"人生の主人公として「100年ライフ」をワクワク、楽しめる社会を創る"をビジョンとして、「人生100年時代」の個人のライフデザイン支援をテーマとしたコンテンツ開発やワークショップ、1on1型ダイアログなどを提供するライフシフト・ジャパン(株)。

今回は、ライフシフトを進めるために重要な「旅の仲間」について解説します。

※本稿は、『THE21』2023年7月号〜11月号に連載した「40代・50代からのライフシフト実践講座」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。


「旅の仲間」たちとの交流がライフシフトを前に進めていく

今回のテーマは、「ライフシフトの法則」の2番目の法則「旅の仲間と交わる」です。どんなライフシフターも自分一人でライフシフトを成し遂げているのではありません。ライフシフトの旅を前に進めるためには、多くの「旅の仲間」との出会いや交流があるのです。

それは、長い時間をかけて築き上げた人間関係であるケースもあれば、偶然の出会いや家族からの何げないひと言だったり、時には一冊の本や映画だったりすることもあります。

皆さんは、今、どんな「旅の仲間」との交流を持っていますか? そんな視点で人生を振り返ってみることから、「ライフシフトの旅」が始まることもあるのです。


ライフシフトの「旅の仲間」7つのキャラクター

私たちライフシフト・ジャパンが多くのライフシフターへのインタビューを通じて紡ぎ出した「旅の仲間」には、7つのキャラクターがあります。

ただし、一人のライフシフターにこの7つのキャラクターがすべて揃っているというわけではありません。それぞれのライフシフトの物語には、多くの個性的な「旅の仲間」が登場します。強烈な『使者』との出会いがライフシフトの起点になった人もいれば、素晴らしい『ともだち』とのチームワークでライフシフトを実現した人もいます。

そうした登場人物の持つ要素を整理・統合して7つのキャラクターとしてまとめたのが、今回ご紹介する「旅の仲間」です。

では、その7つのキャラクターをご紹介していきましょう。


旅の仲間1:使者

最初にご紹介する「旅の仲間」は、『使者』。

あなたに自分自身が大切にしたいものや目指すべき目的地を気づかせてくれるキャラクターです。ライフシフトの旅は、まずは「心が騒ぐ」第1ステージから始まります。多くのライフシフターには、心が騒ぎ始めるときに様々な『使者』が登場します。

それは、長いつき合いのある人からの提案だったり、思わぬ人からの相談だったりすることもあります。また、偶然読んだ新聞記事やテレビのニュースで見た何らかの社会課題が気になってライフシフトの旅が始まることもあります。その人にとっては、その新聞記事やニュースが『使者』だったと言えるでしょう。

私自身(筆者)の体験で言えば、数年前に読んだ『ライフシフト』という一冊の本が私にとっての『使者』でした。この本に刺激を受けて、人生100年時代を考える私の「ライフシフトの旅」は始まったのです。


旅の仲間2:ともだち

2番目の「旅の仲間」は、『ともだち』。

目的地を目指して一緒に旅をしていく仲間です。「ライフシフトの旅」は、いつも順風満帆で進んでいくとは限りません。時に迷いや挫折するときもあるでしょう。そんなときに、同じ目標に向かって、一緒に旅を続けてくれる『ともだち』がいれば、どんなに心強いことでしょう。

ライフシフターの皆さんの話から気づくのは、この『ともだち』というキャラクターにおいて大切なのは、単につき合いが長いといったことではなく、目指している「ありたい姿」を共有していることです。

だからこそ、共に学び合い、励まし合い、楽しみながら、一緒にライフシフトの旅を前に進めていくことができるのです。


旅の仲間3:支援者

3番目の「旅の仲間」は、『支援者』。

ライフシフトの旅を前に進めるために力を貸してくれる、つまり、ライフシフターが何か新しいことにチャレンジし始めたときに、そのアクションを応援してくれる人たちです。

その姿は、新しいお店の最初のお客さんだったり、地域の応援団かもしれません。静かに見守ってくれる家族や友人たちが貴重な『支援者』だったというケースもありました。

多くのライフシフターが、自身のライフシフトの旅を振り返って、こうした『支援者』の存在を思い起こし、彼らの存在がライフシフトを実現するための原動力だったと語ります。ライフシフトの旅は、『支援者』に支えられると同時に、『支援者』を探す旅でもあるのです。


旅の仲間4:師

4番目の「旅の仲間」は、『師』。

人生のものの考え方やあるべき姿を説いてくれる存在です。ライフシフターの中でも、『師』と呼べるような人が存在したという人は、実はそれほど多くはありません。こうした人生の『師』と呼べる人と出会い、自分自身の「ありたい姿」に気づくことができた人はとても幸運だと言えるかもしれません。

ただし、この『師』というキャラクターは、その道の達人や社会的に高く評価されている人とは限りません。

ライフシフターが目指す「ありたい姿」によっては、身近な存在である両親や家族の生き方が『師』と呼べることもあれば、自分より若い後輩が『師』となることもあるでしょう。どんな人が『師』となるかは、あなた自身がどんな人生を選択しようとするかの"写し鏡"かもしれません。


旅の仲間5:預言者

5番目の「旅の仲間」は、『預言者』。

未来の社会や目指すべき生き方を唱えてくれる人です。ライフシフトの旅は、突然の『預言者』のひと言で始まることもあります。それは、聞いた瞬間に雷に打たれたように始まるわけではないかもしれません。

時には、しばらく忘れていたり、気にはなっていたけれども、すぐに行動に結びつくことはなかった言葉かもしれません。でも、あるときに、そんな『預言者』のひと言をきっかけにライフシフトの旅が始まることもあるのです。

それは、何かのイベントやセミナーで聞いた講師のひと言かもしれませんし、会社の会議で耳にした偶然のキーワードかもしれません。

大切なのは、そのひと言が気になる理由をじっくりと考え、自分に問いかけてみることです。繰り返し考えているうちに、その言葉が指し示す未来に気持ちが本当に動けば、それがライフシフトの旅の始まりです。


旅の仲間6:寄贈者

6番目の「旅の仲間」は、『寄贈者』。

目的地にたどり着くためのヒントやアイデアをもたらしてくれるキャラクターです。ライフシフトの旅の途中で、何か大きな問題にぶつかったり、悩みが生じたときに、その解決策を示してくれたり、あなたの「ありたい姿」に近づくための方法や道順を教えてくれる人です。

一見すると『支援者』と似た印象を持つかもしれませんが、意識的に応援してくれる『支援者』と違って、何気ないひと言や元々は違う目的で発した言葉が、あなたの悩みを解決するヒントやきっかけになったりするところが大きな違いです。

ライフシフターたちは自分の「ありたい姿」の実現に向けて、常に新しいヒントや視点を探しているからこそ、そんな何気ないひと言が『寄贈者』からの大切な〝ギフト〟になるのです。


旅の仲間7:門番

最後の「旅の仲間」は、『門番』。

前に進もうとするときに、その想いや意思の強さを問う存在です。あなたが何か新しいことに挑戦しようとしているときに、前に立ちはだかり、反対したり、邪魔をするキャラクターです。父親や母親、パートナー(「嫁ブロック」とか「夫ブロック」なんて言葉もありますね!)、上司や同僚が『門番』になることもあるかもしれません。

そのときには、とてもその存在が疎ましく思えるかもしれませんが、実はこの『門番』というキャラクターは、とても重要な存在で、あなた自身が何故それをやりたいのか? 本気なのか? を問い掛けているのです。『門番』を説得し、乗り越えていくプロセスで、あなた自身の想いの強さが検証されるのです。

そして、この『門番』は、突破した後には、強力な『支援者』や『ともだち』にキャラクターが変化することもある、とても不思議なキャラクターでもあります。

また、私にも経験がありますが、自分自身が『門番』になってしまって、自分で自分を抑え込んでしまったり、新しいアクションを躊躇させてしまうこともあります。そんなときこそ、「今、自分が門番になっている」と気づくことが、そこから一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。


これまでの人生に登場した「旅の仲間」を思い起こそう

7つのキャラクターを読んで、いかがでしたか? 何かを感じられましたか? 読者の皆さんのこれまでの人生を振り返ってみたとき、そこにはどんな「旅の仲間」が登場してきますか?

すべてではないまでも、いくつかのキャラクターを思い起こすことができるのではないかと思います。

そして、このフレームで思い起こしてみると、例えば、何気なく聞き流していた友人のひと言が、その後の人生の方向性を決めた『預言者』だったとか、ある転機のときに疎ましく思えた上司が、実は大切な『門番』だったといったことに気づく方もいるのではないかと思います。

「旅の仲間」は、ライフシフターにだけ登場する特別なキャラクターではなく、どんな人の人生にも現れる人たちです。

大切なことは、こうしたキャラクターとの関わりや、偶然耳にした何げないひと言がライフシフトの起点になったり、大きな転機につながることがあることを知っておくことです。その意識が、ライフシフトのプロセスで一番大切な、第1ステージ「心が騒ぐ」から第2ステージ「旅に出る」に移るアクションを起こす原動力となるのです。

それから、40代・50代の読者の皆さんにとって、この「旅の仲間」のフレームワークが提供するもう一つのポイントは、皆さん自身が、関係する周囲の人にとって、どんな「旅の仲間」の役割を果たしているかを考える視点です。

40代・50代の多くの方は、人生の先輩や後輩、仕事の上での多くの仲間たち、家族や友人など、様々な人との関係を持っているはずです。

皆さん自身のライフシフトを実現するために、どんな「旅の仲間」を見つけたいか、見つける必要があるか、ということを考えると同時に、皆さん自身が周囲の人にとって、どんな役割を果たしているかを考える。

そうすることで、「旅の仲間」というフレームワークから、また新しい発見や気づきが得られるのではないかと思います。少し時間を見つけて、ぜひ、考えてみてください。