テレビアニメ「ダンジョン飯」(毎週木曜夜10:30-ほか、TOKYO MXほか/ABEMA・ディズニープラス・Huluほかで配信)の第9話「テンタクルス/シチュー」が2月29日に放送された。ウンディーネとの戦いで負傷し、血も魔力も枯渇気味のマルシル(CV.千本木彩花)。ケルピーの焼き肉で回復を図る一行の前に現れたのは、かつての仲間、ナマリ(CV.三木晶)が護衛を務めるタンス夫妻のパーティーだった。見応えあるウンディーネとの再戦のほか、迷宮の謎に関わる死者の蘇生、ノームやエルフの種族観にも言及される興味深いエピソードとなった。(以下、ネタバレが含まれます)

■迷宮にかけられていた死を禁じる呪い

目下のライオス(CV.熊谷健太郎)たちの目的は、レッドドラゴンに食べられたファリン(CV.早見沙織)を救出すること。そのために迷宮の下層階を目指しているわけだが、その過程では少しずつ迷宮の秘密に触れる展開も見せている。かつてあった王国が狂乱の魔術師によって囚われ、迷宮化したこと。王国の国王は毒殺されたこと。魔力が循環し続けるように作られていること。迷宮の形が変化していること。そして今回はタンス(CV.井上和彦)により、迷宮にかけられている呪いが明らかになった。

この迷宮内においては、たとえ命を落としても蘇生術で復活させることができる。死者の蘇生は魔法が起こす奇跡のように思えたが、古代の呪術を研究しているというタンスの見立てによれば、これは呪い。この迷宮には人の魂を肉体に束縛する術が張られており、どれほど肉体が傷つこうが魂は解放されず、損傷さえ治れば肉体に戻る。死んだ者が生き返っているのではなく、死自体が禁じられているのだという。

迷宮を探索する冒険者にとってはありがたい話で、だからこそライオスもファリンの復活に希望を持っているわけだが、普通、人工的な迷宮は侵入者を殺すようにできているものだ。誰が、どのような目的でこのような呪いをかけたのか。やはりこれも狂乱の魔術師の仕業なのか。ユーモラスな描写の横では迷宮の謎が紐解かれだし、ライオスたちの冒険劇は興味深い展開となってきた。

■ノームってどんな種族?

今話では新たな種族としてノーム(タンス夫妻)が登場した。せっかくなので、一般的なファンタジーの中でノームがどういう種族として描かれているのかを少し解説してみたい。

精霊としてのノームは、風のシルフ、火のサラマンダー、水のウンディーネ、地のノーム、というように四大精霊の1つに数えられるが、今作ではエルフ、ドワーフ、ハーフフットと同じく種族としてのノームになっているようだ。地面の中に住むと言われるノームは鉱山に住むドワーフと近い関係にあり、魔法が好きなエルフとはあまり仲がよくないらしい。センシ(CV.中博史)には拒否感を示さず、対してマルシルには「これだからエルフは」と、センシ、ナマリと共に呆れ顔を見せたのもその現れだろう。

また、古典ファンタジーでは探究心の高い学者肌、大地に属することから治癒系の魔法に優れた種族としても知られている。RPGなどでは僧侶系に適した種族として登場するのもよく見受けられるところだ。お抱え学者、ちょっと鼻持ちならない性格、回復魔法と高度な蘇生術を使いこなすタンスはそうしたノーム像を表したキャラクターと言えるだろう。

■さりげない描写に映されていた種族観

また、ノームに加え、今話は同じドワーフであるセンシとナマリの対比が描かれたのも面白いところだった。ドワーフは鉱山で暮らすことを好み、優れた鍛治職人、屈強な戦士として知られている種族だ。そうしたところでは、武器に気を遣い、ドラゴンを何頭も倒しているナマリは典型的なドワーフになる。

一方、センシは武器の手入れは無頓着で、ドワーフが大好きな鍛治にも興味がない。探究心はもっぱら魔物食と魔物との共生にあるようで、ドワーフとしてはかなりの変わり者だ。アダマント製の鍋は先祖代々受け継がれてきた家宝ということから、センシの家系自体が変わり者だったのだろう。

さらに、お金と商売に厳しいチルチャック(CV.泊明日菜)の種族ハーフフットへの言及、ナマリから図体のわりに貧弱だと言われたライオスの種族トールマンへの言及というように、それぞれから見た種族観が浮き彫りなったのは、ファンタジー好きからすれば頷きたくなるポイントだった。

■マルシルの魔力は無事回復。迷宮攻略はさらに下層へ

肝心のライオスたちの迷宮攻略の方はというと、ウンディーネを捕獲できたことでマルシルの魔力はなんとか回復。地上への帰還は回避することができた。前話で語られた通り、マルシルにとってファリンは大切な親友だ。火力担当の魔法使いを欠いたパーティーで、しかもたった3人ではドラゴンを倒すのは難しいと思ったのだろう。無理にでも付いていこうとしたのはマルシルの意地というよりも、2人の関係性からの行動と見えるシーンだった。

また、ナマリの他にもう1人いたパーティーの仲間、シュローは地上で別のツテを探しているらしい。ファリンに求婚するほど惚れていたということで、今後どういう形で物語に関わってくるのかが楽しみなところだ。

■<今週のレシピ>※原作より

ウンディーネで煮込んだテンタクルスと水棲馬のシチュー(8人分):
ウンディーネ――2リットル
水棲馬(スネ)――1頭分
テンタクルス――1メートルほど
タマネギ――2個
にんじん――2本
ブラウンソース――適量
塩・胡椒――適量

■文/鈴木康道