レクサスのラインナップに初めて投入された専用ボディを持つ電気自動車、新型「RZ450e」を公道でドライブすることができました。ルックスやメカニズムなど見どころの多いモデルですが、一番のハイライトはレクサスの理想を具現した爽快なドライブフィールでした。

動力性能はトヨタ「bZ4X」比で50%もアップ

 これからの高級車はEV(電気自動車)に限る……。レクサス「RZ450e」の高い快適性を味わいながら、そんなことを考えていました。

 レクサスRZとは、レクサスにとって初の“専用ボディを持つEV”。レクサスのEVはほかに、ひと足先に世に送り出された「UX300e」がありますが、こちらはエンジン車と車体を共用するモデルであり、完全にEV用として開発された車体を持つモデルはRZがレクサス初なのです。

 なかには、「RZはトヨタの『bZ4X』と同じクルマでは?」と考える人もいるかもしれません。それは半分正解ですが、半分は誤りです。

 確かに、プラットフォームやアンダーフロアといったシャシーの基本設計は共通ですが、RZのアッパーボディはレクサスが専用設計したもの。フロントピラーの角度が違えば、そもそも、全長が115mm長く全幅が35mmワイドなど、ボディサイズだってひと回り大きい。単なる化粧違いではなく全くの別物です。

 加えて、パワートレインも全く別の仕立てです。デュアルモーターを備えたbZ4xの4WD仕様は、モーターの最高出力がフロント109ps、リア109psとなるのに対し、4WDのみとなるRZのそれは、フロント203.9ps、リア109psと動力性能が50%もアップしています。

 この違いがレクサス独自の“走りのゆとり”を生んでいます。これだけパワーがあれば、加速はかなりの速さと刺激。アクセルペダルをグッと踏み込んだときに後ろから鋭くグイグイ押される感覚は、並のハイパワーなエンジン車ではなかなか味わえません。なめらかさ優先で刺激は控えめだったUX300eと比べると、加速の勢いが明らかです。

 RZの走りは刺激的とはいえ、決して荒々しくないのが印象的。アクセルを踏んで加速していくときのフィールがなめらかなのはEVだから当然として、急にアクセルペダルを踏み込んだり、アクセルペダルを戻したりしたときも、ギクシャクしないのはさすが。これらもレクサスが目指す“走りのスッキリ感”につながっています。

 ひと口にEVといっても、モーターの制御はメーカーごとに味つけがかなり異なり、いうなれば開発陣の腕の見せどころ。レクサスRZはEVセールスで先行する欧州メーカーのEVと比べても制御が巧みで、よくできているなと感心させられます。

プレミアムカーと呼ぶにふさわしい上質な乗り味

 EVといえば、エンジン車やハイブリッド車よりも走りが快適。その快適性は一般的に、静粛性に由来するものと思われがちです。しかし、単に静かなだけでEVの快適性が構築されているわけではありません。

 実は、エンジンの爆発に起因する振動が一切ないのはもちろんのこと、加速のなめらかさや繊細さが同乗者の上質な移動に直結するのです。レクサスRZはその辺りのつくり込みが素晴らしく、乗り心地も含めた圧倒的な上級感は、まさにプレミアムカーと呼ぶにふさわしい出来栄えでした。

レクサスが理想とする、スッキリと澄んだドライブフィールを具現した電動SUV「RZ450e」

 そんなレクサスRZを首都高速でドライブしてみると、速さや快適性とは異なる、もうひとつの美点を体験することができました。それは、ドライビングの楽しさです。

 決してハイスピードでなくても、コーナーが連続する首都高速の流れに任せてドライブしているだけで、なんだか運転していて気持ちいい、という感覚が全身を包むのです。

 RZは水を得た魚のようにコーナーを小気味よく曲がり、なかでも、アクセルペダルを踏み込みながら曲がっていく感覚はとにかく爽快。だからといって、コーナリング中の走行フィールは決して過剰とかシャープといったものではなく、もちろん鈍くもなく、まるでドライバーに寄り添うような人馬一体感を味わえます。

 ドライバーが思っているとおりにコーナーをスイスイとクリアしていく感覚は、なんとも心地いいものがあります。

 ドライビングが心地いい秘密はどこにあるのでしょう?

 RZの4WDは、ステアリングの舵角やアクセルペダルの踏み込み量といった走行状況に応じて、前後の駆動力配分を100:0〜0:100の間で最適にコントロールします。加えて、走行用バッテリーを車体の低い位置に搭載することによって低重心を実現。さらにボンネット内には、ボディの左右をつないで車体の微振動を吸収する“パフォーマンスダンパー”を搭載しています。

 こうした車体のバランスと駆動系の緻密な制御が、RZの魅力であるスッキリ澄んだ乗り味につながっているのだと思います。

* * *

 今回のRZでも明らかになったように、レクサスのような高級車ブランドが手がけるEVは、エンジン車よりも明らかに静かで、かつ、なめらかな走りを実現。上質な移動体験を味わわせてくれます。

 バッテリー性能の限界や効率などを考えると“ある一定の距離まで”という制約こそつきますが、そのなめらかな走りはエンジン車では決して味わえないものです。

 そのため近い将来、こうした上質な移動体験を求めてプレミアムブランドのEVを近距離の移動手段に選ぶ人が増えるのではないか? レクサスRZはそう思わせるほど高い完成度を備えたモデルでした。

●LEXUS RZ450e“Version L”
 レクサス RZ450e“バージョンL”
・車両価格(消費税込):880万円
・全長:4805mm
・全幅:1895mm
・全高:1635mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2100kg
・駆動方式:4WD
・電気モーター:交流同期電動機
・フロントモーター最高出力:203.9ps
・フロントモーター最大トルク:266Nm
・リアモーター最高出力:109ps
・リアモーター最大トルク:169Nm
・駆動用バッテリー総電力量:71.4kWh
・交流電力量消費率(WLTC):147Wh/km
・1充電走行距離(WLTC):494km
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)ダブルウイッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前)235/50R20、(後)255/45R20