彼の中で1浪以前と明確に変わったのは、「戦略を立てて、徹底的に考える」という姿勢でした。

授業でわからないことがあったら、その場で先生に聞いて、完璧になってから帰ることも徹底しました。勉強の質が前年よりも上がったことで、この年の模試の偏差値は70前後で安定するようになったそうです。

「『記憶』ではなく『理解すること』によって成績が伸び、勉強が楽しくなって積極的に取り組めた1年でした。国語は単なるテクニックに走らず、文章をちゃんと読んで理解する習慣をつけましたし、英文もライトな小説や論文として捉えて、英語で理解して日本語に訳すのではなく、日本語として通じる言葉に意訳できるようになりました。

受験科目の中でも、いちばん受けていて楽しかったし、今につながっていると思えたのは世界史の青木裕司先生の授業ですね。

『1853年にペリーが来航した』という事実だけ覚えるんじゃなくて、『すごい装備の黒船が来たことで、世界の脅威を知った日本中の空気が一変し、たった15年で日本社会を根幹から変えた明治維新のきっかけになった』というように『歴史は流れが大事、年号は歴史の流れの中にある点』という考え方を教えていただきました」

試験慣れすることで、自信をつける

この年はひたすら河合塾・代ゼミ・駿台の模試を受け続けたそうですが、もうできない問題はあまりなくなっていたそうです。

それでも彼には去年・一昨年の反省があったため、試験慣れをするためにセンター試験と、その後すぐにあった自身の偏差値から20ほど下の大学、赤本で9割以上取れる相性のいい立教大学を新たに受験しました。早稲田の受験に向けて、万全を期す手間を惜しまなかったことで、見事に本番への自信を蓄えることができたそうです。

「最初に受けたセンター試験こそそんなにできませんでしたが、次の私立大学と立教大学は合格しました。試験に慣れるために受けた私立大学では90分の試験時間が与えられている科目を30分で全部解き終わったのですが、周囲の受験生はまだ考えているのがわかったので、ちゃんと実力がついてるんだなという実感が沸き、自信になりました」