繊細で感受性が強いHSCを、親はどのように受け止めたらよいのでしょうか。子どもの自己肯定感を育み、可能性を伸ばすかかわり方を、心理カウンセラーの斎藤暁子さんに解説いただきました。

※本稿は、『のびのび子育て』2021年3月号より転載したものです。


子どもの自己肯定感が育まれるように

繊細で感受性が強いHSCは、「生まれもった気質」や「感覚にフィットする環境・関わり方」が大切にされ、「あなたはあなたでいい」と、感じ方を肯定されている安心感があると、その子の個性や感性が発揮され、能力や魅力が開花しやすいと言えます。

ところが、生活の場が、家から慣れない外の場所(園や学校など)に移ったりすると、その子のかけがえのない魅力や個性が、かき消されてしまいがち。気質が環境に合わないと、抵抗や拒絶が表われやすく、その様子から「やる気がない」「甘え」「わがまま」などと誤解されることがあるのです。

それは、HSCの気質に問題があるのではなく、社会のシステムが、HSCという気質の概念が存在しないことが前提でつくられているからで、抵抗や拒絶は、生まれもった個性を失なくさないための自然な反応とも言えるのです。

そこで大人が、否定的な反応をしてしまうと、子どもは深く傷つき、自尊心や自己肯定感が削がれていってしまいます。また、それが放置されると、孤独感や不信感、恐怖心や過敏性が高まり、トラウマや生きづらさを抱えることにつながるのです。

将来にまで影響を及ぼすような心の傷を防ぎ、自分はそのままで価値があると感じられる自己肯定感を育てられるように、その子に合った接し方・対応のポイントを、具体的に紹介していきます。


子どもと関わるときの5つのポイント

子どもの個性を活かし、能力を開花させるために、子どもと接するときに次のことを心に留めておきましょう。

1.子どもの気持ちや反応・感覚を否定しない

一番大事な人に否定的な反応をされると、傷ついて、自分の本当の感情や欲求に蓋をするようになり、“自分”がわからなくなってしまいます。嬉しさ、楽しさだけでなく、悲しみ、恐怖、怒り、悔しさ、寂しさなどの気持ちや欲求も、子どもが感じたように感じてみて、「嫌だったね」「怖かったね」と言葉にして寄り添うようにしましょう。

2.干渉しない

自分の「もの・空間・ペース・やり方」が大切なHSCにとっては、それらが尊重されないことや乱されることが強いストレスに感じられ、反応がわかりやすく表われることが多いです。HSCは、子ども扱いせず、1人の人間として尊重してくれる相手に安心・信頼を感じます。口出しせず見守るように意識しましょう。

3.無理強いをしない

初めてのことで、まだ不安や恐怖心が存在しているときに無理強いすると、トラウマを抱えさせてしまうことがあります。特に「急かす」「圧力を加える」「叱る」などの関わり方は逆効果。ほかの子と比べず、子どもが好むものを選ぶ、子どもがやり出すまで待つという姿勢を大事にしましょう。

4.丁寧に説明して、子どもの合意を得る

慎重で、状況をよく観察し、安全を確認したり、じっくり考えてから行動するHSCは、急な予定変更や突然の出来事、不快な出来事によって、強いストレスを感じたり、混乱したりします。子どもが関わることはできるだけ丁寧に説明し、合意を得てから行動に移すようにしましょう。

5.怒ったままにしない

繊細で傷つきやすい気質の子は、怒られたことで抱いたショックや悲しみが、強く深く心に刻み込まれます。そして、その気持ちをわかってもらえないままだと、ずっと心に残り続けます。子どもを怒ってしまったら、自分を責めるよりも、気持ちが鎮まった後にでも「怖かったね、あんな言い方をしてごめんね」と伝えるようにしましょう。