3月24日(日)、静岡県・浜松市にあるプラスチック加工会社、株式会社中部日本プラスチック(以下、中部日本プラスチック)の本社工場で、子どもたちに楽しく環境問題を知ってもらう機会を提供するイベントが開催され、近隣の家族連れやアップサイクルに注力する企業関係者など約750人が訪れた。

「エコネット・フェス」と題した本イベントは、昨年6月に第1回目が開催され、今年で2回目となる。

イベントを主催する中部日本プラスチックは、1971年の創業以来、約50年にわたり浜松でプラスチックの加工を行っている企業だ。

事業を展開する中で、プラスチック製品による海洋汚染やプラスチックごみの増加がもたらす環境負荷などの課題を感じ、2013年に「エコネットプロジェクト」を立ち上げ、いま環境のためにどんなアクションが必要なのかについて、多くの人に知る機会を提供してきた。

代表取締役社長の雪下真希子氏は次のように話す。

「去年新しい工場が完成したので、オープンファクトリーの意味も含めて、子どもたちに楽しく環境問題を学んでもらえるイベントを立ち上げました。おかげさまで来場いただいた皆様に高い評価をいただき、今年はさらにプログラムを充実させています。

地域住民と一緒に作り上げるイベントにしたいと考えて、地元で活動している団体に、フラダンスや空手などのパフォーマンスを披露いただくプログラムをご用意しました。それから、初めてクラウドファンディングにもチャレンジしました。

全国の方々にこの取り組みを知っていただくきっかけになれば、との想いでの取り組みでしたので、開催直前に目標を達成することができてとても感慨深かったです。アメリカや台湾など海外からのサポーターもいらして、世界中に同じ志を持っている方々がいらっしゃることを確認できて、非常に励まされました。

アップサイクルやリサイクルをおこなっている工場に実際に足を運んでいただくことで、私たち主催者が想定していなかった気付きが生まれることも大切だと思っています。子どもの時に体験したことが、未来の価値観や夢の形成につながると良いな、との期待を込めて、これからも活動を続けていきたいです」

約5000㎡にもおよぶ工場の敷地内に、滑り台、プラスチックの原料を入れた大きな袋を順路にした巨大迷路や、ワークショップブース、キッチンカー、トークやパフォーマンスを展開するステージを設置。来場した子どもたちは自身の興味関心に合わせ、様々なプログラムを体験した。

 

◆オトナと子どもが逆転!? 子どもに教わるエコな授業

ステージではエコに詳しい小学生が「先生」になり、日本や世界のエコの最新事情を紹介するトークイベント「教えて、子ども先生!」を開催。

社会起業家でHI合同会社代表の平原依文氏、元サッカー日本代表でFC東京のコミュニティジェネレーターとして活躍中の石川直宏氏らが「生徒」として登壇した。

イベントはクイズ形式で進行。

「先生」からは、日本のリサイクルは「サーマルリサイクル」と「マテリアルリサイクル」のうち、「サーマルリサイクル」が全体の7割を占めていることや、SDGsの17の目標のうち、日本では2つしか目標レベルに達成していない現状などが説明され、来場者も積極的にクイズに参加し、リサイクルやSDGsについて学びを深めた。

イベントの中で平原氏は、「これまで中国やカナダ、メキシコ、スペインで生活してきて感じた価値観の違いや、国籍やジェンダーなどに起因する壁=境界線を溶かしていきたいと思い、会社を立ち上げた。違いは人の数だけ存在するから、互いに尊重し合える世の中になれば」とコメント。

また石川氏は、「コロナの時期にサッカーをすることが難しくなった時に、価値の変換の重要性を実感した。サッカーを通じて人生の喜びや笑顔を届けるという目標は、農業を通じても届けられるのでは、と思い、長野県でNAO’s FARM という農場を立ち上げた。手段は違っても農業を通じてサッカーと同じ目標を目指したい」と話していた。

「先生」を務めた小学生はイベントを終えて感想を語る。

※のあさん(12歳)
「今日の朝、三重から来ました。はじめは緊張していたけれど、みなさんがフォローしてくださってうまくできました。これからもゴミの分別のことや紙のリサイクルなどSDGsの取り組みで自分にできることをやっていきたいです」

※ここさん(11歳)
「この場に立たせていただいて、授業をさせてもらって、世代は違うけれど志が一緒の人とたくさんお話しできました。もっとSDGsの活動を頑張ろうと思ったし、私も会社作って経営してみたいと思いました」

◆ボールから作る!石川直宏のサッカー教室開催

イベントでは、昨年好評だった石川直宏氏によるサッカーレッスンも実施された。

このレッスンの特徴は、自分で組み立てたボールを使用すること。ボールはプラスチックのリサイクル素材で作られているだけでなく、パーツの隙間から中に鈴を入れることで視覚障害者がボールの場所に気付くことができ、さらには指を入れてボールをつかめるため、幼い子から高齢者まで多くの人が球技を楽しめる工夫が施されている。

工場内の人工芝のエリアでは、自ら組み立てたボールでパスを出し合う子どもたちの姿が見られた。

 

◆「田村淳の大人の小学校」主催のロケット教室も同時開催

また、オンラインサロン「田村淳の大人の小学校」が主催するロケット教室も同時開催され、親子連れを中心に、事前に申し込んだ約60人が参加した。

“ロケットマイスター”の資格を持つタレントの田村淳氏とスタッフからのアドバイスをもとに、参加者がひとり1機ロケットを制作。およそ30分で個性豊かなロケットが完成し、最後は工場敷地内で実際にロケットを飛ばしてその完成度を確かめていた。

このイベントでの体験や学びが、子どもたちが未来の地球の姿に目を向けるきっかけになるかもしれない。