ドジャースのデーブ・ロバーツ監督(51)が得点圏打率だけが0割台に低迷している大谷翔平(29)と異例とも言える緊急対策会談を持ったことが明らかになった。同監督がMLBネットワークのラジオ番組に出演して明かしたもの。「ぶら下がっている果実を生かしきれていない」と10年7億ドル(約1080億円)の能力を発揮しきれていない大谷にたまらず救いの手を差し伸べたようだ。ドジャースは日本時間20日に本拠地でメッツと対戦。山本由伸(25)が先発予定となっている。

 「得点圏では相手投手もミスを犯す。恐れず我慢せよ」

 ロバーツ監督が動いた。賭博スキャンダル問題ではない。
大谷の打率0割台に低迷している得点圏打率をいかに改善するかの緊急会談である。
大谷は、日本時間19日の時点で打率がナ・リーグ5位となる.360で、同13位タイの4本塁打、10打点、0PS1.040、同11位タイの出塁率.400の成績を残し、31安打は同僚のムーキー・ベッツと並びリーグ最多。2番打者として堂々たる数字を残しているが、走者をスコアリングポジションに置いた得点圏打率だけは.053と最悪だ。
19打数でわずか1安打しかない。打点が伸びていないのはそのせいだ。
2023年の得点圏打率は.317、2022年の同打率は.314と2年連続で3割をクリアしている実績を考えると異常事態とも言える。
チームは西地区1位だが、2位のパドレスとは1ゲーム差。指揮官がMLBネットワークのラジオ番組で明かしたところによると「偉大な打者がせかっかくぶら下がっている美味しい果実を生かしきれていない」と、大谷の得点圏打率を改善するための緊急対策会談を持ったという。
「ショウヘイはアグレッシブなスイングを見せていて、それはいいことで問題はない。ただ得点圏に走者がいる場面、相手投手たちは、その情報(早打ち)を知っている。(得点圏に走者を置いた)多くの場面では打者と投手は(勝負を)早く終わらせたがる。投手はコースを突き、打者は手を出す範囲を広げてしまう。ショウヘイの場合は特にもう少し投手に球数を投げさせるように我慢し、ミスを引き出せる可能性があると打席の中で恐れないこと。もっと多くのことができると思う」
ロバーツ監督が緊急会談で説いたのは、得点圏での大谷の早打ち傾向が、相手バッテリーに利用されて術中にはまってしまっているという状況だ。好球ではなく難しいボールに手を出すケースが目立つ。大谷のチャンスは相手にとってはピンチ。そういった場面では、相手バッテリーもコントロールミスを犯す可能性がある。指揮官は、大谷に失敗を恐れることなく、焦らず好球を待つ配球の“読み”を提案したのである。
指揮官は16日のナショナルズ戦後の会見で大谷に対して「大谷は得点圏にランナーがいるときは、これまで以上に超積極的だ。その気持ちをもう少し抑えなければいけない。投手に球数を投げさせることも必要だ」と苦言を呈していた。その考えを大谷に直接ぶつけたわけである。
大谷は、その意見を受け入れたのか。緊急会談の様子はどうだったのか。

 ロバーツ監督は、その緊急会談の中で見せた大谷の姿勢を絶賛した。
「そのこと(得点圏での打撃)について素晴らしい会話ができた。ショウヘイのような素晴らしい選手であれば容易に解決できる課題だ。私を最も驚かせたことは、彼の良くなるために受け入れる姿勢と意欲だ。彼はどのような方法であれ、形もしくは、フォーム、試合の中のことであれ向上することに完璧に前向きでいる」
そして監督は、昨年オフのFA狂騒曲を経て移籍先にドジャースを選んだ際にも大谷が強調していた、彼が一貫して持ち続けている「チームの勝利のためにプレーする」という哲学を改めて称えた。
「驚きではないが、私にとって新鮮だったのは彼のゴールが勝利のみにあるということだ。彼のチームへのアプローチは勝つことだけなのだ。彼は(無死、一死で走者三塁で)相手の内野が深ければ、得点につながるゴロを、あるいは犠牲フライを打つことを喜んでするだろう。彼は勝つためにプレーするんだ」
対するロバーツ監督も自らの指揮官としての哲学を番組内でこう強調していた。
「我々のアプローチは選手たちに向上してもらうことにある。スーパースターであろうと若手選手であろうと、その我々の取り組みを理解してもらっている。私の周りには素晴らしいコーチがたくさんいる。最も大切なことは選手たちがそれを受け入れているということだ」
ロバーツ監督との緊急対策会談をきっかけに大谷は本来の勝負強さを取り戻せるのか。今日20日のメッツ戦でスコアリングポジションで打順が回ってくることがあれば、その打撃内容に注目が集まる。