昨夏のワールドカップ(W杯)のメンバーを数名、怪我で欠きながらも、北朝鮮とのアジア最終予選を制し、パリ五輪への切符を勝ち取った、なでしこジャパン。ここからは半年足らずに迫った本大会のメンバー18名への絞り込みが始まる。

 W杯以後、4バックをベースに新しい戦術の落とし込みにチャレンジしてきたが、北朝鮮との第1戦では、今ひとつ機能しなかった。もちろん、開催地が決まらなかったことによるコンディションや相手の布陣とのかみ合わせなど、色々と条件が重なっており、一概に「4バックがダメ」ということは言えない。

 一方で、国立での第2戦では、観客2万777人の約8割を占めたホームの声援、第1戦を戦って得た相手のやり方の理解など、ポジティブな要素は多かった。それを差し引いても、中3日という短い期間で修正できたのは、W杯でベスト8に進んだ5(3)バックの完成度に寄せる選手の信頼感もあった。
 
 この5バックの完成度を高めていくのか。それとも、いつでも立ち返れる場所があることを計算に入れて、4バックにもう一度挑戦するのか。このあたりは興味深い。

 システムがどちらになっても、現状、メンバー入りの有力候補と目されるのが、GKの山下杏也加、右サイドの清水梨紗。CBコンビの南萌華、高橋はな。中盤の長谷川唯と長野風花の2人は、攻守の舵取り役だが、チームの浮沈をも担っている。

 前線では、藤野あおば、田中美南、植木理子らも当確か。不在の北朝鮮戦で存在の大きさを再確認した宮澤ひなた、遠藤純も負傷が癒えれば、もちろん先発候補に入ってくる。

 5バックを継続するなら、連係も育んできている昨夏のメンバーがやや優位になるだろう。最終ラインの中央に入るであろう現チームのキャプテンの熊谷紗希。怪我に強く、コンディション面の波が少ない林穂之香や、こなせるポジションが多い杉田妃和。左右どちらでも突破力を発揮できる清家貴子、対人能力の高い石川璃音らもW杯メンバーだ。

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 4バックをベースにして、新たな布陣で挑むなら、W杯不出場組も横一線のスタートを切れる。JFAアカデミー福島から海外に活躍の場を求めた谷川萌々子と古賀塔子が、クローズアップされてくる。

 どちらも高い身体能力とテクニックを持ち合わせた10代の選手で、先輩たちとの経験値を埋めて余りあるスケールを感じる。ベスト8を超えるために、戦術以上のものが必要と考えた時に、頭に浮かんでくる選手たちだ。実績十分の熊谷も安泰ではないかもしれない。

 千葉玲海菜は、W杯に加えて第19回アジア競技大会にも出場し、改めてアピールした。中嶋淑乃は、独特のドリブルで左サイドを突破できる貴重な存在だ。北朝鮮戦で、故障者が続出した左サイドの穴を埋めた北川ひかる、上野真実らもメンバー入りの資格は備えている。
 
 GKでは、北朝鮮との2戦でも安定したプレーを続けた山下が、よほどコンディションを崩さない限り、ゴールを守ることになりそうだ。その背中を追う、平尾知佳と田中桃子がW杯後も、激しく競っている。

 五輪出場を決めたのはチームであって、選手はまた新たな競争に入る。「メンバー発表まで時間はありますし、ライバルで争っている方がチームにも良い影響がある」とは、山下の言葉。ここから先、所属チームでのプレーを含めて、各人のレベルアップが待たれる。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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