日本の清涼飲料市場を牽引する日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナルは5月18日、「ボトル to ボトル」水平リサイクル(※)の認知拡大に向けて協業し、2社の啓発ロゴを組み合わせた広告を制作し、発信すると発表した。飲料市場の約半分の販売数量を占める両社が協業するのは異例だが、インパクトのある発信で「ペットボトルは資源」であることを広く伝えるねらいだ。

※「水平リサイクル」=使用済み製品を原料として用いて同一種類の製品につくりかえるリサイクルのこと。

この「ボトル to ボトル啓発広告」は、広島県で開催される「G7 広島サミット」にあわせ、18日〜21日まで東京・広島を中心に交通・屋外広告などへ順次掲出する。また、2社は一般社団法人全国清涼飲料連合会(全清飲)とともに、「G7広島サミット」に向けて開設される国際メディアセンター(IMC)内でも、日本国内における「ボトル to ボトル」水平リサイクルの取り組みを紹介するブースを出展する。

日本の飲料市場をリードする日本コカ・コーラとサントリー食品が、合同で広告を制作するのは今回が初めて。コカ・コーラから打診し、サントリーが広告を制作し、両社で合意したとする。なお、今回の協業は、リサイクルの啓発(コミュニケーション)に限ったものという。

渋谷オフィス前(日本コカ・コーラ提供)

取り組みの背景には、リサイクル適性が高く、国内で再資源化の仕組みが整っているペットボトルは、適切に回収すれば資源として何度も循環利用が可能であること。そして、ペットボトルに再生する「水平リサイクル」をさらに推進することで新規資源の使用削減と容器由来の廃棄物削減に貢献できるという両社の考えがある。

また、現時点での主なリサイクル手法であるメカニカルリサイクル(※)(によるPET樹脂のみを使用した「100%リサイクルペットボトル」は、新規に石油由来原料(化石由来原料)を使用して製造したペットボトルと比較し、約60%のCO2排出量削減にもつながるという。

※メカニカルリサイクル=使用済みペットボトルを高洗浄による異物の除去や高温下での除染などの物理的処理を経てペットボトルの原料を作るもの

日本国内におけるペットボトルの回収率は94.0%で、リサイクル率は86.0%(2021年度、PETボトルリサイクル推進協議会調べ)となっており、米国(リサイクル率18.0%)や欧州(同42.7%)と比較しても非常に高い水準だ。しかし、回収されたペットボトルが再び新しいペットボトルにリサイクルされる「ボトル to ボトル」比率は20.3%(2021年度)にとどまっている。

そこで業界団体の全清飲は、業界全体で「ボトル to ボトル」比率50%を2030年までに達成することを目指している。日本コカ・コーラとサントリー食品の「ボトル to ボトル」比率は、すでにこの水準(50%)に達しつつあり、環境面でも牽引する存在だ。

JR大久保駅ホームから見えるデジタルサイネージ広告(サントリー食品提供)

2社はこれまでも各社の企業努力で「ボトル to ボトル」水平リサイクルを推進してきた。だが、さらなるボトルtoボトル水平リサイクル率の向上には、「ペットボトルは資源」であるという認知向上と、消費者や関係者の理解・協力が必要になる。飲料市場を牽引し、売り場でシェア争いを繰り広げる2社が協業することで、人々の関心をいっそう集め、「ボトル to ボトル」水平リサイクルの普及・定着を図るねらいだ。

ボトルtoボトル啓発広告

なお、両社のコメントと「ボトルtoボトル啓発広告」の掲出は以下の通り。

【両社のコメント】

日本コカ・コーラ 広報・渉外&サスティナビリティー推進本部副社長田中美代子氏=「コカ・コーラが事業を展開している世界200以上の国・地域の中でも、日本のペットボトル回収率・リサイクル率の高さは群を抜いています。これはひとえに、30年近くにわたる政府・業界・消費者それぞれの努力の積み重ねの結果です。当社も業界団体の定めた『指定PETボトル自主設計ガイドライン』に基づき、他国に先駆け日本国内で販売する『スプライト』を2000年より、リサイクルしやすい無色透明なペットボトルに切り替えています。日頃の事業では切磋琢磨しているサントリー様と『ボトル to ボトル』水平リサイクルに関する啓発活動をご一緒できたことを誇らしく思います。サスティナブルな社会は、一社だけの努力で実現できるものではありません。私たちは志を同じくする皆様と積極的に連携しながら、地域社会によりよい変化をもたらしたいと考えます」

サントリーホールディングス 常務執行役員サステナビリティ経営推進本部長 藤原正明氏=「『ボトル to ボトル』水平リサイクルに関するG7広島サミットでの共同展示をきっかけに、日本コカ・コーラ様と啓発コミュニケーションの連携が実現し、大変嬉しく思います。日本のペットボトルリサイクルは、消費者・行政・回収事業者・リサイクル事業者・包材メーカー・飲料メーカーからなる資源循環の輪によって成り立っており、高い回収率・リサイクル率を誇る、世界でも稀有な日本型の資源循環モデルと言えます。循環型社会・脱炭素社会の実現に向けて極めて有効な『ボトル to ボトル』水平リサイクルをさらに推進していくために、各社個別の活動にとどまらず、様々なステークホルダーの皆様と連携し、社会機運の醸成に貢献していきたいと考えています」

【「ボトル to ボトル啓発広告」の掲出】

▽期間=5月18日(木)〜5月21日(日)まで(広島エリアのみ17日より開始)
▽場所=東京・広島を中心とした交通・屋外広告
〈駅貼りポスター〉
・広島電鉄宮島線20駅(広島県)
・広島高速鉄道(アストラムライン)本通駅・県庁前駅(広島県)
・JR東京駅・新宿駅(東京都)
〈デジタルサイネージ〉
・日本コカ・コーラ渋谷オフィス前(東京都)
・東京メトロ丸の内線駅構内ビジョン(東京・銀座・赤坂見附・新宿三丁目・新宿・中野坂上)
・駅近ビジョン(小田急線下北沢駅、京王井の頭線吉祥寺駅、東急電鉄東横線中目黒駅、JR大久保駅)
・博多キャナルシティ(福岡県)
・熊本市「大学堂ビル」(熊本県)