2023年度「負債1,000万円未満」倒産状況


 2023年度(4-3月)の負債1,000万円未満の企業倒産は、498件(前年度比16.9%増)で3年ぶりに前年度を上回った。3年連続の400件台で、本来は債務1,000万円未満の企業が、コロナ禍の資金繰り支援策で借入れが膨らみ、負債1,000万円以上に集計されたことで増加率が鈍かったと見られる。ただ、徐々に小・零細規模の息切れが本格化してきた兆しともいえる。

 産業別は、最多がサービス業他の221件(前年度比6.2%増)。負債1,000万円未満倒産の約4割(構成比44.3%)を占めた。次いで、建設業82件(前年度比12.3%増)、小売業70件(同59.0%増)と続く。
 原因別は、販売不振が369件(同30.3%増)で、7割以上(構成比74.0%)を占めた。
 資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が464件(前年度比15.4%増)と、9割超(構成比93.1%)に達した。
 形態別は、破産が481件(前年度比14.7%増、構成比96.5%)と大半を占め、小・零細企業の経営再建の難しさを浮き彫りにしている。

 負債1,000万円未満で倒産した企業は、事業規模は小・零細企業が多い。そのため、金融機関の貸出はプロパー貸出より信用保証協会付の対応がほとんどで、金融機関との関係性はあまり密接でなく、支援の手が行き届いていない可能性もある。
 コロナ禍から平時に戻りつつあるが、ゼロゼロ融資の返済、物価高や人件費の上昇などコストアップで資金繰りを圧迫している企業は多い。なかでも、業績回復が遅れた小・零細企業には今後、事業再生、廃業など多様な細やかな配慮も必要だろう。

※本調査は、2023年度(2023年4月-2024年3月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


2023年度の倒産498件、3年ぶりに前年度を上回る

 2023年度の負債1,000万円未満の倒産は、498件(前年度比16.9%増)発生した。
 コロナ禍の初期は、経済活動の停滞で大企業から中小・零細企業まで急激に業績が悪化した。そのため、2020年度の負債1,000万円未満の倒産は616件と急増した。しかし、コロナ関連の資金繰り支援策に支えられ、2021年度456件、2022年度426件と抑制された。
 その後、経済活動が本格的に再開し、各種支援策の縮小・終了と同時に、今度は円安、原材料や資材、電気、ガスなどの価格が上昇。人手不足から人件費もアップするなか、ゼロゼロ融資の返済も始まり、2023年度は再び増勢に転じた。
 小・零細企業はもともと経営基盤がぜい弱なだけに、収益悪化への耐性が乏しく、資金調達が難しい企業を中心に、倒産は緩やかに増勢局面に入ったと見られる。

負債1,000万円未満の倒産 件数推移(年度:4-3月)

【産業別】10産業のうち、8産業で増加

 産業別は、10産業のうち、金融・保険業と不動産業を除く8産業が前年度を上回った。
 最多が、サービス業他の221件(前年度比6.2%増)で、3年ぶりに前年度を上回り、全体の44.3%(前年度48.8%)を占めた。
 また、農・林・漁・鉱業10件(前年度比42.8%増)と建設業82件(同12.3%増)が2年連続、小売業が70件(同59.0%増)で2年ぶり、卸売業38件(同11.7%増)と運輸業17件(同70.0%増)、情報通信業26件(同44.4%増)が3年ぶり、製造業が21件(同31.2%増)で5年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
 一方、不動産業は11件(同21.4%減)で、2年ぶりに前年度を下回った。金融・保険業は前年度と同件数の2件だった。

 業種別では、経営コンサルタント業17件(前年度12件)、受託開発ソフトウェア業15件(同12件)と、小資本で創業可能な業種が突出している。このほか、土木工事業(同5件)、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所(同9件)が各10件、無店舗小売業(その他の小売)8件(同3件)、野菜作農業(同2件)、バー,キャバレー,ナイトクラブ(同5件)、学習塾(同3件)、自動車一般整備業(同3件)が各7件などで、前年度を上回った。

「負債1,000万円未満」倒産 産業別(4-3月)

【形態別】消滅型の倒産が9割以上

 形態別は、「破産」が481件(前年度比14.7%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。構成比は96.5%(前年度98.3%)で、2010年度から14年連続で90%台が続いている。
 「特別清算」は7件(前年度比250.0%増、構成比1.4%)で、2年ぶりに前年度を上回った。消滅型が488件(前年度比15.9%増)で、全体の97.9%(前年度98.8%)だった。
 負債1,000万円未満で倒産する企業は、ほとんどが小・零細企業で、資産背景もぜい弱なため、事業再建への時間とコストを掛けることが難しく、破産を選択するケースが増えている。

【原因別】販売不振が7割超

 原因別は、最多が「販売不振」の369件(前年度比30.3%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。構成比は74.0%(前年度66.4%)だった。一方、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が17件(前年度比15.0%減、構成比3.4%)で、2年ぶりに前年度を下回った。
 「不況型倒産」(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は386件(前年度比27.3%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。構成比は77.5%(前年度71.1%)だった。
 このほか、「事業上の失敗」29件(前年度比25.6%減)と「他社倒産の余波」45件(同4.2%減)で、それぞれ2年ぶり前年度を下回った。代表者の病気や死亡を含む「その他」が23件(同21.0%増)で、2年ぶりに前年度を上回った。
 小・零細企業は、経営再建や事業転換には資金余力が乏しく、人員にも制約がある。一旦、業績低迷に陥ると、その状況から簡単に抜け出せず、倒産に至るケースが多い。

【資本金別】1千万円未満が9割以上

 資本金別は、1千万円未満が464件(前年度比15.4%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。構成比は93.1%(前年度94.3%)で、1.2ポイント低下した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が184件(前年度比15.7%増)、「個人企業他」が153件(同19.5%増)、「1百万円未満」が83件(同18.5%増)、「5百万円以上1千万円未満」が44件(同2.2%減)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が33件(同37.5%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。「5千万円以上1億円未満」が1件(前年度ゼロ)で、2年ぶりに発生。「1億円以上」は、2019年度より5年連続で発生しなかった。