今年もアニメ『サザエさん』に母の日がやってきた。ほぼ毎年欠かさず母の日を描いている『サザエさん』だが、今回の母の日エピソードも期待に応えるクオリティで、視聴者をほっこりとさせてくれた。

母の日に落ち着かない波平

母の日の5月12日に放送されたアニメ『サザエさん』(フジテレビ系)が、名言連発の神回だったと視聴者の胸を打ったようだ。

この日放送されたのは「カツオとタラちゃん」「ワカメはしっかりもの」「母の日のおねだり」の3エピソード。母の日を題材にしたのはもちろん、「母の日のおねだり」だ。

母の日を直前に控えたある日、サザエ、マスオ、カツオ、ワカメの4人は、フネに何をプレゼントしようかと内緒の作戦会議中。フネはうっかりその様子を見てしまうも、見なかったことにして「フフフ」と笑みをこぼす。

と、そこへ波平がやってくる。波平もサザエたちの輪に加わろうとするが、カツオに「お父さんは、母の日は関係ないから向こうに行ってていいよ」、サザエに「母さんは父さんの母親じゃないものね」と追い返されてしまう。

「やっぱりわしが母の日に贈り物をするのはおかしいか」と考える波平だが、フネには日頃の感謝を伝えたい…。けれど母の日当日はどうにも居心地が悪く、散歩に出かけることにした。

そこで出会ったのが甥のノリスケ。悩みを打ち明けると、ノリスケは母の日に妻のタイコにプレゼントをしていると明かす。「タイコさんはノリスケの母親では…」と驚く波平だが、ノリスケは「イクラの代理ですよ。僕がイクラと一緒に感謝のしるしを渡すんです」と、ノリスケらしからぬいいことを言うのだった。

これにヒントを得た波平は、タラちゃんを連れて再び散歩へ。花屋に行ってカーネーションを2本買って、タラちゃんに持たせる。サザエに渡す用と、フネに渡す用だ。「おばあちゃんにも渡すですか?」と首をかしげるタラちゃんに、「おばあちゃんはタラちゃんのママのママだからな。タラちゃんには大きいママだ」とうまいこと言い聞かせた。

タラちゃんからカーネーションをもらったサザエとフネは、これが波平からの振る舞いだとすぐに気づく。そうして波平の気持ちを察したフネは、波平を二人きりの散歩に誘う。 

フネの貴重すぎるシーン

珍しい二人きりの散歩に波平はうれしそう。そしてそのまま二入でそば屋へ入る。「なんでも好きなものをごちそうするぞ」とご満悦な波平の言葉を聞いて、フネは「お酒と天ぬきと板わさをくださいな」と豪快に注文。ちなみに“天ぬき”とは、天ぷらそばからそばを抜いたもの。つゆにシミシミとなった天ぷら単体のことを指す。「一度やってみたかったんです」「付き合ってください」と語るフネに、波平は「もちろんだ!」と胸を張る。

こうして帰宅した波平とフネは、酔って頬を赤くしている。フネまで飲んできたことに驚く一同。波平と楽しいひと時を過ごしてきたフネを周りが茶化すと、フネはさらに顔を赤くする。波平もまた、幸せそうに眠りにつくのだった。

波平、ノリスケのそれぞれの母の日名言がでるなど、素晴らしくいい回だった今回の『サザエさん』。一方でファンの間では、この回に貴重すぎるシーンが登場したことも話題になっている。

それはフネの飲酒シーン。確かに波平やマスオの飲酒シーンはおなじみだが、フネの飲酒シーンはなじみがなく、ネット上でも〈フネが酒飲んでるの珍しいな!〉〈フネさんが、、、酒を飲んだ!!!! (日曜はサザエさんガチ勢)〉〈フネが酒飲むシーン超珍しい〉なんて声も。

そこで、評論・情報系同人誌サークル『サザエさんじゃんけん研究所』の所長(@jq1hkn)に話を聞くと、「フネの飲酒シーンは私が記憶している範囲では初めて見るものなので非常にレアだと思います」とのこと。やはりフネの飲酒シーンは相当レアなのだ。

ざっと確認できただけで、『サザエさん』では2023年に「母の日は山あり谷あり」、2022年に「望みを叶えたい母の日」、2021年に「母の日サプライズ」、2020年に「母の日の気遣い」、2019年に「母の日の贈りもの」、2018年に「母の日の父さん」、2017年に「母の日くらいは」、2016年に「母とママとおふくろの日」、2015年に「母の日の一大事」と、ほぼ毎年、母の日のエピソードを描いている。

「タラちゃん黄金時代」とは…

所長に特に印象的な母の日エピソードを聞くと、「母の日にフネとサザエに家事を休んでもらうために、二人が出かけている間に残りの5人が料理に挑戦するものの、うまくいかず台所が散らかりまくり汚れまくりの悲惨な状態になってしまうエピソードが印象的でした」とのことだ。

さて、そんな母の日の良回エピソードの熱も冷めやらぬ中で、今回の『サザエさん』では次回予告も話題となった。次回、「タラちゃん黄金時代」という、タイトルだけですでにおもしろい予感がプンプンのエピソードが放送されるのだ。『サザエさん』といえば、実は秀逸なタイトルも数多い。

「『タラちゃん空気を読む』というタイトルの話が印象に残っています。周囲の人がばれたら困る秘密をタラちゃんがつい口を滑らせてしまうことが頻繁に起きるので、タラちゃんが空気を読めるようにしようと奮闘するものの結局最後まで空気を読めずに暴露発言を連発してしまう話でおもしろかったです」(所長)

10月には記念すべき55周年を迎えようとしている『サザエさん』。変わらずクオリティをキープし続ける姿には脱帽するしかない。

取材・文/集英社オンライン編集部