ところが、談話が発表されたあと、改めて大統領室の高官が記者たちの前に姿をみせて「いやいやいや、強硬姿勢ということではない。大統領としては医療界と話し合う意思を初めて明らかにしたもの」と補足説明をした。それを受けて、各メディアは「大統領が医療界と対話へ」と軌道修正することとなった。

「それなら大統領がストレートにそう言えば済む話じゃないですか。記者も国民も、誰もあの談話の内容では『対話に舵を切った』とは受け止めなかったのですよ。一事が万事、尹大統領はそうなんです。自分が正しいと思ったら突き進むだけで、国民にちゃんと説明をしない」(先の男性)

国民とのコミュニケーションが、とにかく下手だというのだ。

「長ネギ事件」でさらに人気落とす

そうした一例として韓国のメディアを賑わせているのは、「長ネギ事件」だ。3月、物価高への対応を検討するための現場視察ということで尹大統領がスーパーを訪れた際、長ネギが1束875ウォン(日本円で約98円)で売られていた。彼はそれを手に取って「そう悪くない価格なのではないか」と述べたのだ。

ところが、このとき大統領が手に取った長ネギは、複数の割引制度の対象となっていたもの。一般的には1束3000ウォンから4000ウォンが相場となっていたのだ。

特別に安い長ネギを手にして満足そうな表情の尹大統領の姿が報じられると、国民は「大統領は庶民の暮らしがまるでわかっていない」「同行していた政府当局者たちは『いや、これは例外的に安いだけだ』と説明できたはずなのに大統領に忖度して口をつぐんだ、の2点に対して憤慨した。

しかも、韓国語で長ネギは「テパ」と発音するが、「大破」も韓国語で同じ発音であるため、今回の総選挙戦期間中、尹大統領を「大破」しようと呼びかけるキーアイテムとして、長ネギが風刺画などの表現であちこちに登場している。