていきたいと思っているのだと。誤解しないで欲しいというのは伝わりましたけど、あのインタビューでは誹謗中傷について『その人にとってはそれが正義の意見なんだと思うときもあります』と言っていましたね。罵詈雑言や嫌がらせを公に行う誹謗中傷に正義など認められないし、現に刑罰の対象となる犯罪行為であるのは明白です。そのことにいまだに気が付いていないのでしょうか。決して許されないこの要点について、強い姿勢で臨み、断固たる措置を講じるくらいのメッセージが必要という当事者、被害者たちの声がいまだに届いていないのでしょうか」

 番組では、ジャニー氏の他に事務所スタッフ2人が性加害に及び、うち1人が東山氏の元マネジャーであったことを東山氏は認めた。にもかかわらず刑事告発はしないという他人事の受け答えにも批判が相次いでいる。

「『被害者のプライバシー』などと釈明していますけど、被害者を盾に何もしないと言っているようにも聞こえます。だから犯罪を見逃すというのは、一般的には理解されないのではないでしょうか。たとえばお店での万引や電車内での痴漢に遭遇したら、見て見ぬふりは僕にはできない。ましてや自らが社長の会社内でのことなのに。東山さんには性加害の犯罪者を守っているかのような印象を拭えません。これらはジャニー氏の性犯罪を会社ぐるみで隠蔽し、助長させたジャニーズ事務所と全く同じだろうと思ってしまいます」(平本氏)

 スマイル社は4月末時点で985人が被害申告し、うち399人と補償内容について合意したと公表。しかしながら「過去の被害を思い出すだけでPTSDを発症するなどして申告を躊躇している被害者も多い」(ジャニーズ問題を取材するマスコミ関係者)という。当初はジャニー氏を鬼畜と呼び、「法を超えて」被害者と向き合うと表明していた東山氏。だが、この鉄面皮というしかない対応を見れば、彼が報道番組のキャスターや大岡越前役をやっていたこと自体がブラックジョークである。