また、BYDが開発した第2世代LFP「ブレード電池」(2024年8月に投入予定)は、航続距離を1000km以上に伸ばし、マイナス30℃でも放電容量を80%維持できるという。

BYDはコスト低減についても積極的で、垂直統合型の生産体制と大きな規模を生かし、まずはPHEVの価格破壊でボリューム層マーケットに向けて、エンジン車モデルを追う構えをみせている。

BYDのPHEV「唐 DM-i」(写真:BYD) BYDのPHEV「唐 DM-i」(写真:BYD)

また、熾烈な価格競争より、短距離移動に対応する小型BEVが対エンジン車に対してもコスパの高さを実現し、長距離走行モデルも、一部はエンジン車に対抗できるコストとなった。

一方、中国における充電スタンドの累計設置台数は、2024年3月末に931万台に達したものの、地域・都市別のインフラ整備の格差が存在している。

BEVにおいては充電時間の課題もあり、普通充電では満充電までに6時間以上かかるのが一般的で、既存の急速充電を利用しても約1時間必要だ。中高級BEVではより短時間での充電を実現しつつあるものの、エンジン車の給油並みの時間で満充電にすることは難しく、公共充電施設での充電時間短縮は依然、課題となっている。

こうして、PHEVも含めた電動化車両の競争力が徐々に向上し、中国のBEVシフトはコスト・性能・利便性の競争から、コネクテッドや自動運転を備える乗車体験、スマート化へと移行しつつある。

地場企業が注力するNOAというシステム

中国工業情報省は、2023年11月に「ICV参入および路上走行テストの試行に関する通知」を発表し、自動運転車両のデータ安全、ソフトウェアの更新(OTA: Over the Air)、遠隔監視システムの構築、事故発生時の責任の所在などを含む、中国におけるレベル3、レベル4自動運転車の立法整備に取り組んでいる。

助手席前にもディスプレイが設置される小鵬汽車のスマートキャビン(写真:小鵬汽車)

これを受け、地場企業も相次いで自動運転事業に参入した。地場企業は、路面データを収集・処理できる情報の更新頻度をコントロールできないことや車両のコスト高から、自動運転補助システム(ADAS)と呼ばれるNOA(Navigation on Autopilot)機能を採用し、スマート化を推進する。