ここが日本の未来である可能性も! トヨタが作るウーブンシティの激熱な中身

この記事をまとめると

■トヨタ自動車が静岡県裾野市で建設を進めているウーブンシティ

■最終的に70万8000平方メートルになり、2025年には360名程度が居住する予定だ

■ウーブンシティをつくる目的について解説する

ウーブンシティはモビリティのテストコース

 トヨタ自動車が静岡県裾野市で建設を進めているウーブンシティ。2021年2月に着工され、現在は第1期工事が行われている模様だ。その規模は、最終的に70万8000平方メートル(東京ドーム15個分・ディズニーランドの1.5倍)に及ぶ。2024年には一部(5万平方メートル)の建設工事が終了し、2025年には360名程度(トヨタ関係者)が居住する予定になっているという。

 このように、「人が住む」という情報や名称に「シティ」とついていることから、「オープン空間の都市づくり」と解釈している人も多いようだ。

 しかし、ウーブンシティはあくまで企業の私有地にある研究施設という位置付けなので、基本的には誰もが自由に行き来できる場所ではない。こういった一部の誤解は、国が進めている未来の街づくりを目指した「スーパーシティ特区」と混同されたことにも一因があるといえよう。もちろん、ウーブンシティはこの特区の認定を受けているわけではない。

 ウーブン・バイ・トヨタ(事業主体の会社)によると、ウーブンシティは「テストコース」であるという。カーメーカーのテストコースといえば、サーキットのようなコースでクルマの性能テストをするイメージだが、ここではもっと広い意味を持っている。それは、「人」「モノ」「情報」を対象とした「モビリティ(移動)のテストコース」であり、「モビリティを拡張し、未来の当たり前を発明するためのしくみ」を創造することで、人々の「幸せの量産」を目指す場所なのである。

率先して実証実験を進めていく施設になる

 前述のとおり、現在のウーブンシティはまだ建設中なので、具体的にここで何かがテストされているというわけではない。しかし、すでに複数の事業者が参画しており、実証実験に向けて準備が進められているのだ。

 たとえば、日清食品は完全栄養食メニューの提供など、食を通じたWell-beingの実現に向けた実証を計画している。また、リンナイは水素調理器を使用した、カーボンニュートラルへの貢献などに向けた実証を検討しており、その要となる水素エネルギーを担当するのはENEOSである。現在の水素エネルギーといえばガソリンスタンドのような場所で、クルマに注入されているといった光景が一般的だが、ウーブンシティでは人が持ち運べるような、水素カートリッジが実用化するといわれている。

 こういった計画は物流分野でも検討されている。たとえば、先の東京オリンピックで活躍した「e-Palette」を発展・進化させ、人や荷物の運搬・配送を効率的かつ安全に担うための実証実験といったものがそれにあたるといえよう。この車両は、トヨタのMaaS(Mobility as a Service、いろいろな交通手段やその利用システムを需要に応じて統合し、利便性を図る移動サービス)戦略の一翼を担う自動運転電気自動車である。オリンピックでは主に人の輸送に使用されていたが、仕様を変えれば荷物の運搬も可能だ。

 すでに、通販/フードデリバリー/コンビニ/宅配運送といった事業者がその利用を模索しており、ウーブンシティで行われる実証実験に期待が寄せられている。

 さらに、ロボットなどを活用した物流サービスの開発も予定されているという。これが、倉庫作業の自動化・システム化を進める原動力になっていくことは間違いない。ひょっとしたら、ファミレスでおなじみの配膳ロボットのような機械が、宅配を担って街なかを走りまわる日がくるかもしれないのだ。

 このようにウーブンシティは、終わりのない無限の可能性を秘めた研究施設として、段階的にオープンしていくことになる。ここから生まれる明るい未来を、1日も早く体験してみたいものだ。