菊花賞を圧勝したドゥレッツァ
菊花賞を圧勝したドゥレッツァ

天皇賞・春2024

[GⅠ天皇賞・春=2024年4月28日(日曜)4歳上、京都競馬場・芝外3200メートル]

 スターホース不在? タレント不足? いやいや、この馬がいるじゃないか。GⅠ天皇賞・春(28日=京都芝外3200メートル)でドゥレッツァが京都に戻ってくる。変幻自在のレースぶりで、誰もが「強ぇ〜」と“口あんぐり”となった菊花賞。同じ舞台で、あの次元の違う走りをもう一度見せることができるか。どうやら準備は万端のようだ。

 昨年の菊花賞は圧倒的に不利とされる大外枠。それを最小限にとどめるためにルメールが取ったのが逃げの手だ。果敢に仕掛けたことで坂の下りで一気にトップスピードに入る危険性はあったが、それを制御できる自信があったからこそ取った作戦で、1周目のスタンド前では折り合いもピタリとついていた。

 向正面に入ったところでリビアングラス、パクスオトマニカの2頭が動いてきて一旦は3番手へ控える形。そこでリズムを崩すことなく、4角手前では2番手まで押し上げて最後は後続を突き放して圧勝した。神騎乗によるところも大きかったが、皐月賞馬、ダービー馬を寄せ付けなかった脚力と無尽蔵のスタミナ、そして自らレースを支配できる操作性の高さが最大の武器。長距離戦を走り抜く上で必要とされるものをすべて持ち合わせているだけに、気になるのは菊花賞のような走りができるかどうかだ。

 24年の始動戦となった金鯱賞はプログノーシスの前に5馬身差をつけられての2着。4歳牡馬のレベルを疑問視する声を改めて浮上させてしまったが…。

「金鯱賞に関してはコース、距離など、適性の差が出てしまったと思う。緩い面と、今までになくシッカリと休ませた分、力んだのもありましたね。それに使った後の雰囲気を見ると明らかに休み明けというのもあった。結果的にトライアル的な仕上げになってしまったかな」

 尾関調教師がこう振り返るように敗因は明確。59キロの斤量を背負っていたし、道中も包まれる形で外へ出すタイミングも遅れた。むしろあの形から2着まで押し上げてきたのは地力の証しだろう。

 状態に関しても不安はない。9日から栗東に滞在してここまで順調に調整を重ね、1週前追い(17日)はルメールの負傷で手綱を取ることになった戸崎を背にウッドで併せ馬を行った。3馬身ほど追走する形で序盤はやや力む面が見られて格下相手に併入に持ち込むのがやっとだったが、それでも外を回ってラスト1ハロン11・2秒(6ハロン81・6秒)とシッカリと負荷をかけられた点は好感が持てる。

「久しぶりに騎乗しましたが精神的な部分でドッシリしました。以前はハミが出過ぎるところがあったけど、それがまとまってきましたね」と戸崎も成長を実感している様子。さらに「菊花賞の芸当を見てもスタミナがあってタフな馬だと思っています。ボク自身、天皇賞・春は尾関厩舎のグローリーヴェイズ(19年2着)で悔しさがあるので」とフィエールマンに僅差で敗れた5年前の雪辱を果たしたいと気合が入っている。

「ゴールデンウイークの渋滞を考慮して早めに栗東に入りましたが、鞍上も心身の感じがいいと言ってくれたようにメンタルがいいですね。力んで体が硬くなるところがあったけど、それも取れてこの馬の雰囲気になっています。前走後に反動が出るか、出ないかだったけど、いい流れでここまでこられていますね」とは尾関調教師。菊花賞からの直行ではなくひと叩きしたことで理想的な形で大一番へ送り出せると自信をのぞかせる。

 4歳牡馬の実力を疑問視する声はいまだにあるものの、大阪杯をダービー4着のベラジオオペラが勝利したように決して世代レベルが低いわけではない。菊花賞で別次元の走りを見せた京都が舞台で何の不安もない状態で迎えられる一戦。昨年の覇者ジャスティンパレスなど、一線級が不在の今年のメンバーなら、終わってみれば「ドゥレッツァ1強だった」となる可能性も大いにある。

著者:難波田 忠雄