現地時間3月24日、バレーボールのイタリアリーグ/スーペルレーガで2023-24シーズンのプレーオフ準々決勝第4戦が行なわれた。男子日本代表の石川祐希が所属する6位アリアンツ・ミラノは、3位ガスセールズ ブルーエナジー・ピアチェンツァとホームで対戦し、セットカウント3‐2(28-30、25-27、25-23、27-25、15-6)の大逆転で準決勝進出へ望みをつないだ。

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 プレーオフ準々決勝3戦を終えて1勝2敗のミラノにとっては、負ければ敗退が決まる試合。石川がチームメートとともに起死回生を賭けて臨んだ戦いを現地で取材した。

 1週前の第3節で2勝先勝に目前まで迫りながら敗れたミラノ。初戦に続くホーム連敗を避けなければならないピアチェンツァの意地と個の力に屈して4強入りへ王手を許した。準決勝進出の可能性に食らいつくには、この第4戦に勝利することが絶対条件。2勝2敗として第5戦へ持ち込むほかに道はなかった。

 両者の実力伯仲ぶりは、3戦目までの部門別ランキングからも明らか。なかでも秀でたパフォーマンスが光る石川は、個人データ3部門でトップ3入りを果たした。総得点3位、アタック決定数は2位と1打差の3位で、7本を記録したサービスエースでは堂々の首位に立ち、ピアチェンツァのアウトサイドヒッター(OH)でブラジル代表リカルド・ルカレッリとオポジット(OP)のイタリア代表ユーリ・ロマノが同数で並んだ。

 また、それぞれのミドルブロッカー(MB)、ミラノのマルコ・ヴィテッリ(イタリア)とピアチェンツァのロベルトランディ・シモン(キューバ)が、後続に5本差をつけて首位タイを独走しているのはブロック。この試合でも、サーブに次いで流れを変える要素となった。
  先発メンバーのコールが始まると、本拠地アリアンツ・クラウドは詰めかけた観客4,275人の大歓声と熱気に包まれた。

 両チームともに初戦から布陣を変えず、ピアチェンツァはセッターがアントワヌ・ブリザール(フランス)、ブラジル代表のOHルカレッリとイオアンディ・レアル、OPがロマノ、MBにシモンとエドアルド・カネスキ(イタリア)。

 ミラノはチーム総得点の4分の1以上を1人で叩き出しているOH石川とその対角にマテイ・カジースキ(ブルガリア)、MBはアグスティン・ロセル(アルゼンチン)とヴィテッリ、OPフェレ・レゲルス(ベルギー)と司令塔パオロ・ポッロ(イタリア)を起用し、大きなプレッシャーがかかる一戦へ臨んだ。
 ◆第1セット◆
 ミラノは序盤に負った3点のビハインドを自らの2打で1点差とした石川が、絶好調のサーブで相手の誤打を誘い10-10。1点を争う展開のまま中盤を終え、再び石川がサーブでロセルのブロックを引き出し、初めてリードを奪う。だが、一進一退の終盤に試合先行のチャンス2回を逃すと、ルカレッリの個人技で許したセットポイントでカジースキの打球がラインを割り早くも1セットダウン。

◆第2セット◆
 カジースキとポッロのエースなどで4点のリードで序盤を終える。中盤に点差を詰め始めた相手を石川が気迫にあふれたバックアタックで再三にわたり抑え込む。ところが終盤の入りに、第3戦で黒星を強いられた要因の1つであるロマノのサーブにまたしても苦戦。4連続ブレークを許して2点ビハインドを負ってしまう。石川のエースやカジースキと替わったOHオスニエル・メルガレホ(キューバ)の躍動で、再びリードを奪い返し、先にセットポイントを握る。だが、ルカレッリの一打にそれを阻止された後、相手のリリーフサーバー、OPファブリッツィオ・ジローニ(イタリア)がエース。石川のバックアタックで粘ったミラノだったが、続くサーブと攻撃でミスを犯して2セット目を献上した。
  第3戦でセット終盤に勝利を手放した悪夢の再演に会場は深いため息。準決勝進出の可能性は遠のいたかのように見えた。しかし、エース石川を中心に結束したミラノが大ピンチからカムバックを果たす。

◆第3セット◆
 このセットも序盤をリードしながらレアルのサーブで4連続被ブロックに見舞われ、一気に同点とされる。終盤にもレアルのサーブに苦しみビハインドを負ってしまう。前戦から続く最終局面でセットを取りこぼす不穏な空気が漂い始めると、ミラノのベンチが動く。17-18でタイムアウトの後、今ひとつ調子の上がらないカジースキをベンチに下げてメルガレホを投入。この采配がチームにエネルギーをもたらす。ポッロのサーブで相手のミス連発を誘い一歩前に出ると、石川もサーブで攻め込み自身のバックアタックで追加点を挙げる。相手の応戦に耐えながら2点差でつかんだ1度目のセットポイントを誤打で見送った石川が、すぐさま同じバックローから強気の決定打でセットを奪取。その直後、この先を見ていろと言わんばかりに、雄たけびと大きなジェスチャーで観客をあおった。
 ◆第4セット◆
 開始から起用したメルガレホが機動力をもたらし、相手の追い上げを跳ね返して終始リードを維持。だが、このセットを奪って4強入りを決めたいピアチェンツァが、ルカレッリのエースやシモンのブロックでミラノのセットポイントを4度にわたり阻止。25-25とされてヒヤリとするが、石川がこの試合2本目のエースで相手の猛攻を断ち切り、フルセットへ持ち込んだ。

◆第5セット◆
 それまでの混戦が一変する。準決勝進出をここで諦めるわけにはいかないミラノの熱量が爆発。ブロック3本とリリーフサーバーに起用されたカジースキのエースなどで勢いに乗り、石川のバックアタックでリードを4点としてコートチェンジを迎える。以降、メルガレホの2連続エース、ポッロのツーアタックに続き、石川が味方の好守をレフトからのクロス弾で追加点に変える。そのまま、一瞬の隙も見せずに9点の大量リードでミラノが勝利。逆境を跳ね返して2勝で並び、4強入りへ望みをつないだ。
  ミラノはリベロを除く先発メンバーと途中交代で活躍したメルガレホの計7選手すべてが1〜3本のエースを記録。チーム全体でエース14、ブロック15のダブル二桁をマークして、難敵ピアチェンツァ(エース7、ブロック9)を退けた。

 20得点(アタック18、エース2)を挙げた石川は、スター選手たちとの真っ向勝負で圧倒的なスキルを見せつけ、トッププレーヤーとしての存在を誇示。試合後、会場で公営放送『Rai sport』の実況を務めたマウリツィオ・コラントーニ氏に話を聞くと、「ユウキはイタリアリーグの宝石。攻守においてミラノの原動力であることは言うまでもなく、完全無欠な選手さ」と大絶賛を繰り返した。

 第3戦で1位トレンティーノと2位ペルージャの4強入りが決定。高橋藍が所属する5位モンツァは2戦先勝の後、4位チヴィタノーヴァに巻き返されて第5戦に臨むことになった。

 惜敗でシーズンを終えた雪辱を果たすためにどうしても戻りたい準決勝の舞台。ミラノは、日本時間3月28日午前4時30分にアウェーでの決戦に挑む。

取材・文●佳子S.バディアーリ

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