4月15日、カタールで開幕した「U-23アジアカップ」で、U-23日本代表はパリ五輪出場を懸けて戦う(アジアは上位3チームが出場、残り1チームはアフリカのギニアとプレーオフで枠を争う)。

 8大会連続出場を懸けて、負けられない試合が続く。初戦の中国戦は、速い時間で一人退場になりながら、どうにか勝利を収めたわけだが...。

 今回、フルメンバーを招集することはできていない。

 すでにヨーロッパで活躍している面々は、いずれもメンバー外になっている。鈴木彩艶(シント=トロイデン)を筆頭に、鈴木唯人(ブレンビー)、斉藤光毅、三戸舜介(ともにスパルタ)、小田裕太郎(ハーツ)、福井太智(ポルティモネンセ)など、チーム発足からプレーを重ねてきた選手も少なくない。率いる大岩剛監督にとっては逆風と言えるだろう。

 もっとも、長い目で見た場合、日本サッカーにとっては「素晴らしいプロセス」と断言できる。これだけ多くの五輪世代が欧州で場数を踏んでいるわけで、将来は暗くない。よしんば、U-23代表がパリ五輪に辿り着けなかったとしても、欧州で次のステップをつかみ取れる選手がいるなら、それで十分に報われるだろう。

 なぜなら、五輪世代はあくまで育成年代であって、ステップアップが課題である。すでに欧州でプロとして活躍のプロセスに入っている選手にとっては、少なくとも予選で戦う必要などない。彼らは各クラブでアピールすることで、日本サッカーも背負って羽ばたける。

 パリ五輪行きのチケットは、世界を志すJリーグ組を中心に手にすべきと言えるだろう。それは少なからず本大会も同じで...。
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「久保本人は五輪に出たがっている」

 大岩監督はそう言って、パリ五輪世代である久保建英とも招集交渉を重ねているようだが、所属するレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)が難色を示しているという。予選は論外だが、本大会の招集も厳しい。よほど当該選手がクラブ内でイニシアチブを握っている立場でない限り、招集できる状況ではないのだ(FIFAマッチデー以外、クラブが所属選手の拘束権を持っている)。

 さらに言えば、久保の招集は本人の意志にかかわらず、好ましくはない。

 なぜなら、久保自身は出場への意欲を持っていても、ラ・レアルでフル稼働だった一方、シーズン中にアジアカップで日本代表として招集され、アジアの代表戦で長距離を転戦する日程もこなし、その上でシーズン後にパリ五輪出場になれば、疲労の蓄積からどのような結果に至るか、保証ができない。事実、最近の久保は筋肉系のケガを抱えつつあるのだ。

 大岩監督は予選も、そして本大会も苦しい戦いを余儀なくされるだろうが、試行錯誤で乗り越えるしかない。それが、日本サッカーの成長プロセスと言えるからだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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