まもなく発売されると見られるトヨタ「ランドクルーザー250」は、「ランドクルーザープラド」の事実上の後継であることは明白ですが、トヨタは公式にはそれを認めてはいません。なぜ、ランドクルーザー250は「プラド」を名乗らないのでしょうか?

ランドクルーザー250は「プラドの後継」ではない!?

 トヨタ「ランドクルーザー250(250系)」の発売が目前に迫っています。

 2023年8月に世界初公開された250系は、ランドクルーザーシリーズの中核モデルとして、オフロードはもちろん、オンロードでも必要十分以上の性能を発揮することが期待されています。

 一方、多くのユーザーが気になるのはその名称です。

 ランドクルーザーシリーズにおける立ち位置を見ても、250系が「ランドクルーザー プラド」の事実上の後継モデルであることは明白です。

 ただ、トヨタはその関係性を公式には認めておらず、一部の市場をのぞいて今後「ランドクルーザー プラド」の名が用いられることはないようです。

 250系が「プラド」の名を名乗らないことについて、トヨタは明確な理由を説明してはいません。

 というより、トヨタとしては、そもそも両車は別のモデルであるというスタンスのようです。

 ただ、ランドクルーザー プラドには長い歴史があり、多くのファンがいたのも事実です。にもかかわらず、なぜ250系は「プラド」を名乗らないのでしょうか?

 この点については、ランドクルーザー プラドが生まれた背景がヒントになりそうです。

 「プラド」の名がはじめて登場したのは1990年のことですが、その前身は1985年に登場した「ランドクルーザー ワゴン」にさかのぼります。

 当時、ランドクルーザーシリーズの中核にあった70系は、あくまでもヘビーデューティー仕様のモデルであり、乗用に適したモデルとは言えませんでした。

 一方、1980年代の日本では三菱「パジェロ」や日産「テラノ」、トヨタ「ハイラックスサーフ」などが人気を博し、後に「RVブーム」を巻き起こすこととなります。

 そうした背景のなかで、ランドクルーザーシリーズにも乗用向けのモデルが求められるようになり、70系をベースにしたライトデューティ仕様のモデルとしてランドクルーザー ワゴンが登場したわけです。

 当時のランドクルーザー ワゴンは、ヘビーデューティー仕様の70系と比べて明らかに乗用車的であり、キャラクターがはっきりとしていました。

 ランドクルーザー ワゴンはユーザーからも一定の評価を受けており、ライトデューティ仕様のモデルのニーズがあることをしっかりと示しました。

「廉価版ランクル」から脱却するために

 その後、ランドクルーザー ワゴンは1990年のフルモデルチェンジでランドクルーザー プラドを名乗るようになりました。

 しかし、それと同じタイミングで登場した80系が高級SUVとしての性格を持つようになったことで、その立ち位置が微妙に変化します。

まもなく日本でも発売される予定のトヨタ新型「ランドクルーザー250」

 簡単に言えば、高級SUVである80系に対して、ランドクルーザー プラドはその「廉価版」としての印象が強くなってしまいました。

 そして、この傾向はランドクルーザーが100系、200系へと進化し、さらに高級SUV路線を強めていくなかで、ますます色濃くなっていきました。

 その結果、一部のユーザーは「プラド」という名称にネガティブなイメージを持つようになりました。250系が「プラド」を名乗らないのは、そうしたイメージを払拭したいという思惑があると見られます。

 一方、ランドクルーザー プラドのようなライトデューティ仕様のモデルは、「フラッグシップ」である100系や200系をしのぐ販売台数を誇ってきました。

 特に、現行モデルである300系が中東を強く意識したモデルとなったこともあり、その重要性はますます増しています。

 そうして、ランドクルーザーらしい悪路走破性や信頼性はそのままに、現代的なパワートレインや機能装備を備えた250系が生まれたわけですが、そのルックスや機能装備を見ても、それは明らかに300系の「廉価版」とは言えないモデルに仕上がっています。

 具体的に言えば、ボディサイズは300系とほとんど変わらず、機能装備も300系に劣るところはありません。また、ランドクルーザーシリーズ初となるハイブリッド車も設定されています。

 その一方で、丸型ヘッドライトが特徴的なレトロなエクステリアデザインは、300系とは明らかに一線を画しています。

 もちろん、300系がランドクルーザーシリーズにおける「フラッグシップ」であることはゆるぎませんが、販売される規模で見れば、むしろ250系のほうがシリーズを代表するモデルと言えます。

 トヨタが250系を「ランドクルーザーの中核モデル」と表現しているのも、この点によるところが大きいものと考えられます。

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 250系と300系、そして再々販売された70系は、いずれもランドクルーザーシリーズの一員であることはたしかですが、それぞれ異なるキャラクターを持ったモデルです。

 それぞれに優劣をつけるのではなく、一丸となって「ランドクルーザー」というブランドを盛り立てていくという方針のなかでは、やはり「プラド」の名は適していなかったのかもしれません。