能登半島地震からまもなく3か月です。
発生後に被災地には自衛隊が派遣され、捜索捜索や被災者の生活支援に取り組んできました。
このなかには普段は社会人や学生として生活を送る「予備自衛官」も含まれていました。
有事の際に招集される非常勤の自衛官、山陰の実態を取材しました。

自衛官:
「慌てないでいいから」

能登半島地震の被災地で食料などの物資を運んだ自衛隊の様子です。

自衛官:
「ありがとうございました」

能登半島地震で災害派遣要請を受けた自衛隊は最大1万4000人の態勢で人命救助や輸送支援などにあたりました。
そのなかには自衛隊に所属する自衛官のほかに、非常勤の「予備自衛官」も含まれていました。

予備自衛官は普段は一般企業などで働きながら今回の地震のような有事の際に招集され、自衛官として活動します。
元自衛隊員を中心に全国で約6万人、山陰両県にも約500人がいます。

こなんホスピタル・予備自衛官一等陸尉 廣冨善文看護師:
「点滴の薬を入れる作業です」

松江市の病院で働く看護師、廣冨善文さんもそのひとりです。
廣冨さんは看護学校を卒業後、自衛官だった父にあこがれ34歳の時に入隊。
15年以上、医療を担当する予備自衛官を務めています。

こなんホスピタル・予備自衛官一等陸尉 廣冨善文看護師:
「(能登半島地震は)実際行くことはできなかったので悔しい思いはあるけど、待機ということで身が引き締まる思いがした」

能登半島地震を受け廣冨さんも出番を待ちましたが被災地に行くことはありませんでした。

これまで山陰両県から被災地に予備自衛官が派遣されたのは2011年の東日本大震災と18年の広島豪雨災害の2回ですが、隊員は常に万が一に備えていると言います。

こなんホスピタル・予備自衛官一等陸尉 廣冨善文看護師:
「精神的にも肉体的にも元気じゃないと(被災者を)助けられないので日頃から気をつけている」

予備自衛官は社会人だけではありません。

島根大学総合理工学部2年・大草侑槻さん:
「ルーター処理の勉強しています」

島根大学の学生、大草侑槻さん。
静岡県出身の大草さんは実家近くに自衛隊駐屯地があったことから幼いころから自衛官に興味を持ちはじめ、現在、大学で情報通信技術を学ぶ傍ら予備自衛官の卵「予備自衛官補」を務めています。

「予備自衛官補」は自衛隊経験の無い人を採用する制度で、3年間で計50日の教育訓練終了後予備自衛官になります。

島根大学総合理工学部2年・大草侑槻さん:
「ゲームのキャラクターの話をしています」

友人:「こんな身近に(予備自衛官が)いるんだっていう驚きでした」

現在、山陰両県には大草さんを含めて42人の大学生が「予備自衛官」を目指して訓練しています。

島根大学総合理工学部2年・大草侑槻さん:
「民間でもあり自衛官でもある中間の立場でどちらの気持ちも分かるので自分も(民間の立場で)自衛隊が来てくれた嬉しいし(自衛官の立場で)助けに行けたらいいと思う」

こうした若いなり手もいる一方で、課題となっているのは人手不足です。

自衛隊島根地方協力本部・濱田浩宜防衛事務官:
「切羽詰まっています。予備自衛官も年々人が減ってきています」

対策として防衛省は2023年1月から予備自衛官補の採用年齢の上限を大幅に引き上げるなどしました。

自衛隊島根地方協力本部・濱田浩宜防衛事務官:
「予備自衛官には我々自衛官と民間を繋ぐ懸け橋になってもらえる存在として期待している」

災害派遣にも影響を及ぼしかねない人手不足の危機はここにも押し寄せています。