政治改革国会での与野党攻防から逃れるように、岸田文雄首相が8日から1週間の日程で、国賓待遇での訪米に打って出た。自民党の大苦戦が確実視される「4.28トリプル補選」を控え、「派手な首脳外交での存在感アピールで、苦境打開を狙った乾坤一擲の訪米」(側近)だったが、結果的に党・内閣の支持率大幅上昇にはつながらず、ネット上では「感傷旅行」と皮肉る書き込みも相次いだ。

「国賓訪米」のハイライトとなったのは9日(現地時間)から11日(同)にかけての日米首脳会談、アメリカ議会演説と、その前後の公式・非公式夕食会。「事前の想定を超える大歓迎」(官邸筋)に、岸田首相はとっておきの笑顔とジョークをちりばめたスピーチで応じ、「国内では起こらない拍手喝采」(同)に得意満面だった。

帰国後は厳しい政権運営に直面

ただ、14日午後の帰国後は、すぐさま厳しい政権運営に直面。一部世論調査で内閣支持率は微増となったが、ほぼ1年前のウクライナ電撃訪問を受けての急上昇には程遠く、トップリーダーとしては「天国から地獄に転げ落ちるような環境変化」(自民長老)に苦しむ状況だ。

16日にはトリプル補選が告示されたが、「政治と金」での自民議員の辞職による衆院東京15区と同長崎3区は、いずれも自民が不戦敗。残る同島根1区は有数の保守王国で、細田博之前衆院議長の死去に伴う「弔い選挙」にもかかわらず、野党統一候補の元衆院議員との与野党対決は「自民劣勢」(選挙アナリスト)との見方が多数派だ。